かん子の小さな願い

にいるず

文字の大きさ
上 下
44 / 46

かん子と正也の同居?シェア?

しおりを挟む
 かん子が意識をとばしてからどれくらいたったのだろうか?

 「おいっ!大丈夫か?いったいどうしたんだ?」

 すぐ目の前10センチぐらい先に正也の綺麗な顔が、かん子をのぞきこんでいる。
 正也の表情は、ひどく心配しているように見えた。

 「だ、だ、大丈夫だよ。ほんと脅かさないでよ~。お化けかと思ったじゃん」

 「こっちこそびっくりしたぞ。ドア開けたら目の前がいきなり壁だしさ。動かすのが大変だったぞ。いったい誰がやったんだ?まあ見当は付いてるけどな。それにしてもさっきのかん子の顔、おかしかったぞ。半分白目むいててこっちがお化けかと思ったぞ」

 かん子が話す姿を見て安心したのか、さっきの心配顔はどこへやら正也はまた意地悪を言った。

 「いきなり変な音が聞こえたら誰でも驚くよ。さっきの変なうめき声って、何だったのよ。それにドアって何?」

 「変なうめき声って失礼な奴だなあ。あれは、重い段ボールを動かす時に出た声だ。ほんと重かったぞ、何入ってるんだ?あとドアは、さっき段ボールが積み上げてある所にあるんだよ。俺の部屋とつながってる」

 「あの段ボールの中身は好きな本や漫画。ねえ、俺の部屋ってどこの部屋?何つながってるって。ここマンションだよ」

 「ここの隣が俺の部屋。ここと俺のリビングをつなぐドアだよ。わざわざ玄関から出入りするの面倒だろ。ここにドアがあれば、すぐ行けるし。鍵いらないしな」

 正也はどうだ!この俺の素晴らしいアイデアは!とでもいいいたいぐらいの勢いで、俺様発言を当たり前のようにいった。
 かん子は、正也の俺様発言にびっくりした。

 「えっ__!?どうしてあんたの部屋なんかとつながんなくちゃいけないのよ。ここは乙女の聖地だ!そんなところにずかずかとあんたみたいなやつが、入っていいわけないじゃん」

 「乙女って誰だよ、そんなのどこにいんの。それにさ、かん子そんな強気発言しちゃっていいの?そういえばいってなかったけど、ここ社員寮じゃないし。この部屋俺のなんだよね。借りると高いよ。かん子払ってくれるの?」

 「払ってやるわよ?いくらよ家賃て。そうしたらドアからはいらないでよ」

 「あ~あ!かん子強気~!いろいろ込みで、家賃にしたら月20万ぐらいかな?もっとかも?かん子払えんの?」
 
 正也は、何とも言えない黒い笑みを浮かべていった。

 かん子はその金額を聞いて、一瞬絶句した。かん子は思わずそんな正也の得意そうな顔を、ぶっ飛ばしてやりたくなった。
 マンションの部屋を初めて見たとき、あまりに綺麗でびっくりしたのだ。

 しかも自分の思い描いてた一人暮らしとは違い、超セレブな一人暮らしにもうここで生活するという夢を十万キロぐらいはせていたのだ。
 それが夢で終わってしまうとは。しかも実際この部屋を見た分たちが悪い。
 きっと他のどの部屋を見ても、この部屋を見た後ではもう満足できないだろう。

 かん子は恐る恐る正也にいってみた。

 「普段はお互い自分のスペースで生活するんでしょ?ちなみにそのドアってなんの時に使うの?」

 思わず声が小さくなってしまう。

 正也はかん子の弱気発言に気を良くしたのか、ご機嫌な顔でいいはなった。

 「かん子~おばさんに聞いてなかったの?これからかん子が俺の食事を作るの!ちなみに朝食と夕食ね。まあお昼まではいいよ。どっちの部屋で食べてもいいんだけど、毎日行き来するの大変でしょ。だからこのドア」

 よくわからない子供に、いいふくめるように正也は言った。

 かん子は、その言い方にカチンときて思わずいった。

 「聞いてない!ただ何かあるとは聞いたけど、食事の支度?なんて聞いてない」

 かん子の怒りに正也は苦笑していった。

 「ご飯作ってくれたら、ここの家賃ただなんだけどな。しかも光熱費込み。もちろん食費は別に払うよ」

 かん子は聞いてびっくりした。

 (こんなにいい話はないかも。まあドアがあるっていったって、普段は別に生活できるし。シェアハウスだと思えばいいかも。しかも食費別に出してくれるの?自分の食費浮いちゃうかも)

 かん子は、さっきの正也の話にこれからのことを思いっきり皮算用していて、正也がいることを忘れてしまい一人にやけてしまった。

 正也は、かん子の顔がふにゃとにやけていくのを半分笑ってみてしまった。正也は正也で、かん子がもうドアのことを何とも思っていないだろう、もしかしたらもうドアのことさえ忘れているかもしれないと思い、これからの生活が楽しくなるのだった。

 「かん子、何ニヤニヤしてるんだよ。まずは夕食たべにいこうぜ。ご飯作りは明日からにしてやるな」

 正也の声にかん子はびっくりした。

 ふと今いる場所を思い出し、どうしてもにやけてしまう顔をがんばって止めようとした。
 かん子がひとり皮算用にふっけている間に、正也は散らばった段ボールを部屋の隅にかたずけたようだった。

 「早く支度しろよ。また呼びに来る」

 正也はそういうと、さっきのドアから部屋に戻ろうとした。

 「待ってよぉ。さっきので腰ぬけて動けないみたい」

 情けない顔でかん子が言った。かん子も動こうとしたのだが、腰に力が入らなかったのだ。

 「おいっ!おまえまた腰ぬけたの?いったい何回抜けるんだよ」

 正也は呆れていった。

 「小学校の時の子供会のきもだめし以来だよ」

 「仕方ないなあ」

 正也はかん子にそういうと、なぜかうれしそうに近づいてきて、かん子のほうにかがむと、いきなりお姫様だっこをしてかん子の寝室へと連れていった。

 「今日は適当になんか買ってくるよ。それまで休んでいて」

 正也はそういうと、そそくさといってしまった。
 かん子はといえば、さっきのお姫様だっこにまたまた思いっきり意識が飛んでしまったのであった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

ずぶ濡れで帰ったら彼氏が浮気してました

宵闇 月
恋愛
突然の雨にずぶ濡れになって帰ったら彼氏が知らない女の子とお風呂に入ってました。 ーーそれではお幸せに。 以前書いていたお話です。 投稿するか悩んでそのままにしていたお話ですが、折角書いたのでやはり投稿しようかと… 十話完結で既に書き終えてます。

ずぶ濡れで帰ったら置き手紙がありました

宵闇 月
恋愛
雨に降られてずぶ濡れで帰ったら同棲していた彼氏からの置き手紙がありーー 私の何がダメだったの? ずぶ濡れシリーズ第二弾です。 ※ 最後まで書き終えてます。

わたしは夫のことを、愛していないのかもしれない

鈴宮(すずみや)
恋愛
 孤児院出身のアルマは、一年前、幼馴染のヴェルナーと夫婦になった。明るくて優しいヴェルナーは、日々アルマに愛を囁き、彼女のことをとても大事にしている。  しかしアルマは、ある日を境に、ヴェルナーから甘ったるい香りが漂うことに気づく。  その香りは、彼女が勤める診療所の、とある患者と同じもので――――?

婚約破棄とか言って早々に私の荷物をまとめて実家に送りつけているけど、その中にあなたが明日国王に謁見する時に必要な書類も混じっているのですが

マリー
恋愛
寝食を忘れるほど研究にのめり込む婚約者に惹かれてかいがいしく食事の準備や仕事の手伝いをしていたのに、ある日帰ったら「母親みたいに世話を焼いてくるお前にはうんざりだ!荷物をまとめておいてやったから明日の朝一番で出て行け!」ですって? まあ、癇癪を起こすのはいいですけれど(よくはない)あなたがまとめてうちの実家に郵送したっていうその荷物の中、送っちゃいけないもの入ってましたよ? ※またも小説の練習で書いてみました。よろしくお願いします。 ※すみません、婚約破棄タグを使っていましたが、書いてるうちに内容にそぐわないことに気づいたのでちょっと変えました。果たして婚約破棄するのかしないのか?を楽しんでいただく話になりそうです。正当派の婚約破棄ものにはならないと思います。期待して読んでくださった方申し訳ございません。

好きな男子と付き合えるなら罰ゲームの嘘告白だって嬉しいです。なのにネタばらしどころか、遠恋なんて嫌だ、結婚してくれと泣かれて困惑しています。

石河 翠
恋愛
ずっと好きだったクラスメイトに告白された、高校2年生の山本めぐみ。罰ゲームによる嘘告白だったが、それを承知の上で、彼女は告白にOKを出した。好きなひとと付き合えるなら、嘘告白でも幸せだと考えたからだ。 すぐにフラれて笑いものにされると思っていたが、失恋するどころか大切にされる毎日。ところがある日、めぐみが海外に引っ越すと勘違いした相手が、別れたくない、どうか結婚してくれと突然泣きついてきて……。 なんだかんだ今の関係を最大限楽しんでいる、意外と図太いヒロインと、くそ真面目なせいで盛大に空振りしてしまっている残念イケメンなヒーローの恋物語。ハッピーエンドです。 この作品は、他サイトにも投稿しております。 扉絵は、写真ACよりhimawariinさまの作品をお借りしております。

愛する人が妊娠させたのは、私の親友だった。

杉本凪咲
恋愛
愛する人が妊娠させたのは、私の親友だった。 驚き悲しみに暮れる……そう演技をした私はこっそりと微笑を浮かべる。

長い片思い

詩織
恋愛
大好きな上司が結婚。 もう私の想いは届かない。 だから私は…

睡蓮

樫野 珠代
恋愛
入社して3か月、いきなり異動を命じられたなぎさ。 そこにいたのは、出来れば会いたくなかった、会うなんて二度とないはずだった人。 どうしてこんな形の再会なの?

処理中です...