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スティーブという名の魔王降臨 ※ご注意ください。残酷な表現が出てきます。

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 スティーブは、キャスリンの話を聞いた後、深くため息を吐いた。そして間抜けな顔をしている王と呼ばれた男、そして床に転がっている男をぎろりとにらんだ。

 「キャスリン様、この男たちをこのままにしてはおけませんね」

 「そうね、この人達のせいでみんなどんなに苦しんだか。でもどうしたらいい?」

 「そうですね。正直みんなが苦しんだのと同じ目にあってもらいたいぐらいです」

 「あっ、思い出したことがあったわ。私が前にアシュイラ皇国の王妃様の頭の中に入っていたって言ったでしょ?彼女の国には、悪いことをすると因果応報といって地獄というところに落とされるのよ。そうだわ。その世界を体験させたらどうかしら。無間地獄というらしいわよ」

 「無間地獄?」

 「そう、大罪を犯したものが、永遠に終わることのない苦しみを受けるところらしいわよ」

 「ではこの者たちにぴったりですね」

 「そうね」

 「じゃあ私にやらせてください」

 「スティーブいいの?」

 「ええ、キャスリン様を脅かしたものですよね。前の人生でお亡くなりになった毒もこの者たちが作ったんですよね。しかも国民を守る責任があるのに、自分の私利私欲のために多くの国民を犠牲にしたなんて許される事ではありません。ぜひ私に!」

 そういったスティーブの目がすわっていて、ここに魔王がいるではないかとちょっと怖くなったキャスリンだった。

 「じゃあお願いするわね」

 「はい」

 スティーブはそういうと、王という男とナードと呼ばれた男に魔法をかけた。男たちは一瞬ぶるっとしただけで見た目はそのままだった。

 

 男は、暗闇にいた。前も後ろも真っ暗でよく見えない。誰かいないかと叫ぶが自分が声を出しているのかも聞こえない。まったく何も音が聞こえないのだ。仕方なく感覚だけで歩いていくと、前がぼーと明るくなった。男は急いで走っていった。
 すると不意に化け物が立っていた。化け物は顔も体も半分崩れている。男はまた来た道に逃げようとしたが、その化け物につかまってしまった。その化け物はすごい力で男を引きずっていく。男は逃げようともがいたが、力の差は歴然としていた。
 化け物はどんどん進んでいき、とうとう穴の前に来た。男を離す。男は逃げようとしたが、足が動けなかった。仕方なく穴を覗くと、下からものすごい叫び声とすごい熱風が吹き上げてきた。慌てて顔を戻したが、男は見てしまった。人間と思われる者たちが、赤いなにかの中でもがき苦しんでいた。化け物は不意に言葉を発した。

 「お”前”の”せ”い”で”___」

 化け物から発せられた声に聞き覚えがあった。ずいぶんかすれているが、自分の腹心であった男の声に似ている。
 
 「お前ナードか?」

 男から声が出た。化け物は男が発した声に怒り狂ったようになって、男を殴りそのままその穴の中に投げ入れた。
 男は、穴の中に落とされていった。

 「あぁあああ____」

 男が落とされたところは、ものすごく熱くて体中すごい痛みに襲われた。助けてと叫ぶ暇もなく、自分の体が溶けていくのがわかった。

 不意に男は体中ものすごい痛みで目が覚めた。夢だったのかと思ったが、この痛みはさっき経験したに違いない痛みを伴っている。やっとのことで起き上がると、また後ろに先ほどの化け物がいた。化け物がまた自分を引きずっていく。

 「おい、ナードだろ。助けてくれ!」

 化け物は半分顔が崩れていたが、かろうじてその目が見えた。その目には怒りと憎しみしかなかった。次に来たところは、目の前が一面針の山だった。どうやら化け物はそこへ自分を落とすらしい。

 「助けてくれ!」

 男はそう懇願したが、化け物は、そんな男の懇願も無視して男をつかむと針山に投げ入れた。男は、針山の針に体中を刺されものすごい痛みに襲われた。それがいつまでも続いている。

 また男は目が覚めた。あまりの痛みに言葉も出ない。自分の体を見ると、先ほど見た化け物のような体になっていた。不意に目の前にナードが現れた。人間の体をしている。自分が今どこにいるのかわからないのか、あたりをきょろきょろしている。あいつが俺をこんな体にしたのに許せない。
 男は、ナードをつかんで穴に引きずっていった。ナードは穴を覗いておののいていた。ナードは助けを男に求めた。男はやっとのことで声を出した。

 「お”前”の”せ”い”で”___」

 ナードはその声で我に返ったようで聞いてきた。

 「あなたは王ですか?」

 男は、ナードの言葉を聞いて怒りがこみあげてきて、殴りながら穴の中に叩き落してやった。気が付くと、今度は先ほど自分が落とされた針山の前にいた。ナードも自分の前にいる。

 「あなた王ですよね、お願いです。助けてください」

 ナードが男に許しを乞うている。しかし男は先ほど自分が受けた苦しみを思い出し、ナードの懇願を無視して針山に投げ入れてやった。やっと終わったと思った。そこで記憶が途切れた。
 
 ふと気が付くと男はまた自分が真っ暗なところにいるのに気が付いた。今度はやみくもに走っていくと目の前にまたあの化け物が立っていた。逃げようと思う間もなく、あの化け物が自分をつかんで引きずっていく。目の前に見えてきたのはあの熱い熱風が吹き上げてくる穴だった。

 「助けてくれ__」

 王と呼ばれた男とナードは、何度も何度も永遠にそれを繰り返すことになるのだった。


 
 キャスリンはその様子を映像で見て背筋が冷たくなった。目の前のスティーブは満足そうな顔をしている。

 「どうですか?」

 キャスリンは顔が引きつりながらもスティーブにうなづいたのだった。

 目の前に倒れている王と呼ばれた男とナードは、部屋の中で白目をむきながらのたうち回っていたのだった。
  
 
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