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自分を見える人がいました
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キャスリンはそのまま男の子の後をついていった。
男の子はどんどん道を歩いていく。どれくらい歩いたのだろう。一つの村に出た。どの家も生活が楽そうには見えなかった。男の子はその中の一軒の家に入っていった。キャスリンも家の中に入っていく。
家の中に入ると、何やら薬草の匂いがした。
玄関からすぐの部屋は作業部屋になっているようで、いろいろな草が天井からつるされている。キャスリンがあたりを見回すと、男の子はもう一つの部屋にいた。その部屋には、二人の大人の男女と先ほどの男の子、そして双子であろうまだ幼い赤ちゃんが二人ベッドに寝かされていた。
「どうだった?イソベラの様子は?」
「うん、あんまり顔色がよくない。洋服だってとてもお貴族様が着るような洋服じゃないよ」
それを聞いて顔をしかめたのは男の子の父親であろう。髪の色や全体が似ている。横にいる女性は男の子の話を聞いて悲しそうな顔をした。
「すまない、エミリー。私がふがいないばかりに、君の娘を不幸にしてしまっている」
そういった男の人は、エミリーと呼ばれた女性の手を握り謝った。
「いいえ、あなたのせいではないわ。やはりあの男の言うことは嘘だったのね。やっぱりイソベラを渡すんじゃあなかった」
エミリーはそういって何かをこらえるようにただただ下を向いていた。上を向けば泣き声が出てしまうとばかりに男の人の手をぎゅっと握り返した。
男性はそっとエミリーを抱き寄せて背中をさすった。
「お父さん、体の調子がよくなったらまた薬作れるよね。僕薬草取ってくるからいっぱい作ろうよ。そうしてイソベラと一緒にここを出よう」
「そうだな。もうちょっと経ったら双子たちも大きくなるだろう。そうしたらみんなでここを出よう」
キャスリンは黙ってその様子を見ていたが、なんだか悲しくなって家を出ようとした時だった。
それまで家族でしゃべっていた男性が不意にキャスリンのほうを向いた。
まるでキャスリンが見えているかのように、まっすぐにキャスリンを見つめている。その顔には驚きが満ちていた。キャスリンもその男性と目が合って慌ててしまった。思いがけないことに立ちすくんでいると、男の子の声がした。
「父さん、どうしたの?」
男の子は男の人の視線の先にいるキャスリンのほうを見たが、やはり男の子にはキャスリンの姿が見えないようで、視線が宙をさまよっている。
男の人ははっとして、キャスリンを見つめていた視線をゆっくりと剥がしどこか別のほうを見ていった。
「伝説の国アシュイラがあったら行きたいものだ。みんなが幸せになれるかもしれない」
「お父さん、本当にアシュイラ国ってあるの?みんながそれは伝説だといっていたよ」
「そうか、そうかもな」
男の人は女の人の背中をさすっていないもう一方の手で、男の子の頭をそっとなでながらふたたびキャスリンを見つめた。
キャスリンは、再び男の人と目が合って、つい聞いてしまった。
「アシュイラ国を知っているの?」
男の人はキャスリンに顔を向けたままうなずいた。
キャスリンは男の人がキャスリンを見えたこと、そして声が聞こえることを知って動揺してその場から逃げるように消えた。
気が付けばキャスリンはいつもの魔法の練習部屋に戻っていた。
キャスリンは前の人生の時に大変な時や苦しい時にはよくスティーブに話を聞いてもらっていたことを懐かしく思い出した。そのうち無性にスティーブが恋しくなり、会えるはずもないのに部屋の中で叫んでいた。
「ねえスティーブ、びっくりしたわ。あの男の人、どうして私が見えたのかしら?どうして?それにイソベラは本当に悪い子だったの?教えて。スティーブ?」
急に体がどこかに投げ出されるような衝撃が襲った。
あっと思う間もなく部屋ではない場所に立っていた。
「ねえスティーブ、今からマナーの授業だから大丈夫よ。あなたはもう行って。今から剣の授業でしょ?」
「はい、ですが教室までお送りします」
「教室って言ってもすぐそこよ」
「キャスリン様は私たちと行きますから大丈夫ですよ。さあキャスリン様いきましょう」
そういって15歳ぐらいののキャスリンと懐かしいお友達たちが教室のほうに去っていった。
スティーブはずっとキャスリン達が教室に行くのを見ていたが、教室に入っていくのを確認して踵を返した。
キャスリンは目の前の情景が信じられなかった。先ほど目の前に自分がいた。15歳ぐらいだけど。
それより驚いたのは目の前にスティーブがいたことだ。普通にもう一人のキャスリンと話していた。
キャスリンはおもわず叫んでいた。
「スティーブ!!」
名前を呼ばれたスティーブは、一瞬戸惑ったようにあたりをきょろきょろ見回した。そしてキャスリンを見ると顎が外れんばかりの表情をした。思い切り固まっているようにも見える。そして何を思ったのか先ほどまで見送った教室のほうを見て、また目の前にいるキャスリンを見る。それを何度か繰り返していた。
キャスリンは思わずスティーブのほうに向かって走っていった。抱き着くつもりだった。
しかしキャスリンの体はスティーブを通り抜けてしまった。
キャスリンが目の前に来て自分の体を通り抜けたのを感じたスティーブは、後ろを向いてキャスリンのほうを見た。
「キャスリン様?ですか」
スティーブの声は少し震えていて焦っているように見えた。
男の子はどんどん道を歩いていく。どれくらい歩いたのだろう。一つの村に出た。どの家も生活が楽そうには見えなかった。男の子はその中の一軒の家に入っていった。キャスリンも家の中に入っていく。
家の中に入ると、何やら薬草の匂いがした。
玄関からすぐの部屋は作業部屋になっているようで、いろいろな草が天井からつるされている。キャスリンがあたりを見回すと、男の子はもう一つの部屋にいた。その部屋には、二人の大人の男女と先ほどの男の子、そして双子であろうまだ幼い赤ちゃんが二人ベッドに寝かされていた。
「どうだった?イソベラの様子は?」
「うん、あんまり顔色がよくない。洋服だってとてもお貴族様が着るような洋服じゃないよ」
それを聞いて顔をしかめたのは男の子の父親であろう。髪の色や全体が似ている。横にいる女性は男の子の話を聞いて悲しそうな顔をした。
「すまない、エミリー。私がふがいないばかりに、君の娘を不幸にしてしまっている」
そういった男の人は、エミリーと呼ばれた女性の手を握り謝った。
「いいえ、あなたのせいではないわ。やはりあの男の言うことは嘘だったのね。やっぱりイソベラを渡すんじゃあなかった」
エミリーはそういって何かをこらえるようにただただ下を向いていた。上を向けば泣き声が出てしまうとばかりに男の人の手をぎゅっと握り返した。
男性はそっとエミリーを抱き寄せて背中をさすった。
「お父さん、体の調子がよくなったらまた薬作れるよね。僕薬草取ってくるからいっぱい作ろうよ。そうしてイソベラと一緒にここを出よう」
「そうだな。もうちょっと経ったら双子たちも大きくなるだろう。そうしたらみんなでここを出よう」
キャスリンは黙ってその様子を見ていたが、なんだか悲しくなって家を出ようとした時だった。
それまで家族でしゃべっていた男性が不意にキャスリンのほうを向いた。
まるでキャスリンが見えているかのように、まっすぐにキャスリンを見つめている。その顔には驚きが満ちていた。キャスリンもその男性と目が合って慌ててしまった。思いがけないことに立ちすくんでいると、男の子の声がした。
「父さん、どうしたの?」
男の子は男の人の視線の先にいるキャスリンのほうを見たが、やはり男の子にはキャスリンの姿が見えないようで、視線が宙をさまよっている。
男の人ははっとして、キャスリンを見つめていた視線をゆっくりと剥がしどこか別のほうを見ていった。
「伝説の国アシュイラがあったら行きたいものだ。みんなが幸せになれるかもしれない」
「お父さん、本当にアシュイラ国ってあるの?みんながそれは伝説だといっていたよ」
「そうか、そうかもな」
男の人は女の人の背中をさすっていないもう一方の手で、男の子の頭をそっとなでながらふたたびキャスリンを見つめた。
キャスリンは、再び男の人と目が合って、つい聞いてしまった。
「アシュイラ国を知っているの?」
男の人はキャスリンに顔を向けたままうなずいた。
キャスリンは男の人がキャスリンを見えたこと、そして声が聞こえることを知って動揺してその場から逃げるように消えた。
気が付けばキャスリンはいつもの魔法の練習部屋に戻っていた。
キャスリンは前の人生の時に大変な時や苦しい時にはよくスティーブに話を聞いてもらっていたことを懐かしく思い出した。そのうち無性にスティーブが恋しくなり、会えるはずもないのに部屋の中で叫んでいた。
「ねえスティーブ、びっくりしたわ。あの男の人、どうして私が見えたのかしら?どうして?それにイソベラは本当に悪い子だったの?教えて。スティーブ?」
急に体がどこかに投げ出されるような衝撃が襲った。
あっと思う間もなく部屋ではない場所に立っていた。
「ねえスティーブ、今からマナーの授業だから大丈夫よ。あなたはもう行って。今から剣の授業でしょ?」
「はい、ですが教室までお送りします」
「教室って言ってもすぐそこよ」
「キャスリン様は私たちと行きますから大丈夫ですよ。さあキャスリン様いきましょう」
そういって15歳ぐらいののキャスリンと懐かしいお友達たちが教室のほうに去っていった。
スティーブはずっとキャスリン達が教室に行くのを見ていたが、教室に入っていくのを確認して踵を返した。
キャスリンは目の前の情景が信じられなかった。先ほど目の前に自分がいた。15歳ぐらいだけど。
それより驚いたのは目の前にスティーブがいたことだ。普通にもう一人のキャスリンと話していた。
キャスリンはおもわず叫んでいた。
「スティーブ!!」
名前を呼ばれたスティーブは、一瞬戸惑ったようにあたりをきょろきょろ見回した。そしてキャスリンを見ると顎が外れんばかりの表情をした。思い切り固まっているようにも見える。そして何を思ったのか先ほどまで見送った教室のほうを見て、また目の前にいるキャスリンを見る。それを何度か繰り返していた。
キャスリンは思わずスティーブのほうに向かって走っていった。抱き着くつもりだった。
しかしキャスリンの体はスティーブを通り抜けてしまった。
キャスリンが目の前に来て自分の体を通り抜けたのを感じたスティーブは、後ろを向いてキャスリンのほうを見た。
「キャスリン様?ですか」
スティーブの声は少し震えていて焦っているように見えた。
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