69 / 104
69 やっと終わりました
しおりを挟む
私たちは、社用車に乗り込んで会社に戻りました。青木さんは私たちを先に玄関先でおろそうと、玄関横に車を横づけしてくれました。
その時です。玄関から飛び出てくる人たちがいました。見ると、どうやら朝お見送りをしてくれた人たちが今まで清徳さんを待っていたようです。
「「「お帰りなさいませ」」」
清徳さんが降りてくるなり、待ち構えていた人たちが一斉に声を上げました。皆ぴったりと息があっていて、まるでつい先ほどまで練習をしていたんじゃないかと思うぐらいです。
さすが清徳さんは、慣れているのかそんな人たちの前にもかかわらず堂々と社用車から降りてきました。車さえ見なければ、颯爽と降りてくる姿はまさしく御曹司の風格を漂わせています。先ほどまでの検針の時とは大違いです。
「お疲れさまでした」
それに続いて私と杉さんも降ります。杉さんに気が付いた人たちは、杉さんにも皆ねぎらいの言葉をかけています。系列会社の社長さんが、何か清徳さんに声をかけていました。清徳さんは、やってきた押村さんに作業着を渡しています。
駐車場に社用車を置いてきた青木さんもやってきました。私の横に立って清徳さんを中心とした人だかりを見ています。
「今日はありがとう」
どこに目が付いているのか、先ほどまで清徳さんと一緒にいたはずの押村さんが、青木さんのもとにやってきました。
「お疲れさま。正樹、思ったより機嫌がいいな。一日終わってぐったりしているかと思ったが」
「そうだな」
押村さんは青木さんの方を見て笑いながら言ってきましたが、私と青木さんの顔を見てにやっと笑いました。
「拓弥たちの方がお疲れ気味だな」
私と青木さんの顔色を見て今日一日の様子を察したようです。私たちが押村さんと話していると、清徳さんがやってきました。
「今日はありがとう」
私と青木さんにあの清徳さんがお礼を言ってきました。私はびっくりして清徳さんをまじまじと見てしまいました。私の驚きようを間近で見た押村さんがぷっと吹き出し、清徳さんはばつの悪そうな顔をしました。
黒塗りのいつもの車が玄関先に滑らかに入ってきました。清徳さんは、後ろに控えていた人たちに片手を上げます。
「今日はありがとう。また来ます」
そういって車に乗り込みました。押村さんも後に続いて助手席に乗り込みました。
「じゃあ」
押村さんは私たちにそういって、黒塗りの車は私たちが見送る中去っていきました。ただ車が見えなくなった時です。
「今また来るって言わなかったか?」
「言いましたね」
「言いましたよ」
見送りをしていた社長さんが、横に控えていた人たちに確認しています。横にいた人たちも他の人たちに確認しています。周りで確認していた人たちを見ていた社長さんは、その言葉を聞いてなんだか体が揺れた気がしました。
「今日はごくろうさま」
社長さんの横にいたお偉いさんが、私と青木さんにねぎらいの言葉をかけてくれました。ただまだ体がおぼつかない社長さんが私たちを見て言いました。
「なんだかまた来るそうだから、その時にはよろしく頼むよ」
社長さんは先ほどの衝撃が収まらないのか、まだおぼつかない足取りでほかの人たちと帰っていきました。私と青木さんも会社に戻っていきます。杉さんはと見ればすでにもう会社に戻ったようで姿が見えませんでした。ずいぶんお疲れしていたようですしね。
「今日は大変だったね。ありがとう」
フロアーに入るなり、鈴木課長が私と青木さんにねぎらいの言葉をかけてきました。たぶんお見送りに出ていたであろう鈴木課長や小田係長そして近藤さんはすでにフロアーに戻っています。
「御曹司、ご機嫌だったわね」
「そうだね。いい対応だったようだとお偉いさんもほめていたよ」
近藤さんは先ほどの清徳さんの様子を見たようで私たちに言ってきました。鈴木課長もお偉いさんに言われたのかほめてくれました。終わりよければすべてよしですね。
私と青木さんはずいぶん振り回された気がしますが、まあ終わったので良しとしましょうか。ですが次回はないといいですね。
それから一週間私と青木さんは検針業務をしました。もちろん私たち二人だけです。仕事がサクサクと進みました。
「今週末のパーティー出席する?」
お昼の時です。公園のベンチでお昼を食べているときに青木さんに聞かれました。
「はい。出席しますよ。青木さんも?」
「ああ。親父に出るように言われているから」
「そうなんですね」
今週末の土曜日にはまたパーティーがあります。今度のパーティーはうちの系列会社が新しく事業を立ち上げたので、そのお披露目なんです。私はもちろん出る予定ですが、青木さんも出るんですね。その事業の立ち上げには、久美ちゃんも関わっているので私も気合を入れて出席させていただきますよ。
「そういえば夏休みには、あの別荘に行くの?」
「ええ。ちょうど花火大会があるそうなんです。今まで見たことがなかったので、今から楽しみです」
「そうか。実は母親の実家も近くに持ってるんだ」
「そうなんですか? 機会があればあの絵画見てください!」
「じゃあ、千代子さんが別荘に行くときに僕も行こうかな」
「まあ、その時にはぜひうちに来て見てください。そうそう、青木さんは花火大会見たことあります?」
「ああ。子どものころはよく行っていたから確か何度か見た気がする」
そうなんですね。あの辺りは、避暑地で有名ですからね。それから私は、青木さんから花火大会の様子を聞きました。おまけに子どものころの話も聞くことが出来ました。ずいぶんやんちゃだったんですね。
その時です。玄関から飛び出てくる人たちがいました。見ると、どうやら朝お見送りをしてくれた人たちが今まで清徳さんを待っていたようです。
「「「お帰りなさいませ」」」
清徳さんが降りてくるなり、待ち構えていた人たちが一斉に声を上げました。皆ぴったりと息があっていて、まるでつい先ほどまで練習をしていたんじゃないかと思うぐらいです。
さすが清徳さんは、慣れているのかそんな人たちの前にもかかわらず堂々と社用車から降りてきました。車さえ見なければ、颯爽と降りてくる姿はまさしく御曹司の風格を漂わせています。先ほどまでの検針の時とは大違いです。
「お疲れさまでした」
それに続いて私と杉さんも降ります。杉さんに気が付いた人たちは、杉さんにも皆ねぎらいの言葉をかけています。系列会社の社長さんが、何か清徳さんに声をかけていました。清徳さんは、やってきた押村さんに作業着を渡しています。
駐車場に社用車を置いてきた青木さんもやってきました。私の横に立って清徳さんを中心とした人だかりを見ています。
「今日はありがとう」
どこに目が付いているのか、先ほどまで清徳さんと一緒にいたはずの押村さんが、青木さんのもとにやってきました。
「お疲れさま。正樹、思ったより機嫌がいいな。一日終わってぐったりしているかと思ったが」
「そうだな」
押村さんは青木さんの方を見て笑いながら言ってきましたが、私と青木さんの顔を見てにやっと笑いました。
「拓弥たちの方がお疲れ気味だな」
私と青木さんの顔色を見て今日一日の様子を察したようです。私たちが押村さんと話していると、清徳さんがやってきました。
「今日はありがとう」
私と青木さんにあの清徳さんがお礼を言ってきました。私はびっくりして清徳さんをまじまじと見てしまいました。私の驚きようを間近で見た押村さんがぷっと吹き出し、清徳さんはばつの悪そうな顔をしました。
黒塗りのいつもの車が玄関先に滑らかに入ってきました。清徳さんは、後ろに控えていた人たちに片手を上げます。
「今日はありがとう。また来ます」
そういって車に乗り込みました。押村さんも後に続いて助手席に乗り込みました。
「じゃあ」
押村さんは私たちにそういって、黒塗りの車は私たちが見送る中去っていきました。ただ車が見えなくなった時です。
「今また来るって言わなかったか?」
「言いましたね」
「言いましたよ」
見送りをしていた社長さんが、横に控えていた人たちに確認しています。横にいた人たちも他の人たちに確認しています。周りで確認していた人たちを見ていた社長さんは、その言葉を聞いてなんだか体が揺れた気がしました。
「今日はごくろうさま」
社長さんの横にいたお偉いさんが、私と青木さんにねぎらいの言葉をかけてくれました。ただまだ体がおぼつかない社長さんが私たちを見て言いました。
「なんだかまた来るそうだから、その時にはよろしく頼むよ」
社長さんは先ほどの衝撃が収まらないのか、まだおぼつかない足取りでほかの人たちと帰っていきました。私と青木さんも会社に戻っていきます。杉さんはと見ればすでにもう会社に戻ったようで姿が見えませんでした。ずいぶんお疲れしていたようですしね。
「今日は大変だったね。ありがとう」
フロアーに入るなり、鈴木課長が私と青木さんにねぎらいの言葉をかけてきました。たぶんお見送りに出ていたであろう鈴木課長や小田係長そして近藤さんはすでにフロアーに戻っています。
「御曹司、ご機嫌だったわね」
「そうだね。いい対応だったようだとお偉いさんもほめていたよ」
近藤さんは先ほどの清徳さんの様子を見たようで私たちに言ってきました。鈴木課長もお偉いさんに言われたのかほめてくれました。終わりよければすべてよしですね。
私と青木さんはずいぶん振り回された気がしますが、まあ終わったので良しとしましょうか。ですが次回はないといいですね。
それから一週間私と青木さんは検針業務をしました。もちろん私たち二人だけです。仕事がサクサクと進みました。
「今週末のパーティー出席する?」
お昼の時です。公園のベンチでお昼を食べているときに青木さんに聞かれました。
「はい。出席しますよ。青木さんも?」
「ああ。親父に出るように言われているから」
「そうなんですね」
今週末の土曜日にはまたパーティーがあります。今度のパーティーはうちの系列会社が新しく事業を立ち上げたので、そのお披露目なんです。私はもちろん出る予定ですが、青木さんも出るんですね。その事業の立ち上げには、久美ちゃんも関わっているので私も気合を入れて出席させていただきますよ。
「そういえば夏休みには、あの別荘に行くの?」
「ええ。ちょうど花火大会があるそうなんです。今まで見たことがなかったので、今から楽しみです」
「そうか。実は母親の実家も近くに持ってるんだ」
「そうなんですか? 機会があればあの絵画見てください!」
「じゃあ、千代子さんが別荘に行くときに僕も行こうかな」
「まあ、その時にはぜひうちに来て見てください。そうそう、青木さんは花火大会見たことあります?」
「ああ。子どものころはよく行っていたから確か何度か見た気がする」
そうなんですね。あの辺りは、避暑地で有名ですからね。それから私は、青木さんから花火大会の様子を聞きました。おまけに子どものころの話も聞くことが出来ました。ずいぶんやんちゃだったんですね。
0
お気に入りに追加
634
あなたにおすすめの小説
今日も旦那は愛人に尽くしている~なら私もいいわよね?~
コトミ
恋愛
結婚した夫には愛人がいた。辺境伯の令嬢であったビオラには男兄弟がおらず、子爵家のカールを婿として屋敷に向かい入れた。半年の間は良かったが、それから事態は急速に悪化していく。伯爵であり、領地も統治している夫に平民の愛人がいて、屋敷の隣にその愛人のための別棟まで作って愛人に尽くす。こんなことを我慢できる夫人は私以外に何人いるのかしら。そんな考えを巡らせながら、ビオラは毎日夫の代わりに領地の仕事をこなしていた。毎晩夫のカールは愛人の元へ通っている。その間ビオラは休む暇なく仕事をこなした。ビオラがカールに反論してもカールは「君も愛人を作ればいいじゃないか」の一点張り。我慢の限界になったビオラはずっと大切にしてきた屋敷を飛び出した。
そしてその飛び出した先で出会った人とは?
(できる限り毎日投稿を頑張ります。誤字脱字、世界観、ストーリー構成、などなどはゆるゆるです)
hotランキング1位入りしました。ありがとうございます
【1/23取り下げ予定】愛されない妃ですので。
ごろごろみかん。
恋愛
王妃になんて、望んでなったわけではない。
国王夫妻のリュシアンとミレーゼの関係は冷えきっていた。
「僕はきみを愛していない」
はっきりそう告げた彼は、ミレーゼ以外の女性を抱き、愛を囁いた。
『お飾り王妃』の名を戴くミレーゼだが、ある日彼女は側妃たちの諍いに巻き込まれ、命を落としてしまう。
(ああ、私の人生ってなんだったんだろう──?)
そう思って人生に終止符を打ったミレーゼだったが、気がつくと結婚前に戻っていた。
しかも、別の人間になっている?
なぜか見知らぬ伯爵令嬢になってしまったミレーゼだが、彼女は決意する。新たな人生、今度はリュシアンに関わることなく、平凡で優しい幸せを掴もう、と。
*年齢制限を18→15に変更しました。
酒の席での戯言ですのよ。
ぽんぽこ狸
恋愛
成人前の令嬢であるリディアは、婚約者であるオーウェンの部屋から聞こえてくる自分の悪口にただ耳を澄ませていた。
何度もやめてほしいと言っていて、両親にも訴えているのに彼らは総じて酒の席での戯言だから流せばいいと口にする。
そんな彼らに、リディアは成人を迎えた日の晩餐会で、仕返しをするのだった。
【完結】皇太子の愛人が懐妊した事を、お妃様は結婚式の一週間後に知りました。皇太子様はお妃様を愛するつもりは無いようです。
五月ふう
恋愛
リックストン国皇太子ポール・リックストンの部屋。
「マティア。僕は一生、君を愛するつもりはない。」
今日は結婚式前夜。婚約者のポールの声が部屋に響き渡る。
「そう……。」
マティアは小さく笑みを浮かべ、ゆっくりとソファーに身を預けた。
明日、ポールの花嫁になるはずの彼女の名前はマティア・ドントール。ドントール国第一王女。21歳。
リッカルド国とドントール国の和平のために、マティアはこの国に嫁いできた。ポールとの結婚は政略的なもの。彼らの意志は一切介入していない。
「どんなことがあっても、僕は君を王妃とは認めない。」
ポールはマティアを憎しみを込めた目でマティアを見つめる。美しい黒髪に青い瞳。ドントール国の宝石と評されるマティア。
「私が……ずっと貴方を好きだったと知っても、妻として認めてくれないの……?」
「ちっ……」
ポールは顔をしかめて舌打ちをした。
「……だからどうした。幼いころのくだらない感情に……今更意味はない。」
ポールは険しい顔でマティアを睨みつける。銀色の髪に赤い瞳のポール。マティアにとってポールは大切な初恋の相手。
だが、ポールにはマティアを愛することはできない理由があった。
二人の結婚式が行われた一週間後、マティアは衝撃の事実を知ることになる。
「サラが懐妊したですって‥‥‥!?」
わたくし、残念ながらその書類にはサインしておりませんの。
朝霧心惺
恋愛
「リリーシア・ソフィア・リーラー。冷酷卑劣な守銭奴女め、今この瞬間を持って俺は、貴様との婚約を破棄する!!」
テオドール・ライリッヒ・クロイツ侯爵令息に高らかと告げられた言葉に、リリーシアは純白の髪を靡かせ高圧的に微笑みながら首を傾げる。
「誰と誰の婚約ですって?」
「俺と!お前のだよ!!」
怒り心頭のテオドールに向け、リリーシアは真実を告げる。
「わたくし、残念ながらその書類にはサインしておりませんの」
婚約破棄ですか???実家からちょうど帰ってこいと言われたので好都合です!!!これからは復讐をします!!!~どこにでもある普通の令嬢物語~
tartan321
恋愛
婚約破棄とはなかなか考えたものでございますね。しかしながら、私はもう帰って来いと言われてしまいました。ですから、帰ることにします。これで、あなた様の口うるさい両親や、その他の家族の皆様とも顔を合わせることがないのですね。ラッキーです!!!
壮大なストーリーで奏でる、感動的なファンタジーアドベンチャーです!!!!!最後の涙の理由とは???
一度完結といたしました。続編は引き続き書きたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
忘れられた薔薇が咲くとき
ゆる
恋愛
貴族として華やかな未来を約束されていた伯爵令嬢アルタリア。しかし、突然の婚約破棄と追放により、その人生は一変する。全てを失い、辺境の町で庶民として生きることを余儀なくされた彼女は、過去の屈辱と向き合いながらも、懸命に新たな生活を築いていく。
だが、平穏は長く続かない。かつて彼女を追放した第二王子や聖女が町を訪れ、過去の因縁が再び彼女を取り巻く。利用されるだけの存在から、自らの意志で運命を切り開こうとするアルタリア。彼女が選ぶ未来とは――。
これは、追放された元伯爵令嬢が自由と幸せを掴むまでの物語。ざまあ要素たっぷりの胸がすくような展開と、新たな一歩を踏み出す彼女の成長を描きます!
「お前を妻だと思ったことはない」と言ってくる旦那様と離婚した私は、幼馴染の侯爵から溺愛されています。
木山楽斗
恋愛
第二王女のエリームは、かつて王家と敵対していたオルバディオン公爵家に嫁がされた。
因縁を解消するための結婚であったが、現当主であるジグールは彼女のことを冷遇した。長きに渡る因縁は、簡単に解消できるものではなかったのである。
そんな暮らしは、エリームにとって息苦しいものだった。それを重く見た彼女の兄アルベルドと幼馴染カルディアスは、二人の結婚を解消させることを決意する。
彼らの働きかけによって、エリームは苦しい生活から解放されるのだった。
晴れて自由の身になったエリームに、一人の男性が婚約を申し込んできた。
それは、彼女の幼馴染であるカルディアスである。彼は以前からエリームに好意を寄せていたようなのだ。
幼い頃から彼の人となりを知っているエリームは、喜んでその婚約を受け入れた。二人は、晴れて夫婦となったのである。
二度目の結婚を果たしたエリームは、以前とは異なる生活を送っていた。
カルディアスは以前の夫とは違い、彼女のことを愛して尊重してくれたのである。
こうして、エリームは幸せな生活を送るのだった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる