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行商の方あなたもですよ ※ご注意ください。少し残酷な表現が出てきます。
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行商の男はにやにやしながら、次のお屋敷へと向かった。実はこの男、ハビセル侯爵から援助を受けて、安い値段で貴族の屋敷に荷を下ろしている。はじめ胡散臭がった屋敷もの者たちも、品はいいし安いし毎回ちょこっと屋敷の使用人たちにお土産を持ってくるので、たちまち人気になった。それもこれもダイモック公爵家寄りの貴族の中に忍び込む者を作るためだったのだ。
「こんにちは」
屋敷の裏で挨拶する。すると使用人の一人が出てきて、荷物を受け取り始めた。出てきた使用人は行商の男とつながっている。小声で話をしようとした時だった。
「行商やさん、今日は私たちも立ち会わせてもらうよ」
そういっていつもは来ないこの屋敷の執事やほかの使用人数人がやってきた。行商の男は思わず舌打ちをしそうになったが、愛想よく振舞った。
「ありがとうございます。これが今日の荷物です」
そういって持ってきた箱を開けた時だった。プ~ンとものすごい匂いが箱から漂いだした。びっくりして行商の男が箱の中をのぞくと箱の中身が腐っていた。
「えっ?」
行商の男がびっくりする暇もなく、執事ともう一人の使用人たちがほかの箱も開け始めた。開けるたびひどい匂いが鼻をついた。
「何だい?これは?」
執事やほかの使用人たちが怒った顔で行商の男に怒鳴った。
「先ほどまでは何ともなかったのですが...」
行商の男はわけがわからなかった。
「この前おろしてもらった荷物も腐っていたんだよ。もう来なくていいから。あとこの使用人に何か渡していたそうだね。こいつ、うちの事を嗅ぎまわっていたよ。お前の仲間なんだろ。一緒にやめてくれ!」
行商の男とグルだった使用人も首になってしまった。どうやらわいろを渡していたのがばれたらしい。行商の男はわけがわからず屋敷を後にした。先ほどの屋敷で首になった男もついてきた。次の屋敷に行く途中、さきほど屋敷を首になった男と、馬車の中の荷物の中身を確かめたが別に何ともなかった。
「おい、どうしてくれるんだよ」
首になった男は、そうぶつぶつ言いながらも行商の男についてきた。行くところがないので仕方ない。行商の男も首になった男の機嫌を損ねないように言った。
「心配するな。お前の働き口はストラ男爵様が探してくれるからさ」
仕方なく行商の男と首になった男は次の屋敷に向かった。しかしである。次の屋敷でも先ほどの事と同じことが起こってしまった。しかも次に向かった先でも。
ついには行商の男が回るお屋敷すべて商いができなくなってしまった。しかも苦労して忍び込ませた者たちまで次々に首になってしまったのだ。
「なんでだ~!お前たちがやったんだろ~!」
「こっちこそお前のせいで仕事がなくなっちゃったじゃないか!」
「「「そうだ!そうだ!」」」
行商の男が、ついに切れて首になった男たちにわめき始めた。行商の男に言われた男たちも黙っていない。行商の男を取り囲み、次々に行商の男を殴り始めた。みんなで殴っていたら、その中の一人が行商の男がピクリともしなくなったことに気が付いた。
「おい、こいつ息してないぞ」
殴られて顔が変わってしまうほど腫れあがっている行商の男のそばに、顔を近づけて一人の男が言った。皆で行商の男を見たが、どうやら本当に息をしていない。
「わあー!」
殴っていた男の一人がびっくりして逃げ出した。それを合図にほかの者たちも慌ててその場を去った。
後には顔が腫れあがって見る影もない行商の男が一人道端に残されていたのであった。
キャスリンは、その様子をずっと見ていた。
「やっと終わったわね」
すべてはキャスリンが仕組んだことだった。行商の男が荷を下ろしているお屋敷すべての当主に、スコット公爵自ら話をしてあった。キャスリンがあらかじめストラ男爵の元にあった報告書をコピーして、スコット公爵自らその屋敷の当主たちに渡した。そしてその家の者たちがその報告書にあった名前の男を探っていたら、本当にその者が怪しい動きをしたのだった。キャスリンは荷物を腐らしたり忙しかったが、うまい具合にいってほっとした。
ーこれで、シムたち親子を安心して連れてくることができるわね。
キャスリンは自分の部屋に戻った。そして部屋を出てマークを探す。マークを見つけると飛んでいった。
「マーク、終わったわよ」
この言葉でマークはすべて理解した。
「ありがとうございました」
「ねえお父様は執務室にいらっしゃる?ああ、そういえば彼は自分の部屋にいるわ。よろしくね」
マークは理解した。
「いらっしゃいますよ。はい、きちんと片づけておきますので」
キャスリンはマークの答えに満足して父の元へ向かった。
執務室のドアをノックする。中から声がしたので、キャスリンは部屋に入っていった。
「お父様、終わりましたわよすべて」
「ありがとう。じゃあ今度は、シムたちを頼むな。もう住むところは用意してあるから」
「はい、じゃあ明日にでもマークと一緒に行ってきます。今日はマーク、彼の始末で忙しいでしょうから」
そういってキャスリンは執務室を後にした。
スコットはキャスリンの後姿を見送って、安堵のため息をひとつこぼしたのだった。
「こんにちは」
屋敷の裏で挨拶する。すると使用人の一人が出てきて、荷物を受け取り始めた。出てきた使用人は行商の男とつながっている。小声で話をしようとした時だった。
「行商やさん、今日は私たちも立ち会わせてもらうよ」
そういっていつもは来ないこの屋敷の執事やほかの使用人数人がやってきた。行商の男は思わず舌打ちをしそうになったが、愛想よく振舞った。
「ありがとうございます。これが今日の荷物です」
そういって持ってきた箱を開けた時だった。プ~ンとものすごい匂いが箱から漂いだした。びっくりして行商の男が箱の中をのぞくと箱の中身が腐っていた。
「えっ?」
行商の男がびっくりする暇もなく、執事ともう一人の使用人たちがほかの箱も開け始めた。開けるたびひどい匂いが鼻をついた。
「何だい?これは?」
執事やほかの使用人たちが怒った顔で行商の男に怒鳴った。
「先ほどまでは何ともなかったのですが...」
行商の男はわけがわからなかった。
「この前おろしてもらった荷物も腐っていたんだよ。もう来なくていいから。あとこの使用人に何か渡していたそうだね。こいつ、うちの事を嗅ぎまわっていたよ。お前の仲間なんだろ。一緒にやめてくれ!」
行商の男とグルだった使用人も首になってしまった。どうやらわいろを渡していたのがばれたらしい。行商の男はわけがわからず屋敷を後にした。先ほどの屋敷で首になった男もついてきた。次の屋敷に行く途中、さきほど屋敷を首になった男と、馬車の中の荷物の中身を確かめたが別に何ともなかった。
「おい、どうしてくれるんだよ」
首になった男は、そうぶつぶつ言いながらも行商の男についてきた。行くところがないので仕方ない。行商の男も首になった男の機嫌を損ねないように言った。
「心配するな。お前の働き口はストラ男爵様が探してくれるからさ」
仕方なく行商の男と首になった男は次の屋敷に向かった。しかしである。次の屋敷でも先ほどの事と同じことが起こってしまった。しかも次に向かった先でも。
ついには行商の男が回るお屋敷すべて商いができなくなってしまった。しかも苦労して忍び込ませた者たちまで次々に首になってしまったのだ。
「なんでだ~!お前たちがやったんだろ~!」
「こっちこそお前のせいで仕事がなくなっちゃったじゃないか!」
「「「そうだ!そうだ!」」」
行商の男が、ついに切れて首になった男たちにわめき始めた。行商の男に言われた男たちも黙っていない。行商の男を取り囲み、次々に行商の男を殴り始めた。みんなで殴っていたら、その中の一人が行商の男がピクリともしなくなったことに気が付いた。
「おい、こいつ息してないぞ」
殴られて顔が変わってしまうほど腫れあがっている行商の男のそばに、顔を近づけて一人の男が言った。皆で行商の男を見たが、どうやら本当に息をしていない。
「わあー!」
殴っていた男の一人がびっくりして逃げ出した。それを合図にほかの者たちも慌ててその場を去った。
後には顔が腫れあがって見る影もない行商の男が一人道端に残されていたのであった。
キャスリンは、その様子をずっと見ていた。
「やっと終わったわね」
すべてはキャスリンが仕組んだことだった。行商の男が荷を下ろしているお屋敷すべての当主に、スコット公爵自ら話をしてあった。キャスリンがあらかじめストラ男爵の元にあった報告書をコピーして、スコット公爵自らその屋敷の当主たちに渡した。そしてその家の者たちがその報告書にあった名前の男を探っていたら、本当にその者が怪しい動きをしたのだった。キャスリンは荷物を腐らしたり忙しかったが、うまい具合にいってほっとした。
ーこれで、シムたち親子を安心して連れてくることができるわね。
キャスリンは自分の部屋に戻った。そして部屋を出てマークを探す。マークを見つけると飛んでいった。
「マーク、終わったわよ」
この言葉でマークはすべて理解した。
「ありがとうございました」
「ねえお父様は執務室にいらっしゃる?ああ、そういえば彼は自分の部屋にいるわ。よろしくね」
マークは理解した。
「いらっしゃいますよ。はい、きちんと片づけておきますので」
キャスリンはマークの答えに満足して父の元へ向かった。
執務室のドアをノックする。中から声がしたので、キャスリンは部屋に入っていった。
「お父様、終わりましたわよすべて」
「ありがとう。じゃあ今度は、シムたちを頼むな。もう住むところは用意してあるから」
「はい、じゃあ明日にでもマークと一緒に行ってきます。今日はマーク、彼の始末で忙しいでしょうから」
そういってキャスリンは執務室を後にした。
スコットはキャスリンの後姿を見送って、安堵のため息をひとつこぼしたのだった。
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