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87 なんだか周りが恋の予感でいっぱいです

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 清徳さんは、そのままうちの車で送っていきました。途中私の別荘の前で私だけ先におろしてもらいます。

「今日はありがとうございました」

「こちらこそ。じゃあまた」

 清徳さんは、シートにどっかりと座ったまま首だけ動かしています。お互いに早く筋肉痛よくなるといいですね。

 私は、皆さんが自転車で帰ってくるのを待つことにしました。赤池さんに玄関先に椅子を出してもらってそこで待ちます。
 
 飲み物まで用意してもらったので、飲みながらゆっくりと待っていました。時間がかかるかと思いきや想像よりもずいぶん早く皆さん帰ってきました。元気ですね。

「お帰りなさい」

「「「ただいま」」」

 まず女性陣が来ます。その後ろを男性陣がやってきました。

「どう? まだ痛むの?」

 青木さんが私のもとにやってきて、心配してくれます。

「いえ。ずいぶんよくなりました」

 そういいましたが、本当はまだ痛いです。明日起きれるか心配です。

「そういえば前に言った絵画見てないですよね?」

「いや。昨日皆で見せてもらったよ。お兄さんの解説付きでね!」

 まあ~! お兄様、変なこと言ってないといいんですけど。私の気がかりを察したのか、青木さんがくすりと笑いました。いやな予感です。私と清徳さんがボートに乗っている間に、お兄様が見せたのですね。

「実はね、千代子さんいわくつきの絵画も解説してくれたよ。みんなでじっくりと見たけれど、全く問題なかったよ。よかったね」

 あらっ、お兄様全部しゃべってしまったんですね。でもあの絵画、皆さんの目で確認してもなんともなかったんですね。一応別荘に着いてすぐに私も確認しましたがよかったです。

「昨日今日とありがとうございました。とても楽しく過ごせましたわ」

 久子さんが、女性陣を代表してお兄様にご挨拶しています。

「こちらこそ、楽しいひと時を皆さんと過ごせて何よりです」
 
 お兄様の言葉に久子さんの顔が少し赤くなっていませんか? 久子さん、お兄様どうですか? ただお兄様の笑顔にやられているのは久子さんだけではありませんでした。久子さんの後ろにいる花蓮さんもほんのり顔が赤いです。お兄様、ずいぶん人気ですね。

「楽しかったよ。ありがとう!」

「とても楽しかったわ。いろいろ手配してくださってありがとう」

 白井さんと京香さんが私に挨拶してくれました。いつの間に白井さんと仲良くなったのか、京香さんが隣に仲良く並んでいます。もうあのお守りのご利益が出たんでしょうか。いい雰囲気ですね。
 私がふたりのいい雰囲気にあてられていると、久子さんがこちらを見てにっこりしています。またいろいろ聞かないといけませんね。
 
「押村君、うちの車で送っていくよ」

 清徳さんが一足先に帰ってしまったので、お兄様が押村さんをうちの車で送るといっています。

「うちの車でお送りしますわ」

「ありがとう」

 そこに舞子さんが、飛んできました。先ほどまで久子さんの後ろにいたはずですが。舞子さんが押村さんをうるうるしたまなざしで見ています。押村さんもまんざらではないようで、送ってもらう事にしたようです。あらっ、皆さん昨日今日でずいぶん仲が良くなりましたね。押村さん、清徳さんには健康守りを買って自分は縁結びのお守りを買っていませんか?

 皆さん、私とお兄様に挨拶して帰っていきました。後にはなぜか青木さんが一人残っています。

「じゃあ」

「ありがとうございました」

 お兄様は、皆さんをお見送りした後、なぜか私の方を見てにやりとしてから青木さんに挨拶をしてひとり家の中に入って行ってしまいました。青木さんもお兄様に普通に挨拶しています。

「明日もまだいるんでしょう?」

「ええ」

「じゃあ明日ドライブにでも行かないかい? もちろん車で」

 青木さんが残ったのは、私にドライブのお誘いを言いたかったからなんですね。嬉しいです。でもとても残念です。

「すみません。筋肉痛がひどくて。明後日からは、家族でまた出かける予定があって」

「そうか。残念だけど、仕方ないね。痛そうだものね。じゃあ戻ったらまた食事にでも行こう!」

「はい!」

 せっかく青木さんが誘ってくださったのに残念です。でも両親とも約束していたので仕方ありませんね。両親とも、三日ほど近場ですが、旅行に行く予定なのです。だから明日はもう家に一度戻らなくてはいけないんです。
 私の残念そうな顔を見た青木さんは、明日一緒に行けないにもかかわらず少しうれしそうです。またの約束をして青木さんも帰っていきました。

 翌日はやはりというべきかあまりの筋肉痛に起きるのもやっとでした。体中湿布の匂いに包まれながら車に乗って帰りました。

「目が覚めそうな匂いだね」

 隣に座ったお兄様が、そう感想を漏らしました。確かにこれ以上張るところ、塗るところがないほど湿布の匂いを体にまとわりつかせていますからね。
 車のシートに筋肉痛の体をあずけて、車窓から見える景色を楽しみながら帰る途中、あの赤い鳥居が見えました。ふと清徳さんのことを思い浮かべました。きっと彼も今日は私と一緒で湿布とお友達でしょうね。
    

  



  
 
 
 

 
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