上 下
126 / 156

第十四羽 杞憂

しおりを挟む
 
 お昼ご飯にバーベキューというなかなか豪快な食事を終えて、子供たちはみんなお昼寝の時間。クレアさんたちシスターはお仕事に。私もなにかお手伝いをと思ったのですが、子供たちが抱き着いてきて一緒に寝ようとせがまれてしまいました。

 困った私は助けを求めてクレアさんを見つめたのですが「ふふ、随分懐かれたみたいね。みんなのことを見ててあげて」といわれたので私も一緒に寝ることに。別に私も疲れて眠くなったわけではありませんので悪しからず。そんなこんなでみんなと同じ部屋で雑魚寝していたところパチリと目が覚めました。外から足音、……だれかが来た?

 足音は複数。クレアさんたち大人組がいる部屋のほうへと向かっていきました。
 僅かな不安を感じた私は子供たちを起こさないようにそっと立ち上がり、声のするほうへ。

「皆さん今日も巡回お疲れ様です」

「おう、ありがとうクレアさん。……今日はなんだか随分いい匂いがするな」

「ふふ、今日は遊びに来た子がご馳走してくれたのよ」

「……子供が? 大丈夫なのか?」

「ええ、なんでも――」

「クレアさん?」

「あら、メルちゃん。起こしちゃった?」

「……いえ、大丈夫ですよ。お手洗いに起きただけですので。そちらの方たちは?」

 目を向けた先には鎧を着けた大人達がこちらを見ていた。

「そう? あ、紹介するわね。この子が今話した本人よ。メルちゃんっていうの。それでこの人たちは巡回の白鱗騎士団の人達よ」

「初めまして、メルシュナーダ、メルです」

  クレアさんの紹介に合わせて挨拶をすれば、大人達の中から一番体格の大きな男性が1人までに出てきた。短く切りそろえた金髪を逆立たせた強面の方です。

「分隊長を務めている、トーヴだ。よろしく。お嬢さん」

「はい、よろしくお願いします」

 差し出された手を握り返した私は、その笑顔の裏で内心胸をなで下ろしていた。

 ……杞憂で良かった。大人がゾロゾロやってくるときは大抵取り立ての催促をする荒っぽい人たちだったので、もしやと邪推してしまいました。そうですよね、ここは支援の厚い孤児院でした。経営難になんてなっていないですよね。

「今日はこの孤児院に食料を分けてくれたと聞いた。白蛇聖教を代表して感謝するよお嬢さん」

「ふふ、少し前に回復薬を多めに補充した所でご飯を切り詰めていたから助かったわ」

「いえ、私も皆との食事は楽しかったので気にしないで下さい。ところで回復薬とはだれか怪我をされたのですか?」

「違うわ。タダの保険よ」

「最近ジャシン教の活動が各地で活発になっているのは知っているだろう? 怪我人が出ているとの話も多くてな。どこの家庭でももしものタメに回復薬を常備する様になったんだよ」

「そのせいで回復薬は品切れだし、あっても高くて……」

「作戦行動中以外は訓練が中心の騎士団などは怪我も比較的少なく問題ないのだが、普段から怪我が絶えない冒険者などはかなり困っているようだな」

「なるほど、それで……」

 私が回復薬を急いで運搬することになったのですね。ジャシン教は市民にまで迷惑をかけているのですね。……メリィさんは、……いえ、今は考えても仕方ありません。

「……ところでお嬢さん。施しはありがたいのだが……、その大丈夫なのかな? 懐は」


 ああ、私が子供に見えるから金銭的な心配をしてくれているのでしょう。問題ないことを伝えようと口を開いた時。

「大丈夫で―――」

「ふん、親の金で施しか? 随分お優しい事だな」

 突如として冷ややかな言葉が部屋の中に突き刺さった。
しおりを挟む
感想 7

あなたにおすすめの小説

猛焔滅斬の碧刃龍

ガスト
ファンタジー
ある日、背後から何者かに突然刺され死亡した主人公。 目覚めると神様的な存在に『転生』を迫られ 気付けば異世界に! 火を吐くドラゴン、動く大木、ダンジョンに魔王!! 有り触れた世界に転生したけど、身体は竜の姿で⋯!? 仲間と出会い、絆を深め、強敵を倒す⋯単なるファンタジーライフじゃない! 進むに連れて、どんどんおかしな方向に行く主人公の運命! グルグルと回る世界で、一体どんな事が待ち受けているのか! 読んで観なきゃあ分からない! 異世界転生バトルファンタジー!ここに降臨す! ※「小説家になろう」でも投稿しております。 https://ncode.syosetu.com/n5903ga/

メインをはれない私は、普通に令嬢やってます

かぜかおる
ファンタジー
ヒロインが引き取られてきたことで、自分がラノベの悪役令嬢だったことに気が付いたシルヴェール けど、メインをはれるだけの実力はないや・・・ だから、この世界での普通の令嬢になります! ↑本文と大分テンションの違う説明になってます・・・

父が再婚しました

Ruhuna
ファンタジー
母が亡くなって1ヶ月後に 父が再婚しました

今さら言われても・・・私は趣味に生きてますので

sherry
ファンタジー
ある日森に置き去りにされた少女はひょんな事から自分が前世の記憶を持ち、この世界に生まれ変わったことを思い出す。 早々に今世の家族に見切りをつけた少女は色んな出会いもあり、周りに呆れられながらも成長していく。 なのに・・・今更そんなこと言われても・・・出来ればそのまま放置しといてくれません?私は私で気楽にやってますので。 ※魔法と剣の世界です。 ※所々ご都合設定かもしれません。初ジャンルなので、暖かく見守っていただけたら幸いです。

お前じゃないと、追い出されたが最強に成りました。ざまぁ~見ろ(笑)

いくみ
ファンタジー
お前じゃないと、追い出されたので楽しく復讐させて貰いますね。実は転生者で今世紀では貴族出身、前世の記憶が在る、今まで能力を隠して居たがもう我慢しなくて良いな、開き直った男が楽しくパーティーメンバーに復讐していく物語。 --------- 掲載は不定期になります。 追記 「ざまぁ」までがかなり時間が掛かります。 お知らせ カクヨム様でも掲載中です。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

幼い公女様は愛されたいと願うのやめました。~態度を変えた途端、家族が溺愛してくるのはなぜですか?~

朱色の谷
ファンタジー
公爵家の末娘として生まれた6歳のティアナ お屋敷で働いている使用人に虐げられ『公爵家の汚点』と呼ばれる始末。 お父様やお兄様は私に関心がないみたい。愛されたいと願い、愛想よく振る舞っていたが一向に興味を示してくれない… そんな中、夢の中の本を読むと、、、

ナイナイづくしで始まった、傷物令嬢の異世界生活

天三津空らげ
ファンタジー
日本の田舎で平凡な会社員だった松田理奈は、不慮の事故で亡くなり10歳のマグダリーナに異世界転生した。転生先の子爵家は、どん底の貧乏。父は転生前の自分と同じ歳なのに仕事しない。二十五歳の青年におまるのお世話をされる最悪の日々。転生チートもないマグダリーナが、美しい魔法使いの少女に出会った時、失われた女神と幻の種族にふりまわされつつQOLが爆上がりすることになる――

処理中です...