大切なあのひとを失ったこと絶対許しません

にいるず

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ペジタ国の街の様子 ※ご注意ください。奴隷などの表記が出てきます。

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 キャスリンは次の日からペジタ国をもう一度調べ始めた。ペジタ国の地図もよく見た。新しい発見はなかったが、この前魔法部屋で新しく覚えた魔法を試してみた。
 ペジタ国の地図の上に魔法をかける。そしてこの前ハビセル侯爵家で見た謎の男を思い浮かべた。すると、地図の上のある一点のところが光っている。どうやらここにあの謎の男がいるようだ。
 キャスリンはその地図に顔を寄せてみた。

 -ここは王都にあるペジタ国の王宮じゃない!

 もう一度確認するが、どう見ても光っているのは地図上で王宮が描かれている場所だった。どうやらあの男は王宮に出入りできるものらしい。確かに父スコットも言っていた。ハビセル侯爵家の援助をしていたと。ハビセル侯爵家はこのナクビル国でも由緒ある家柄であり大貴族だ。そんな大貴族を援助できる商会はそうそうない。やはり後ろにペジタ国が絡んでいると思って間違いない。
 キャスリンは、まずペジタ国の王宮近くの街に行ってみることにした。マークには、一日魔法部屋にこもって魔法の練習をすると伝えておく。
 
 キャスリンは、地図をよく見てから転移した。トウメイニンゲンの魔法も忘れずかけておく。足の裏に地面を確認して目を開けると、キャスリンの目の前には街が広がっていた。いろいろな店が出ているのは、この前スティーブと一緒に出掛けた街に似ている。
 しかしキャスリンは、この前スティーブといった街とは大きく違うのを肌で感じた。店はいろいろ出ているが、買い物をしている人々は少ない。しかもスティーブといった街とは違い、そこまで食べ物の匂いはしないし食べている人々も見当たらない。買い物をしているらしい人々も、そこまで明るい表情をしていないのが気になった。そうして歩いていると、遠くの方で何やら大声で怒鳴っているのが目に入った。キャスリンは慌ててそちらへ走っていった。
 男がどうやら大声で、店の主人に怒鳴っている。

 「この前の男、すぐ死んでしまったぞ。もっと健康な奴をよこせ」

 「この前の男もう死んでしまったんですか。この金額では、ご用意できるのはこの前のランクのものぐらいしか...」

 「なに言ってやがる。この前いくら出したと思ってるんだ」

 キャスリンは何を売っているのかと、店の奥を覗き込んで言葉も出なかった。なんと奥には檻の箱がずらりと並んでいて、その中には人間が鎖につながれてるではないか。どの人間もやせ細っていて、目がどんよりしていた。中には年端もいかない子供らしいものもいて、キャスリンは吐き気がこみあげてきた。
 思わず後ずさると、その店以外にも何件か似たような店があった。どうやらここは人間を売り買いする店が並んでいるらしい。
 キャスリンは怒りがこみあげてきた。すると、急に鎖でつながれた人間たちが入っている檻が、一斉にガタガタと揺れだした。しまいにはその店自体が揺れ始めた。檻の中にいる人間たちは、もう生きる希望もないのか何の反応もなかったが、店の中にいた客と思わしき人たちと店の者たちが右往左往し始めた。

 「なんだ、なんだ。地震か」

 「キャアーーー」

 叫び声をあげて、慌てて店の外に飛び出すものまで出た。キャスリンは力を抑えようと深呼吸を繰り返した。すると、檻や店の揺れは収まってきた。

 「一体何だったんだ」

 「なんだ?」

 次第に周りに人だかりができ始めた。

 「さっきの揺れ、ここだけだぞ」

 「こんなあくどいことしてるから天罰じゃないか?」

 「何かよくないことでも起きるんじゃないか?」

 店の周りに集まってきた人々は、小声で口々に言い始めた。
 やはりこんな人が人を売る行為に、顔をしかめている人も多いことを知って、キャスリンは少しだけ安心した。キャスリンはその集まっている人にトウメイニンゲンのまま耳元で聞いてみた。

 「どうして人を売り買いしているんですか?ここに売られた人々はどういった人達なんですか?」
 
 すると耳元で聞かれた男が話し始めた。

 「ここの人たちは、農村の人達さ。税金を納められずに領主に売られたものや、お金ほしさに親に売られた子供達さ。まあ親だって売りたくなかっただろうが、税金を払えないと自分たちが売られてしまうからね。可哀想に。この人達を買うのは、自分の領の農民が死んだりして少なくなってきた補充要員のためさ。あとはこき使うために買う商人もいるがね」

 「そうなんですね」

 「ああ」

 男はそういって、今まで話していた相手を見ようと横を見ると誰もいなかった。

 「お前、今まで誰としゃべっていたんだ?」

 その男と知り合いの男が、不思議そうに男に聞いた。

 「今、女の子がいなかったか?声が聞こえたんだよ」

 「誰もいなかったぞ。お前しか。夢でも見てたんじゃないのか」

 そういわれた男は、不思議そうに首をひねっていたのだった。

 キャスリンはそのあとも街の様子をつぶさに見て回った。食料を売る店が大半で、この前スティーブと見た装飾品などの小物を売るお店や屋台のような食べ物を売る店が一つもないことを知った。食料を売る店も商品自体が少なく、売っているものもキャスリンでさえ知っている家畜の飼料のようなものも多かった。ただそれを、この国では普通に人間が食べているのを知って驚くほかなかったのだった。
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