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12 いざ検針です
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渋る青木さんに久美ちゃんから渡された作業服を押し付けました。青木さんはいやいやながらも更衣室に向かいます。その上に会社から支給された検針の時に着るジャンバーを羽織りました。
私も更衣室でさっそく着替えます。軽くて通気性もよさそうです。ただ少し大きめですね。だぶだぶっとしています。更衣室を出て会社の玄関に向かうと、すでに着替え終わった青木さんが玄関の横に立っていました。
あれっ!青木さんの作業服は、体にぴったりフィットしています。同じ作業服にジャンバーなのにまるで別のものみたいです。青木さんは、こうやって見るとずいぶん足が長いんですね。こちらを向いた顔もイケメンです。近藤さんたちがかっこいいといってた訳がわかりました。
「すみません。遅くなりました」
「いや。行こうか」
青木さんは、私の作業服姿をチラっと見ただけで、すたすたと社用車のほうに向かいました。白い軽自動車で行くようです。
青木さんが車に乗ったので、私も助手席に乗り込みました。
「助手席に乗るのか...」
「えっ?」
「いやっ、何でもない」
青木さんがつぶやいた言葉に、私が聞き返すと青木さんは一言いって黙って車を発進させました。なんだか車内が息苦しいです。
「あのう、どうですか? その作業服?」
「ああ。いいなこれ。軽いし動きやすい」
「そうですよね」
青木さんの感想も聞けましたし、後で久美ちゃんに報告しておきましょう。ただ目的地までずいぶんと長く感じました。途中あまりの静かさに耐えきれずに、ついラジオをつけてしまいました。ただ青木さんも心なしかほっとしているよう見えますが、気のせいでしょうか。
「まず団地から始めよう」
目的地の団地に到着しました。水道メーターは、玄関の横のボックスの中にあるようです。まず青木さんがやってみます。私は、横で見ていることにしました。
「これだよな」
青木さんは、メーターの針を見て機械に恐る恐る数字を打ち込みました。
ジジジィ___。
機械から検針票が出てきました。
「やりましたね」
「やったなあ」
青木さんも嬉しかったのでしょう。お互いに顔を見合わせました。青木さんの笑顔を初めて見ます。イケメンの笑顔は破壊力があります。私がじーっと青木さんの顔を見ていたからでしょう。青木さんはついっと顔をそらせました。
青木さんは、機械から出た検針票をポストに入れました。
「次やろうか」
今度は、お隣の家のメーターを検針します。次もうまく出来ました。その階をすべて終えたので、今度は別々にやることにしました。
「じゃあ、終わったら自動車の前で」
この団地は、何棟も立っています。一棟ずつ分担してやることにしました。最初こそこわごわやっていましたが、少しずつ慣れてきました。ただ階段を登ったりメーターの検針でしゃがんだりと結構疲れました。あと久美ちゃんが持たせてくれた伸び縮みする棒が役立ちました。ボックスの中に蜘蛛の巣などがあるからです。後メーターのふたを開けるのにも役立ちました。久美ちゃんありがとう!でもさすが久美ちゃんです。メーターの検針に必要なものがよくわかりましたね。
あと、私が前日に買っておいた虫よけや手袋も役立ちました。これは前世の母のおかげですね。お母さんありがとう!
そうしてやっとのことで、すべて終えて自動車のところに行くと青木さんはまだいませんでした。青木さんのほうが一棟分多いせいです。私は青木さんを探そうと団地をぐるりと見渡しました。
いました!どうやら今最上階にいます。廊下に背の高い頭が見え隠れしています。
もうすぐ終わりそうなので、私は冷たい飲み物を買ってくることにしました。先ほど団地のわきに自販機を見つけたのです。走って買いに行き戻ってくると青木さんが自動車のわきに立っていました。
「お疲れさまでした。これどうぞ」
私は走っていき、青木さんに買ってきた一本を渡しました。
「ありがとう」
青木さんは、受け取ってすぐに飲み始めました。やはりよほどのどが渇いていたんですね。普通に飲んでいるのですが、イケメンは飲むさまも絵になっています。のどぼとけが上下に動くさまにちょっとだけぐっときてしまいました。
やばいです。ずっと見ていてはいけません。まだ仕事も残っているのですから。私も慌ててのどを潤します。一仕事終えた後に冷たい飲み物は、体に沁みます。
飲み終えると、青木さんと目が合いました。青木さんが私を見ていたようです。私がじっと見ると、青木さんは目をそらしました。なんでしょうか?
「もうお昼だな。どうする?」
「そうですね。じゃあここのそばにあるコンビニに行きますか?」
「えっ?」
青木さんは、なぜか驚いています。会社に戻った方がよかったのでしょうか?
「会社にいったん戻りますか?」
「いや、いいのかコンビニで」
「ええ。午後もありますし」
「そうだな」
青木さんは、ちょっと変な顔をしてから車を発進させました。コンビニに着いた私たちは、食べ物を買い近くの公園に向かいました。コンビニに行く途中に大きな公園の前を通ったのです。あそこなら木陰もありますし手も洗えますしね。
ふたりで、木陰のベンチに向かいました。私が先に手を洗いに行きました。ちょうど木の陰になったベンチは風が通って気持ちよさそうです。空は青空で白い雲がほんの少しだけ浮かんでいます。
私はサンドイッチとデザートを買いました。青木さんはがっつりとお弁当を買っていました。
「結構疲れますね」
「そうだな」
ご飯を食べながら私は、青木さんに話しかけました。青木さんも最初より私に対して少し慣れてくれたようです。サンドイッチを食べ終わった私は、デザートとして買ったチョコを食べることにしました。青木さんも食べ終わっています。
「よかったらどうぞ」
個包装のチョコを買ったので、一つ青木さんにおすそ分けします。
「ありがとう」
青木さんは受け取ってくれました。甘いもので疲れも取れた気がします。さあ午後も頑張りましょうね。
私も更衣室でさっそく着替えます。軽くて通気性もよさそうです。ただ少し大きめですね。だぶだぶっとしています。更衣室を出て会社の玄関に向かうと、すでに着替え終わった青木さんが玄関の横に立っていました。
あれっ!青木さんの作業服は、体にぴったりフィットしています。同じ作業服にジャンバーなのにまるで別のものみたいです。青木さんは、こうやって見るとずいぶん足が長いんですね。こちらを向いた顔もイケメンです。近藤さんたちがかっこいいといってた訳がわかりました。
「すみません。遅くなりました」
「いや。行こうか」
青木さんは、私の作業服姿をチラっと見ただけで、すたすたと社用車のほうに向かいました。白い軽自動車で行くようです。
青木さんが車に乗ったので、私も助手席に乗り込みました。
「助手席に乗るのか...」
「えっ?」
「いやっ、何でもない」
青木さんがつぶやいた言葉に、私が聞き返すと青木さんは一言いって黙って車を発進させました。なんだか車内が息苦しいです。
「あのう、どうですか? その作業服?」
「ああ。いいなこれ。軽いし動きやすい」
「そうですよね」
青木さんの感想も聞けましたし、後で久美ちゃんに報告しておきましょう。ただ目的地までずいぶんと長く感じました。途中あまりの静かさに耐えきれずに、ついラジオをつけてしまいました。ただ青木さんも心なしかほっとしているよう見えますが、気のせいでしょうか。
「まず団地から始めよう」
目的地の団地に到着しました。水道メーターは、玄関の横のボックスの中にあるようです。まず青木さんがやってみます。私は、横で見ていることにしました。
「これだよな」
青木さんは、メーターの針を見て機械に恐る恐る数字を打ち込みました。
ジジジィ___。
機械から検針票が出てきました。
「やりましたね」
「やったなあ」
青木さんも嬉しかったのでしょう。お互いに顔を見合わせました。青木さんの笑顔を初めて見ます。イケメンの笑顔は破壊力があります。私がじーっと青木さんの顔を見ていたからでしょう。青木さんはついっと顔をそらせました。
青木さんは、機械から出た検針票をポストに入れました。
「次やろうか」
今度は、お隣の家のメーターを検針します。次もうまく出来ました。その階をすべて終えたので、今度は別々にやることにしました。
「じゃあ、終わったら自動車の前で」
この団地は、何棟も立っています。一棟ずつ分担してやることにしました。最初こそこわごわやっていましたが、少しずつ慣れてきました。ただ階段を登ったりメーターの検針でしゃがんだりと結構疲れました。あと久美ちゃんが持たせてくれた伸び縮みする棒が役立ちました。ボックスの中に蜘蛛の巣などがあるからです。後メーターのふたを開けるのにも役立ちました。久美ちゃんありがとう!でもさすが久美ちゃんです。メーターの検針に必要なものがよくわかりましたね。
あと、私が前日に買っておいた虫よけや手袋も役立ちました。これは前世の母のおかげですね。お母さんありがとう!
そうしてやっとのことで、すべて終えて自動車のところに行くと青木さんはまだいませんでした。青木さんのほうが一棟分多いせいです。私は青木さんを探そうと団地をぐるりと見渡しました。
いました!どうやら今最上階にいます。廊下に背の高い頭が見え隠れしています。
もうすぐ終わりそうなので、私は冷たい飲み物を買ってくることにしました。先ほど団地のわきに自販機を見つけたのです。走って買いに行き戻ってくると青木さんが自動車のわきに立っていました。
「お疲れさまでした。これどうぞ」
私は走っていき、青木さんに買ってきた一本を渡しました。
「ありがとう」
青木さんは、受け取ってすぐに飲み始めました。やはりよほどのどが渇いていたんですね。普通に飲んでいるのですが、イケメンは飲むさまも絵になっています。のどぼとけが上下に動くさまにちょっとだけぐっときてしまいました。
やばいです。ずっと見ていてはいけません。まだ仕事も残っているのですから。私も慌ててのどを潤します。一仕事終えた後に冷たい飲み物は、体に沁みます。
飲み終えると、青木さんと目が合いました。青木さんが私を見ていたようです。私がじっと見ると、青木さんは目をそらしました。なんでしょうか?
「もうお昼だな。どうする?」
「そうですね。じゃあここのそばにあるコンビニに行きますか?」
「えっ?」
青木さんは、なぜか驚いています。会社に戻った方がよかったのでしょうか?
「会社にいったん戻りますか?」
「いや、いいのかコンビニで」
「ええ。午後もありますし」
「そうだな」
青木さんは、ちょっと変な顔をしてから車を発進させました。コンビニに着いた私たちは、食べ物を買い近くの公園に向かいました。コンビニに行く途中に大きな公園の前を通ったのです。あそこなら木陰もありますし手も洗えますしね。
ふたりで、木陰のベンチに向かいました。私が先に手を洗いに行きました。ちょうど木の陰になったベンチは風が通って気持ちよさそうです。空は青空で白い雲がほんの少しだけ浮かんでいます。
私はサンドイッチとデザートを買いました。青木さんはがっつりとお弁当を買っていました。
「結構疲れますね」
「そうだな」
ご飯を食べながら私は、青木さんに話しかけました。青木さんも最初より私に対して少し慣れてくれたようです。サンドイッチを食べ終わった私は、デザートとして買ったチョコを食べることにしました。青木さんも食べ終わっています。
「よかったらどうぞ」
個包装のチョコを買ったので、一つ青木さんにおすそ分けします。
「ありがとう」
青木さんは受け取ってくれました。甘いもので疲れも取れた気がします。さあ午後も頑張りましょうね。
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