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33 代わりにやらせていただきます
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会社で仕事をしていた時です。仕事が始まってすぐ、水道検針のリーダーである吉田さんが会社にやって来ました。何やら深刻そうな顔をして鈴木課長と話しています。
「すみません。一応みんなに連絡してみたんですけど、雨が続いているせいで、みんなも仕事がはかどっていなくて。私もまだ終わっていないんです」
「そうですよね。今月雨多いですからね」
「本当にすみません」
「いえっ。忙しいのにすみませんでした」
吉田さんは、鈴木課長にもう一度頭を下げると部屋を出ていきました。残された鈴木課長は、手元にある地図とにらめっこしています。
「どうしたんですか?」
私は、すでに席についている近藤さんに聞いてみました。
「検針をしてくれている和久田さんがね、今月の検針がまだ終わっていないらしいの。お子さんが熱出しちゃったみたいで。お子さん二人だから大変よね。ご主人は単身赴任しているみたいだし、ご実家は遠方らしいのよね」
「そうなんですか。それは大変ですね」
私は、前世での姉弟たちのことを思い出しました。子どもって一人がひくと、みんな次々にうつってしまうんですよね。私は、近藤さんから頂いたメモを見ました。検針メンバー表です。和久田さんのお子さんは、まだ幼稚園と小学校低学年なんですね。自己紹介の時にメモしておいてよかったです。
「鈴木課長! 検針業務、私代わりにやらせていただいてもよろしいでしょうか」
「えっ?」
机の上に広げていた地図を見ていた鈴木課長が顔を上げました。
「いいのかい? でも仕事に支障は? 近藤さんどう?」
鈴木課長は、近藤さんに私の仕事の状況を聞いています。
「大丈夫ですよ。急ぎの仕事はないので」
「そうか。それならお願いしようかな。でも今雨が多いけど大丈夫?」
「はい。大丈夫です」
私が鈴木課長に返事をした時です。
「私も検針の手伝いをしてもいいですか?」
声を上げたのは、青木さんでした。鈴木課長もさすがにびっくりしています。
「いいのか? 小田君どう? 青木君の仕事なんだけど」
「あ~あ。こっちも大丈夫ですよ。ありがたいことに急ぎの仕事はないので」
小田係長は、満面の笑みで鈴木課長に伝えています。それから小田係長が近藤さんを見ました。近藤さんはよくやったとばかりに小田係長に大きくうなづいているのが見えました。
私は、だまって成り行きを見守っていましたが、ふと気が付きました。青木さんが手を上げたのは、もしかして今まで『にこいち』で、検針作業をしていたせいでしょうか。今回もしなくてはと思わせてしまったのでしょうか。
私が一人で出来ると青木さんに言おうとした時です。
「じゃあ青木君、今回も柳さんと一緒にまわってくれるかい? 2人ならその分早く終わるし。今回は、あと二日で回らないといけないんだよ。厳しいと思うけどいいかな」
鈴木課長は、私と青木さんの方を見て言いました。
「はい。頑張ります。柳さんよろしく」
青木さんは、元気よく返事しています。私もつられて言ってしまいました。
「こちらこそよろしくお願いします」
「じゃあさっそくで悪いんだけど、ちょっといいかな」
鈴木課長は私と青木さんを呼びました。テーブルの上の地図についての説明です。私は、真剣に説明を聞いている青木さんをちらりと見ました。すごいやる気がみなぎっているようです。どうやら青木さんは、検針業務の楽しさに目覚めてしまったみたいですね。
私の視線に気が付いたのか青木さんが私を見ました。はじめのころと違い、私にさわやかすぎる笑顔を見せてくれました。私は、あまりのまぶしさに一瞬くらっとなってしまいました。いけません。いけません。足を踏ん張って耐えました。
鈴木課長がそんな私たちを見て、ふっと笑いました。
「まあ、頑張ってやってくれる?」
そうして私と青木さんは、さっそく検針業務に出かけることになりました。
「悪いけど、連絡しておくから和久田さんの家によって検針に使う機械を持ってエリアに行ってくれる?」
「「はい」」
私は、急いで席に戻って机を片づけます。
「今雨だけど、頑張ってね」
「すみません。お仕事お願いしてしまう形になってしまって」
「いいの。いいの。それより...」
近藤さんが話している途中に小田係長が間に入ってきました。
「近藤さんの仕事は私が手伝うよ。検針、二人なら何とかなるよね。大変だけど頑張って」
「そうそう。気にしないで。それより柳さん、今日お弁当注文してるわよね。たぶん青木君も注文してるわねきっと。もうお弁当届いてるから、お昼食べるように持っていったら。準備しておいてあげるわよ」
小田係長にさえぎられた話は、このことだったんですね。近藤さんが親切に言ってくれました。そうでした。お弁当の事は、すっかり忘れていました。
「ありがとうございます」
「じゃあ先に着替えて来たら。一階に持っていくから」
「はい。ありがとうございます」
近藤さんの好意に甘えて、先に着替えに行かせていただくことにしました。青木さんも着替えに行くようです。
久美ちゃんからのつなぎはロッカーに置いてあったので、急いで着替えました。あとこの前使った便利グッズもロッカーに置いてあったので、それも持って玄関に急ぎました。
「お待たせしました」
私が玄関に行くと、すでに青木さんと近藤さんが待っていてくれました。さすが近藤さんです。仕事が早いです。
「はい。これお弁当ね。あとね鈴木課長からの差入れのお茶」
「ありがとうございます」
私がお弁当が二つとお茶のペットボトルがきちんと入っている紙袋を受け取りました。
「柳さんをよろしく!」
近藤さんは、そういいながら青木さんの肩を軽くたたきました。
「はい! 行ってきます」
「行ってきます」
「行ってらっしゃい。気を付けて」
近藤さんは、玄関で手を振りながら私たちを見送ってくれました。優しい笑顔に見送られて、検針がはかどりそうですね。青木さん!
「すみません。一応みんなに連絡してみたんですけど、雨が続いているせいで、みんなも仕事がはかどっていなくて。私もまだ終わっていないんです」
「そうですよね。今月雨多いですからね」
「本当にすみません」
「いえっ。忙しいのにすみませんでした」
吉田さんは、鈴木課長にもう一度頭を下げると部屋を出ていきました。残された鈴木課長は、手元にある地図とにらめっこしています。
「どうしたんですか?」
私は、すでに席についている近藤さんに聞いてみました。
「検針をしてくれている和久田さんがね、今月の検針がまだ終わっていないらしいの。お子さんが熱出しちゃったみたいで。お子さん二人だから大変よね。ご主人は単身赴任しているみたいだし、ご実家は遠方らしいのよね」
「そうなんですか。それは大変ですね」
私は、前世での姉弟たちのことを思い出しました。子どもって一人がひくと、みんな次々にうつってしまうんですよね。私は、近藤さんから頂いたメモを見ました。検針メンバー表です。和久田さんのお子さんは、まだ幼稚園と小学校低学年なんですね。自己紹介の時にメモしておいてよかったです。
「鈴木課長! 検針業務、私代わりにやらせていただいてもよろしいでしょうか」
「えっ?」
机の上に広げていた地図を見ていた鈴木課長が顔を上げました。
「いいのかい? でも仕事に支障は? 近藤さんどう?」
鈴木課長は、近藤さんに私の仕事の状況を聞いています。
「大丈夫ですよ。急ぎの仕事はないので」
「そうか。それならお願いしようかな。でも今雨が多いけど大丈夫?」
「はい。大丈夫です」
私が鈴木課長に返事をした時です。
「私も検針の手伝いをしてもいいですか?」
声を上げたのは、青木さんでした。鈴木課長もさすがにびっくりしています。
「いいのか? 小田君どう? 青木君の仕事なんだけど」
「あ~あ。こっちも大丈夫ですよ。ありがたいことに急ぎの仕事はないので」
小田係長は、満面の笑みで鈴木課長に伝えています。それから小田係長が近藤さんを見ました。近藤さんはよくやったとばかりに小田係長に大きくうなづいているのが見えました。
私は、だまって成り行きを見守っていましたが、ふと気が付きました。青木さんが手を上げたのは、もしかして今まで『にこいち』で、検針作業をしていたせいでしょうか。今回もしなくてはと思わせてしまったのでしょうか。
私が一人で出来ると青木さんに言おうとした時です。
「じゃあ青木君、今回も柳さんと一緒にまわってくれるかい? 2人ならその分早く終わるし。今回は、あと二日で回らないといけないんだよ。厳しいと思うけどいいかな」
鈴木課長は、私と青木さんの方を見て言いました。
「はい。頑張ります。柳さんよろしく」
青木さんは、元気よく返事しています。私もつられて言ってしまいました。
「こちらこそよろしくお願いします」
「じゃあさっそくで悪いんだけど、ちょっといいかな」
鈴木課長は私と青木さんを呼びました。テーブルの上の地図についての説明です。私は、真剣に説明を聞いている青木さんをちらりと見ました。すごいやる気がみなぎっているようです。どうやら青木さんは、検針業務の楽しさに目覚めてしまったみたいですね。
私の視線に気が付いたのか青木さんが私を見ました。はじめのころと違い、私にさわやかすぎる笑顔を見せてくれました。私は、あまりのまぶしさに一瞬くらっとなってしまいました。いけません。いけません。足を踏ん張って耐えました。
鈴木課長がそんな私たちを見て、ふっと笑いました。
「まあ、頑張ってやってくれる?」
そうして私と青木さんは、さっそく検針業務に出かけることになりました。
「悪いけど、連絡しておくから和久田さんの家によって検針に使う機械を持ってエリアに行ってくれる?」
「「はい」」
私は、急いで席に戻って机を片づけます。
「今雨だけど、頑張ってね」
「すみません。お仕事お願いしてしまう形になってしまって」
「いいの。いいの。それより...」
近藤さんが話している途中に小田係長が間に入ってきました。
「近藤さんの仕事は私が手伝うよ。検針、二人なら何とかなるよね。大変だけど頑張って」
「そうそう。気にしないで。それより柳さん、今日お弁当注文してるわよね。たぶん青木君も注文してるわねきっと。もうお弁当届いてるから、お昼食べるように持っていったら。準備しておいてあげるわよ」
小田係長にさえぎられた話は、このことだったんですね。近藤さんが親切に言ってくれました。そうでした。お弁当の事は、すっかり忘れていました。
「ありがとうございます」
「じゃあ先に着替えて来たら。一階に持っていくから」
「はい。ありがとうございます」
近藤さんの好意に甘えて、先に着替えに行かせていただくことにしました。青木さんも着替えに行くようです。
久美ちゃんからのつなぎはロッカーに置いてあったので、急いで着替えました。あとこの前使った便利グッズもロッカーに置いてあったので、それも持って玄関に急ぎました。
「お待たせしました」
私が玄関に行くと、すでに青木さんと近藤さんが待っていてくれました。さすが近藤さんです。仕事が早いです。
「はい。これお弁当ね。あとね鈴木課長からの差入れのお茶」
「ありがとうございます」
私がお弁当が二つとお茶のペットボトルがきちんと入っている紙袋を受け取りました。
「柳さんをよろしく!」
近藤さんは、そういいながら青木さんの肩を軽くたたきました。
「はい! 行ってきます」
「行ってきます」
「行ってらっしゃい。気を付けて」
近藤さんは、玄関で手を振りながら私たちを見送ってくれました。優しい笑顔に見送られて、検針がはかどりそうですね。青木さん!
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