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35 お昼です
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「お昼どこで食べようか」
「そうですね。お弁当持ってきましたしね」
「ここの近くにある商業施設の屋上の駐車場に行こうか」
「いいですね。ここから近かったですよね」
「じゃあ行くか」
青木さんは、近くの商業施設に車を走らせました。やはり平日で雨なのもあって、屋上の駐車場は空いていました。二人、一度車から降りました。そして手を洗ったりしてから車に戻りました。今日は雨なので、車の中で食べることにしたのです。
近藤さんから渡された紙袋を見ると、お弁当の上にきちんと保冷剤が置かれていました。まだ冷えているお茶も入っています。
「どうぞ」
「ありがとう」
青木さんにお弁当とお茶を渡します。
すると空になったはずの紙袋の底に小さな箱が見えました。手に取ると、近藤さんがいつもお昼休みに配るお菓子が入っていました。いえ、いつもではありません。仕事が忙しい時に配る特別なお菓子です。ちょっとお高いスーパーに売っている高級チョコです。いつも近藤さんの机の引き出しにいくつか入っています。ストックしているんです。
近藤さんは配るときに、「おいしいお菓子で午後を乗り切ろう!」といって皆さんに配ってくれるんです。
疲れているせいか、その高級チョコがいつものチョコより何倍もおいしく感じたものです。その高級チョコをそっと忍ばせてくれていたんですね。
「これ近藤さんからの差し入れです。高級チョコなんですよ。後でいただきましょうね」
私は、その高級チョコにまつわる話も青木さんに伝えました。
「へえ~。後でお礼言わないといけないな」
「そうですね。お弁当の上にもちゃんと保冷剤が置かれてましたよ。さすがですね~」
「そうだな」
私と青木さんは、フロントガラスに落ちてくる雨粒を見ながらお弁当を食べました。
「俺、このおかず結構好きなんだよね」
「私は、今日のには入っていないんですけど、たまに出る卵料理が好きです」
2人でおかずを品評したりつっこみをしたりして食べました。お弁当を食べ終わり、お茶を飲みながら近藤さんからの差し入れのチョコをいただきました。青木さんも先ほどのコンビニでクッキーを買っていて、それもいただきました。それだけでずいぶん疲れが取れた気がしました。
お菓子をいただきながら、きょう午前中回った検針の話になりました。
「今まで回ったところより今回は大変だったよ。植木鉢があったりさ。犬がボックスのそばにつながれていたり、ひやひやしたことろもあった。そっちはどうだった?」
「こっちもそうです。車がボックスの上に止まっていて、動かしてもらう様にお願いしたんですけど、数センチ単位の移動だったんですよね。おかげで地面に這いつくばるようにして検針しました」
私はつい興奮して、体で再現してしまいました。
「あっはっはっ! すごいな、数センチ単位ってさ」
青木さんが私の動きを見て笑っています。その笑顔に少しだけきゅんとしてしまいました。
「でも今日の検針が、和久田さんじゃないと知って残念がる人もいましたよ。和久田さんきちんと仕事されているんですね。その方々のお話を聞いて思いました」
「見てる人は見てるってことなんだな」
私と青木さんは、ここにはいない和久田さんに思いをはせました。
私たちは、手を洗ったり身支度してから出発しました。青木さんが車を運転している時です。
「ここの商業施設おしゃれだよな。ここ、あの大企業上柳グループの傘下企業なんだってさ」
げっほっ、げっほっ、げっほっ。
私は、ちょうどお茶を飲んでいた最中だったので、危うく吹き出すことろでした。
「大丈夫か?」
ちょうど信号が赤になったので、私の方を心配そうに見ています。
「すっ、すみません。急にお茶を飲みすぎちゃったようです」
いきなり名前が出たので、びっくりしてしまいました。そういえば、前にこの企業が手掛けている商業施設の内装とかコンセプトの話を兄や久美ちゃん、航さんがしていましたね。この施設もその中の一つだったんですね。
「おしゃれですか? 男性から見ても」
「ああ。店内がおしゃれだと思う。ほかの商業施設とは一線を画しているかな」
嬉しいお言葉ですね。さっそく久美ちゃんに言ってあげなくては。久美ちゃんは、私のマネージャーでもありますが、あまりに優秀なので、グループ本部の企画課にも属しているんです。さすがですね~。
私はにまにましてしまいました。まさかそれを青木さんに見られていたとは思いもしませんでした。
午後からの検針も、午前と同じでハードモードでした。先ほどの商業施設で青木さんが買ってくれていた飲み物がなかったら、へたばっていたかもしれません。二人で今日の分をやり終えた時には、疲れで口から魂が出そうでした。前回までが、いかに楽だったのかわかりますね。
一日中降り続いた雨のせいもあります。検針票が濡れないようにするのも大変でしたし、打ち込むときにも注意が必要でしたからね。おまけにカッパを着ているせいで、汗だくになりましたからね。
会社に戻って車を降りるとき青木さんがぽつんと言いました。
「明日は晴れになるといいな」
「そうですね。晴れなくても曇りでいいので、雨が降らないといいですね」
私は、今日家に帰ったらてるてる坊主を作ろうかと本気で思いました。
「そうですね。お弁当持ってきましたしね」
「ここの近くにある商業施設の屋上の駐車場に行こうか」
「いいですね。ここから近かったですよね」
「じゃあ行くか」
青木さんは、近くの商業施設に車を走らせました。やはり平日で雨なのもあって、屋上の駐車場は空いていました。二人、一度車から降りました。そして手を洗ったりしてから車に戻りました。今日は雨なので、車の中で食べることにしたのです。
近藤さんから渡された紙袋を見ると、お弁当の上にきちんと保冷剤が置かれていました。まだ冷えているお茶も入っています。
「どうぞ」
「ありがとう」
青木さんにお弁当とお茶を渡します。
すると空になったはずの紙袋の底に小さな箱が見えました。手に取ると、近藤さんがいつもお昼休みに配るお菓子が入っていました。いえ、いつもではありません。仕事が忙しい時に配る特別なお菓子です。ちょっとお高いスーパーに売っている高級チョコです。いつも近藤さんの机の引き出しにいくつか入っています。ストックしているんです。
近藤さんは配るときに、「おいしいお菓子で午後を乗り切ろう!」といって皆さんに配ってくれるんです。
疲れているせいか、その高級チョコがいつものチョコより何倍もおいしく感じたものです。その高級チョコをそっと忍ばせてくれていたんですね。
「これ近藤さんからの差し入れです。高級チョコなんですよ。後でいただきましょうね」
私は、その高級チョコにまつわる話も青木さんに伝えました。
「へえ~。後でお礼言わないといけないな」
「そうですね。お弁当の上にもちゃんと保冷剤が置かれてましたよ。さすがですね~」
「そうだな」
私と青木さんは、フロントガラスに落ちてくる雨粒を見ながらお弁当を食べました。
「俺、このおかず結構好きなんだよね」
「私は、今日のには入っていないんですけど、たまに出る卵料理が好きです」
2人でおかずを品評したりつっこみをしたりして食べました。お弁当を食べ終わり、お茶を飲みながら近藤さんからの差し入れのチョコをいただきました。青木さんも先ほどのコンビニでクッキーを買っていて、それもいただきました。それだけでずいぶん疲れが取れた気がしました。
お菓子をいただきながら、きょう午前中回った検針の話になりました。
「今まで回ったところより今回は大変だったよ。植木鉢があったりさ。犬がボックスのそばにつながれていたり、ひやひやしたことろもあった。そっちはどうだった?」
「こっちもそうです。車がボックスの上に止まっていて、動かしてもらう様にお願いしたんですけど、数センチ単位の移動だったんですよね。おかげで地面に這いつくばるようにして検針しました」
私はつい興奮して、体で再現してしまいました。
「あっはっはっ! すごいな、数センチ単位ってさ」
青木さんが私の動きを見て笑っています。その笑顔に少しだけきゅんとしてしまいました。
「でも今日の検針が、和久田さんじゃないと知って残念がる人もいましたよ。和久田さんきちんと仕事されているんですね。その方々のお話を聞いて思いました」
「見てる人は見てるってことなんだな」
私と青木さんは、ここにはいない和久田さんに思いをはせました。
私たちは、手を洗ったり身支度してから出発しました。青木さんが車を運転している時です。
「ここの商業施設おしゃれだよな。ここ、あの大企業上柳グループの傘下企業なんだってさ」
げっほっ、げっほっ、げっほっ。
私は、ちょうどお茶を飲んでいた最中だったので、危うく吹き出すことろでした。
「大丈夫か?」
ちょうど信号が赤になったので、私の方を心配そうに見ています。
「すっ、すみません。急にお茶を飲みすぎちゃったようです」
いきなり名前が出たので、びっくりしてしまいました。そういえば、前にこの企業が手掛けている商業施設の内装とかコンセプトの話を兄や久美ちゃん、航さんがしていましたね。この施設もその中の一つだったんですね。
「おしゃれですか? 男性から見ても」
「ああ。店内がおしゃれだと思う。ほかの商業施設とは一線を画しているかな」
嬉しいお言葉ですね。さっそく久美ちゃんに言ってあげなくては。久美ちゃんは、私のマネージャーでもありますが、あまりに優秀なので、グループ本部の企画課にも属しているんです。さすがですね~。
私はにまにましてしまいました。まさかそれを青木さんに見られていたとは思いもしませんでした。
午後からの検針も、午前と同じでハードモードでした。先ほどの商業施設で青木さんが買ってくれていた飲み物がなかったら、へたばっていたかもしれません。二人で今日の分をやり終えた時には、疲れで口から魂が出そうでした。前回までが、いかに楽だったのかわかりますね。
一日中降り続いた雨のせいもあります。検針票が濡れないようにするのも大変でしたし、打ち込むときにも注意が必要でしたからね。おまけにカッパを着ているせいで、汗だくになりましたからね。
会社に戻って車を降りるとき青木さんがぽつんと言いました。
「明日は晴れになるといいな」
「そうですね。晴れなくても曇りでいいので、雨が降らないといいですね」
私は、今日家に帰ったらてるてる坊主を作ろうかと本気で思いました。
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