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イソベラとの対話
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翌日朝から、キャスリンとマークはストラ男爵領のシムの家に行くことにした。
「ねえマーク、マークをシムの家に連れて行ったら、私行きたいところがあるの。いい?」
「はい、そういうと思っておりました。シムと待っておりますよ。昔話などしながらでも」
「ありがとう」
キャスリンは、キャスリンの部屋に来たマークに言った。
マークとともにシムの仕事部屋に転移する。シムは仕事部屋にいて、この前キャスリンが来たときと同じで薬草を煎じていた。しかしこの前ほど驚いてはいなかった。
「やあシム、来たよ。今から話をしたいんだが、いいかい」
「今日はマークも一緒なんだね。この前にそちらのお嬢さんから聞いてたよ」
「私、今から行かなくてはいけないところがあるのですみません。このお部屋、時を止めておきますね。マーク説明お願いね」
キャスリンは言うが早いが、たちまち消え失せた。
「マークのお嬢さん、どんどん魔法が上手になってるね」
シムがおもわずマークに感想を漏らすと、マークは複雑そうな顔をしたのだった。
キャスリンはまたイソベラの部屋に転移した。今度はトウメイニンゲンになっていない。
「きゃあ~!誰?」
いつものようにみすぼらしい格好で座り込んでいたイソベラは、突然現れたキャスリンにびっくりして大声を上げた。しかしキャスリンはこうなることを予想して、防音と時を止める魔法をこの部屋に施していた。
「びっくりさせてごめんなさい。私キャスリンていうの。ダイモック公爵家のものよ」
一応家庭教師をつけられているイソベラは、ダイモック公爵家の事を知っているのかびっくりしてキャスリンを凝視した。
「なんであなたみたいな人が、こんなところに来るのよ!」
「それは、将来あなたにはめられて婚約破棄されて、毒杯を飲んで死ぬからよ」
キャスリンの話にイソベラは声も出ないようだった。普通なら絶対にそんな突拍子もないことなんか信じるはずもないのだが、こんな急に現れたりすることができるのだ。もしかしたら本当の事かもしれないとイソベラは思った。
「でもどうしてこんな私が、公爵家のお嬢様にそんなことができるの?」
キャスリンはそれには答えないで、黒い大きな箱を出した。そしてイソベラにある映像を見せた。それは前回の人生でキャスリンに起こったことだった。
イソベラはそれを食い入るように眺めていた。
その映像が終わった後、今度はシムたち家族に起こるはずの未来の映像を流した。シムの将来を見た時の映像だ。
キャスリンの映像の時にはただ見ていただけだったが、自分たち家族に起こった悲劇を見た時には、大きな声で意味がわからない言葉をいったり、泣き叫んだりした。その映像が流れ終えた時には、イソベラは放心状態だった。
「今からあなたの未来を見るわ。そしてそれも見せてあげる。それから決めてほしいことがあるの」
キャスリンはイソベラに魔法をかけ、イソベラが将来たどるはずの未来を見せた。最後の方では、キャスリンの顔色が少し変わったが、固まっているイソベラにはわかるはずもなかった。
魔法が終わり、イソベラが動けるようになったのを確認して、キャスリンは再び黒い箱にイソベラの未来の映像を流した。
その映像を見ているイソベラの顔は、なぜか歪んで見えた。
「どうだった?このままだとあなた、皇太子妃になれるわよ。幸せな未来じゃない?」
「いやよ!こんな未来ほしくないわ!シムや母さんみんなの未来をつぶしたうえでの私の未来なんてほしくない。助けて!あなたならできるんでしょ。もしここで死ねっていうんだったら私死んでもいいわ」
そういったイソベラの顔は悲壮感が漂っていた。
「ごめんなさい。あなたに選択してもらいたかったの。あとちょっとだけ復讐したかったから。ごめんなさいね。今のあなたの答えであなたを信用できるわ。正直前の人生であなたにはめられたから、ちょっとあなたを信用できなかったのよ」
キャスリンがそう正直に話したのが、かえって良かったのか、初めてイソベラは笑顔を見せた。その笑顔はとても魅惑的で、こんな貧しい身なりをしていても、やはりキャスリンが知っているイソベラだった。
「私があなたの立場だったら、けちょんけちょんにしてやるわ。知らなかったことだけど、一応謝っておくわ。ごめんなさい」
イソベラの言葉にキャスリンも思わずぷうと吹いてしまい、それを見たイソベラも笑い始め二人はおお互い涙が出るほど笑いあった。ひとしきりふたりで笑いあった後、キャスリンが言った。
「あなたが家族を大切なように、私も家族を大切に思っているの。だからシムはストラ男爵領から逃がすわ。薬を作られてしまっては困るもの。それにシムは私の大切な人の友人でもあるの。だから大切にしないと私は、その人に殺されかねないのよ。その人って怖いのよ」
キャスリンは今ここにいないマークの事を話した。
「できたら私もここから出してほしいわ。家族とは一緒にいられなくてもいいから。母さんを不幸にしたストラ男爵なんて大嫌い。でもあの時は仕方なかったの。お金がほしかったから」
「知ってるわ。私いいことを考えているのよ。お父様にも私が言った怖い人にも力を借りてね。あなたもよかったら一緒に行きましょう」
そういってキャスリンは、シムたちの移住作戦の事を話した。その話を聞いたイソベラの顔はどんどん輝いていったのだった。
「ねえマーク、マークをシムの家に連れて行ったら、私行きたいところがあるの。いい?」
「はい、そういうと思っておりました。シムと待っておりますよ。昔話などしながらでも」
「ありがとう」
キャスリンは、キャスリンの部屋に来たマークに言った。
マークとともにシムの仕事部屋に転移する。シムは仕事部屋にいて、この前キャスリンが来たときと同じで薬草を煎じていた。しかしこの前ほど驚いてはいなかった。
「やあシム、来たよ。今から話をしたいんだが、いいかい」
「今日はマークも一緒なんだね。この前にそちらのお嬢さんから聞いてたよ」
「私、今から行かなくてはいけないところがあるのですみません。このお部屋、時を止めておきますね。マーク説明お願いね」
キャスリンは言うが早いが、たちまち消え失せた。
「マークのお嬢さん、どんどん魔法が上手になってるね」
シムがおもわずマークに感想を漏らすと、マークは複雑そうな顔をしたのだった。
キャスリンはまたイソベラの部屋に転移した。今度はトウメイニンゲンになっていない。
「きゃあ~!誰?」
いつものようにみすぼらしい格好で座り込んでいたイソベラは、突然現れたキャスリンにびっくりして大声を上げた。しかしキャスリンはこうなることを予想して、防音と時を止める魔法をこの部屋に施していた。
「びっくりさせてごめんなさい。私キャスリンていうの。ダイモック公爵家のものよ」
一応家庭教師をつけられているイソベラは、ダイモック公爵家の事を知っているのかびっくりしてキャスリンを凝視した。
「なんであなたみたいな人が、こんなところに来るのよ!」
「それは、将来あなたにはめられて婚約破棄されて、毒杯を飲んで死ぬからよ」
キャスリンの話にイソベラは声も出ないようだった。普通なら絶対にそんな突拍子もないことなんか信じるはずもないのだが、こんな急に現れたりすることができるのだ。もしかしたら本当の事かもしれないとイソベラは思った。
「でもどうしてこんな私が、公爵家のお嬢様にそんなことができるの?」
キャスリンはそれには答えないで、黒い大きな箱を出した。そしてイソベラにある映像を見せた。それは前回の人生でキャスリンに起こったことだった。
イソベラはそれを食い入るように眺めていた。
その映像が終わった後、今度はシムたち家族に起こるはずの未来の映像を流した。シムの将来を見た時の映像だ。
キャスリンの映像の時にはただ見ていただけだったが、自分たち家族に起こった悲劇を見た時には、大きな声で意味がわからない言葉をいったり、泣き叫んだりした。その映像が流れ終えた時には、イソベラは放心状態だった。
「今からあなたの未来を見るわ。そしてそれも見せてあげる。それから決めてほしいことがあるの」
キャスリンはイソベラに魔法をかけ、イソベラが将来たどるはずの未来を見せた。最後の方では、キャスリンの顔色が少し変わったが、固まっているイソベラにはわかるはずもなかった。
魔法が終わり、イソベラが動けるようになったのを確認して、キャスリンは再び黒い箱にイソベラの未来の映像を流した。
その映像を見ているイソベラの顔は、なぜか歪んで見えた。
「どうだった?このままだとあなた、皇太子妃になれるわよ。幸せな未来じゃない?」
「いやよ!こんな未来ほしくないわ!シムや母さんみんなの未来をつぶしたうえでの私の未来なんてほしくない。助けて!あなたならできるんでしょ。もしここで死ねっていうんだったら私死んでもいいわ」
そういったイソベラの顔は悲壮感が漂っていた。
「ごめんなさい。あなたに選択してもらいたかったの。あとちょっとだけ復讐したかったから。ごめんなさいね。今のあなたの答えであなたを信用できるわ。正直前の人生であなたにはめられたから、ちょっとあなたを信用できなかったのよ」
キャスリンがそう正直に話したのが、かえって良かったのか、初めてイソベラは笑顔を見せた。その笑顔はとても魅惑的で、こんな貧しい身なりをしていても、やはりキャスリンが知っているイソベラだった。
「私があなたの立場だったら、けちょんけちょんにしてやるわ。知らなかったことだけど、一応謝っておくわ。ごめんなさい」
イソベラの言葉にキャスリンも思わずぷうと吹いてしまい、それを見たイソベラも笑い始め二人はおお互い涙が出るほど笑いあった。ひとしきりふたりで笑いあった後、キャスリンが言った。
「あなたが家族を大切なように、私も家族を大切に思っているの。だからシムはストラ男爵領から逃がすわ。薬を作られてしまっては困るもの。それにシムは私の大切な人の友人でもあるの。だから大切にしないと私は、その人に殺されかねないのよ。その人って怖いのよ」
キャスリンは今ここにいないマークの事を話した。
「できたら私もここから出してほしいわ。家族とは一緒にいられなくてもいいから。母さんを不幸にしたストラ男爵なんて大嫌い。でもあの時は仕方なかったの。お金がほしかったから」
「知ってるわ。私いいことを考えているのよ。お父様にも私が言った怖い人にも力を借りてね。あなたもよかったら一緒に行きましょう」
そういってキャスリンは、シムたちの移住作戦の事を話した。その話を聞いたイソベラの顔はどんどん輝いていったのだった。
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