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かん子の入社式 その4
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かん子は駅に向かって歩いていた。今日はいろいろあって疲れていた。
後ろから声がする。自分を呼んでるのだろうか。もしそうであっても聞き覚えのある声ではない。疲れているし後ろを振り向く気力もない。あとは帰って寝るだけだ。
かん子は後ろの声を無視して歩き続けた。
後ろからこちらに向かって駆けてくる音と同時に、腕を掴まれた・・・・・。
かん子は、びっくりして後ろを振り向いた。疲れているところに腕を強くつかまれて、思わず声を荒げた。
「なんなのよー!」
「呼んでるのに、なんで振り向かないんだよ!」
なぜか相手は、勝手に逆切れしている。
怒りたいのはこっちだよと思わず相手の顔を見れば・・・・・。そこには母親のお披露会のロビーで会った、あのつき刺さるような視線をむけてきた男が、これ以上ないようなほどの不機嫌さを身にまとい立っていた。
(え___!いなり寿司の事まだ疑ってる?)
かん子は、とっさに逃げようとくるりと向きをかえようとしたが、まだ男はかん子の腕をむんずとつかんで離そうとはしなかった。
「ちょっと待って!あれは誤解なのよ」
かん子がいなり寿司のことを説明しようとすると、男が口を開いた。
「俺のこと覚えてないの?」
「だからいなり寿司のことでしょ?だから...」
男はかん子の話を遮るように、腕を掴んで駅に向かった。
かん子はびっくりして、足をふんばってあがらおうとした。
「今から帰るんだろ?同じ電車だから駅に向かうぞ」
「駅って?」
「家に帰るのに電車乗るだろ?だから駅に向かってるんだよ」
お前そんなこともわからないのかとあたり前のようにいって、かん子の腕を掴んでひきずるように駅にどんどん歩いて行った。
駅で勝手にかん子の分まで切符を買い、かん子に渡す。しかもかん子の降りる駅までの切符である。
男は、切符を買う間だけかん子から腕を離し、切符を渡すとまたかん子のうでを掴んで歩いて行く。絶対にはなさないとでもいうように。
かん子はわけがわからなかった。この自分の目の前にいる変な男は、誰なんだ?かん子よりはるかに大きい。しかもかなりの美形だ。男性的な整った顔立ちで、王子というより王様といったほうが似合ってる。
日頃美形には見慣れているはずのかん子でさえ、見惚れてしまうほどその男にはオーラがあった。しかも隣である。掴まれている腕が熱く感じた。
周りを歩いている女性たちも、男の魅力に引き付けられるのか、うっとりとかん子の隣にいる男を見つめている者もいる。
かん子は、こんなに近くで腕を掴まれていることが急に恥ずかしくなっていった。
「ちょっと腕離してよ。痛いじゃないの!」
男ははっとしたかのように、かん子を掴んでいる自分の手を見て顔をゆがめた。
「ごめん」
急に掴んでいた手を放された腕が、寒くなったように感じて自分で掴まれていた腕をさすってしまった。男はそこまで痛かったのかと誤解したようで、もう一度あやまった。
かん子は男のその声に、本当に申し訳ないと思ってることを感じて思わず言ってしまった。
「そんなに痛くなかったから平気」
男ははじめて笑った。さわやかな笑みだった。そしてその顔をみたかん子は、その笑みに見覚えがあった。
(あれ、この人とどこかで会ってるよ。誰だっけ)
後ろから声がする。自分を呼んでるのだろうか。もしそうであっても聞き覚えのある声ではない。疲れているし後ろを振り向く気力もない。あとは帰って寝るだけだ。
かん子は後ろの声を無視して歩き続けた。
後ろからこちらに向かって駆けてくる音と同時に、腕を掴まれた・・・・・。
かん子は、びっくりして後ろを振り向いた。疲れているところに腕を強くつかまれて、思わず声を荒げた。
「なんなのよー!」
「呼んでるのに、なんで振り向かないんだよ!」
なぜか相手は、勝手に逆切れしている。
怒りたいのはこっちだよと思わず相手の顔を見れば・・・・・。そこには母親のお披露会のロビーで会った、あのつき刺さるような視線をむけてきた男が、これ以上ないようなほどの不機嫌さを身にまとい立っていた。
(え___!いなり寿司の事まだ疑ってる?)
かん子は、とっさに逃げようとくるりと向きをかえようとしたが、まだ男はかん子の腕をむんずとつかんで離そうとはしなかった。
「ちょっと待って!あれは誤解なのよ」
かん子がいなり寿司のことを説明しようとすると、男が口を開いた。
「俺のこと覚えてないの?」
「だからいなり寿司のことでしょ?だから...」
男はかん子の話を遮るように、腕を掴んで駅に向かった。
かん子はびっくりして、足をふんばってあがらおうとした。
「今から帰るんだろ?同じ電車だから駅に向かうぞ」
「駅って?」
「家に帰るのに電車乗るだろ?だから駅に向かってるんだよ」
お前そんなこともわからないのかとあたり前のようにいって、かん子の腕を掴んでひきずるように駅にどんどん歩いて行った。
駅で勝手にかん子の分まで切符を買い、かん子に渡す。しかもかん子の降りる駅までの切符である。
男は、切符を買う間だけかん子から腕を離し、切符を渡すとまたかん子のうでを掴んで歩いて行く。絶対にはなさないとでもいうように。
かん子はわけがわからなかった。この自分の目の前にいる変な男は、誰なんだ?かん子よりはるかに大きい。しかもかなりの美形だ。男性的な整った顔立ちで、王子というより王様といったほうが似合ってる。
日頃美形には見慣れているはずのかん子でさえ、見惚れてしまうほどその男にはオーラがあった。しかも隣である。掴まれている腕が熱く感じた。
周りを歩いている女性たちも、男の魅力に引き付けられるのか、うっとりとかん子の隣にいる男を見つめている者もいる。
かん子は、こんなに近くで腕を掴まれていることが急に恥ずかしくなっていった。
「ちょっと腕離してよ。痛いじゃないの!」
男ははっとしたかのように、かん子を掴んでいる自分の手を見て顔をゆがめた。
「ごめん」
急に掴んでいた手を放された腕が、寒くなったように感じて自分で掴まれていた腕をさすってしまった。男はそこまで痛かったのかと誤解したようで、もう一度あやまった。
かん子は男のその声に、本当に申し訳ないと思ってることを感じて思わず言ってしまった。
「そんなに痛くなかったから平気」
男ははじめて笑った。さわやかな笑みだった。そしてその顔をみたかん子は、その笑みに見覚えがあった。
(あれ、この人とどこかで会ってるよ。誰だっけ)
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