大切なあのひとを失ったこと絶対許しません

にいるず

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希少種のダックスフンドになりました

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 「スティーブ、失礼ね。私よ、キャスリンよ」
 
 犬?と言われたキャスリンは大声でスティーブに文句を言った。

 「夢か、変な夢だなあ。犬がキャスリン様の声でしゃべっている。まああんな短い脚の犬なんているわけないか」

 スティーブはまた体を倒した。どうやら夢だと思って寝ることにしたらしい。

 「スティーブ!夢じゃないわよ!寝ないでよ!スティーブ!」

 あまりにキャスリンが叫ぶので、スティーブはまた起きてキャスリンならぬ犬のほうをよ~く見た。

 「ねえ私よ、キャスリンよ!」

 キャスリンはベッドに短い脚を置いてスティーブにアピールした。

 「お嬢様?お嬢様が犬?になった?」

 スティーブはベッドに短い脚を置いて必死によじ登ろうとしている犬?をぼ~と見ていたが、キャスリンならぬ犬の長い胴体を両手でつかんでベッドの上に置いた。

 「ありがとう、スティーブ」

 キャスリンはやっとベッドの上に置いてもらえて、しかもスティーブの寝ているベッドの上とあってはしゃいでスティーブに飛び込んでいった。
 スティーブはといえばいきなり茶色い犬?が自分にタックルしてくるのを見て、また胴体をつかんで少し持ち上げ犬の顔を見た。どこからどう見ても犬にしか見えなかった。ただし長い胴体についているのはすごく短い脚だったが。スティーブが持ち上げたせいで足が宙に浮いてぶらぶらしてる。

 「ひゃあ~。スティーブおろして、おろしてよ」

 いきなり持ち上げられ驚いたキャスリンは身をよじった。スティーブは暴れる犬のキャスリンを今度はしっかり胸で抱きかかえた。
 キャスリンはスティーブのぬくもりを感じて、うれしさのあまり首を伸ばしてスティーブの顎をぺろっとなめた。

 「くすぐったい!」

 そういいながらもスティーブも顔が緩んでいた。
 スティーブが優しく体をなでてくれているので、しばらくじっとそのままでいたが話をすることにした。

 「スティーブ、話があるの」

 キャスリンの改まった物言いにスティーブの背筋が少し伸びた。

 「さっき大声出しちゃったけど、マークやバーバラに気づかれなくてよかったわ」

 キャスリンの言葉を聞いてスティーブがはっとしたようにキャスリンの顔を見た。犬だけど。

 「父と妹は昨年亡くなりました。今ここには私一人です」

 「えっ、そうかそうなのね。今スティーブは何歳なの?」

 「今は17歳です。犬じゃないキャスリン様は15歳ですよ」

 こんな時でもキャスリンの気持ちを少しでも明るくしようとしてくれるスティーブに思い切り体をうずめた。
 
 「温かいわスティーブ」

 「犬?のお嬢様も温かいですよ」

 「スティーブ、さっきからなんで犬のところ疑問形なの?」

 「こんな体系の犬は初めて見たので。足がやけに短くて胴体が長いですね。キャスリン様が変化したからこんな犬もどきになったんですか?」

 キャスリンがスティーブの言葉にムッとして顔を上げるとスティーブの白い歯が見えた。
 
 「これはねダックスフンドといって珍しいのよ!それよりスティーブは私がどうしてこんな格好で来たのか驚かないの?」

 「驚きましたよ。さっきも大声を出したんじゃないですか」

 「そうだったわね。ねえスティーブは自分の生まれとか魔法のことマークから聞いた?」

 「はい、一応は。ただもっと詳しく説明してくれる前に死んでしまったので、どうやって使っていいのかわからないんです」

 「そうなの」

 キャスリンはスティーブをあらためて見直した。やはり魔力はあるだろう。よく目を凝らすとスティーブの体の後ろに黄色い光が見える。自分では見えないけれどたぶんキャスリンの体も見えているのかもしれない。

 「今はスティーブと話したかったから、時間を止めているの」

 「えっ、そうなんですか?」

 「だってスティーブが寝不足じゃあ、学園生活に差し支えるでしょ。それにキャスリン2号の護衛をしてるんだから」

 「お屋敷にいるキャスリン様が2号なんですか?じゃあここにいる犬もどきのキャスリン様は?」

 「なに言ってるの。私がキャスリン1号よ」

 犬なので胸を張れないがつんと澄ましてキャスリンは言った。
 スティーブはキャスリンの言葉にぷっと吹きだした。
 
 「キャスリン様、犬になったせいなのかちょっと性格が変わりましたね」

 「いろいろあったのよ。一度死んでるしね」

 キャスリンの一言に目を丸くしたスティーブだった。



 
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