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3章 2週間前
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2人の4年ぶりの逢瀬はそう長いものではなかった。
ここはカテリーナとリッカ公爵家が信頼を置く者しか配置されていないとは言え、屋外ではどんな目が光っているかもしれない。
そのことを先に思い出したのはジークヴァルトの方だった。
涙こそ止まっているものの、未来の王太子妃とは思えないような弱々しさを見せたシィエラの腕の、鈴が鳴った。
その音を知り、意味を知るジークヴァルトは、ビクリと肩を揺らした。
シェイラはまだ気づかない。
涙がこぼれる左目のアンバーと同じ色は、いつもジークヴァルトの側にいた。
そう、右目だ。
ジークヴァルトを監視するために軍属し、シレジアにやってきたヴィリー=マティアスの右目。
彼もまた、腕に鈴を持っていた。
監視と言いながらもヴィリーは変わらなかった。
多くの時、右目を布で覆っていた。その布に本当に効果があるのかはヴィリー自身にもジークヴァルトにも分からなかったが、ささやかな抵抗ですとヴィリーは笑っていた。
王都よりも、ライドゥルの方がずっと近く、ティトゥーリア軍の働きで概ね平静を保っているとは言え、小さな諍いは勃発する。旧ライドゥル領はライドゥル人の方が人口も多く、隣国の諜報員や軍人も多く紛れ込み、情報戦が繰り広げられていた。
敗北したとは言え、ライドゥル側はシレジアを、ティトゥーリアを諦めてはいない。
そんな遠い前線の地で、布で目を隠すくらいなんてことはないでしょう。
軽い口調で言った年下の友人は、決して外れない腕の鈴を忌々しげに睨みながら、感情の起伏を起こさない、穏やかさをまとうようになった。
それでもまだ、俺の方は気楽なもんですよ。
ヴィリーはそうも言っていた。
ヴィリーと同様、シェイラの腕にも鈴は鳴り、左目をアンバーが支配している。
シレジアではなく王都で、ジークヴァルトではなくエルンストとアーデルベルトの側で。しかも婚約者という役割さえも与えられた妹の緊張はいかばかりかと、妹を溺愛する兄の顔をして案じていた。
言葉の通り、ヴィリーよりジークヴァルトよりなお、役目の前に雁字搦めにされた少女の涙に、細い肩を支えてやりたい衝動に駆られ、それと同じほどに、彼女の足場を揺らがせてはならないという理性が働いた。
本当ならば、王太后宮への近道を通ってきたのだろうシェイラに声をかけるつもりはなかった。
ジークヴァルトは、最低でも年に二度は王都に戻ってくる。王都の軍本部の仕事もあったり、牽制もあるのかもしれない。アーデルベルトにも戻ってくるようにとも命じられている。また、特にこの時期、学術院の卒業式の頃には、王族の一員として式典、というよりその後の卒業パーティーに出なければならない。
シェイラとの婚約がなくなって後、未だ他の婚約者を持たないジークヴァルトに次の婚約者、おそらくは害のない女性を宛てがう、何よりの機会だからだ。
危険なシレジアに妻となる女性を連れていけるはずもないし、滅多に王都に戻らない夫ではすぐに愛想を尽かされてしまわれるでしょう。そう言ってのらりくらりとかわしてきたのだが、聡いアーデルベルトにはすべてお見通しだろう。
彼女以外の婚約者はいらないという本心は、アーデルベルトにとって危惧する思想である。ジークヴァルトにとっては単なる、事実に過ぎないのだけれど、王の危惧も理解できないわけではないから、4年前、誤解から傷つけるしかなかったやり取りから今まで、一度として親しく声をかけたことはなかった。
シェイラがエルンストの婚約者としての役目を果たす以上、自身の感情は不要どころか、彼女を危険にさせる可能性あると分かったからだ。
愚かなことに、ヴィリーに託した手紙が差し押さえられ、多忙の宰相閣下がわざわざ王太后宮にやってきて、理解した。
(今回は私が止めることができたからよかったものの、もしこれが心無い貴族に見つかり、王太子殿下との婚約にヒビが入れば、再び王家は揺れます。再びあなた様こそが後継に相応しいとの声が上がり、再びそのお命が狙われることもないとは言い切れません)
(宰相)
(私は、この時を守ると陛下に約束をし、息子と娘を差し出しました)
(私は…)
(王弟殿下、どうか娘とのことはすべて、お忘れください)
「マティアス侯爵令嬢、支えがなくとも立てますか」
穏やかな声に問われ、シェイラもまた、我に返る。すぐさま自身の失態に青ざめる。
思わず呼んでしまったことも、感情を制御し切れなかったことも、すべて許されることではない。これがアーデルベルトに知られれば、何と言われるか。シェイラが責められるだけであればいい、この方に何かあれば、自身を決して許せない。
「申し訳ございません、王弟殿下。目に何かが入ったようです」
取り繕えるものではないと分かっていながら、なんとかそう、言い訳を口にする。
落としてしまったサファイアを拾い上げたのはジークヴァルトで、やはり何事もなかったようにシェイラの手のひらに落とす。
「あ、あのっ」
シェイラは咄嗟に何かを言おうとするが、言葉にならない。
昔もらった守り石を持ち続けていたシェイラをジークヴァルトは何と思っただろうか。
「あの、殿下」
これは、シェイラが持っていてはならないものだ。
こんな未練はジークヴァルトにとっても迷惑にしかならないものだろう。それだけではない、アーデルベルトがこの石の存在を知っている以上、何かに利用され、よくないことの引き金になる可能性さえある。
もはや断ち切られた絆にいつまでも縋っていても。
多分、今までで最も精神力を要していると思う。
何があってももう、泣いてはならない、縋ってもならない。
「この石を、お返ししてもよろしゅうございますか」
念じているのに声が震えた。
「私には過ぎた物でございます」
それでも何とか言い切り、拳を解き、返そうとする。
「シェイラ」
その手をジークヴァルトは押しとどめながら、もう片方の手をシェイラへとのばした。
不自然にのばした右側の前髪を左に寄せ、縫い止める。
「殿下?」
驚くシェイラに、決して感情を揺らさないよう命じ、ささやいた。
露わになったシェイラの右の、碧の双眸が大きく見開かれる。
「許されるのであればいつか、伝えたいと思っていました。あなたの碧は私のここに、預かっていると」
促され、シェイラは見つける。
左側で束ねられた長い銀の髪で隠された、見ようとしなければ決して見つけられない場所に。
エメラルドのピアス、シェイラの守り石を。
声をかけるつもりはなかったのだ。
道を外して行けばいいだけのことだった。
けれど、シェイラが呼んだのだ。
泣いていたのだ、手に、ジークヴァルトの守り石を持って、泣いていたのだ。
そして、返すと言いながら、再び泣き出しそうな潤んだ目に、頼りない肩に。
ヴィリーがよくしていたようにアンバーを隠し、もう片方をかき分けてやり、見つけた懐かしい碧に。
慕わしさに、愛おしさに、肩を押されてしまった。
衝動だった。
4年前告げられなかった言葉を、そう。絆はまだつながれているのだと、告げずにはいられなかったのだ。
ここはカテリーナとリッカ公爵家が信頼を置く者しか配置されていないとは言え、屋外ではどんな目が光っているかもしれない。
そのことを先に思い出したのはジークヴァルトの方だった。
涙こそ止まっているものの、未来の王太子妃とは思えないような弱々しさを見せたシィエラの腕の、鈴が鳴った。
その音を知り、意味を知るジークヴァルトは、ビクリと肩を揺らした。
シェイラはまだ気づかない。
涙がこぼれる左目のアンバーと同じ色は、いつもジークヴァルトの側にいた。
そう、右目だ。
ジークヴァルトを監視するために軍属し、シレジアにやってきたヴィリー=マティアスの右目。
彼もまた、腕に鈴を持っていた。
監視と言いながらもヴィリーは変わらなかった。
多くの時、右目を布で覆っていた。その布に本当に効果があるのかはヴィリー自身にもジークヴァルトにも分からなかったが、ささやかな抵抗ですとヴィリーは笑っていた。
王都よりも、ライドゥルの方がずっと近く、ティトゥーリア軍の働きで概ね平静を保っているとは言え、小さな諍いは勃発する。旧ライドゥル領はライドゥル人の方が人口も多く、隣国の諜報員や軍人も多く紛れ込み、情報戦が繰り広げられていた。
敗北したとは言え、ライドゥル側はシレジアを、ティトゥーリアを諦めてはいない。
そんな遠い前線の地で、布で目を隠すくらいなんてことはないでしょう。
軽い口調で言った年下の友人は、決して外れない腕の鈴を忌々しげに睨みながら、感情の起伏を起こさない、穏やかさをまとうようになった。
それでもまだ、俺の方は気楽なもんですよ。
ヴィリーはそうも言っていた。
ヴィリーと同様、シェイラの腕にも鈴は鳴り、左目をアンバーが支配している。
シレジアではなく王都で、ジークヴァルトではなくエルンストとアーデルベルトの側で。しかも婚約者という役割さえも与えられた妹の緊張はいかばかりかと、妹を溺愛する兄の顔をして案じていた。
言葉の通り、ヴィリーよりジークヴァルトよりなお、役目の前に雁字搦めにされた少女の涙に、細い肩を支えてやりたい衝動に駆られ、それと同じほどに、彼女の足場を揺らがせてはならないという理性が働いた。
本当ならば、王太后宮への近道を通ってきたのだろうシェイラに声をかけるつもりはなかった。
ジークヴァルトは、最低でも年に二度は王都に戻ってくる。王都の軍本部の仕事もあったり、牽制もあるのかもしれない。アーデルベルトにも戻ってくるようにとも命じられている。また、特にこの時期、学術院の卒業式の頃には、王族の一員として式典、というよりその後の卒業パーティーに出なければならない。
シェイラとの婚約がなくなって後、未だ他の婚約者を持たないジークヴァルトに次の婚約者、おそらくは害のない女性を宛てがう、何よりの機会だからだ。
危険なシレジアに妻となる女性を連れていけるはずもないし、滅多に王都に戻らない夫ではすぐに愛想を尽かされてしまわれるでしょう。そう言ってのらりくらりとかわしてきたのだが、聡いアーデルベルトにはすべてお見通しだろう。
彼女以外の婚約者はいらないという本心は、アーデルベルトにとって危惧する思想である。ジークヴァルトにとっては単なる、事実に過ぎないのだけれど、王の危惧も理解できないわけではないから、4年前、誤解から傷つけるしかなかったやり取りから今まで、一度として親しく声をかけたことはなかった。
シェイラがエルンストの婚約者としての役目を果たす以上、自身の感情は不要どころか、彼女を危険にさせる可能性あると分かったからだ。
愚かなことに、ヴィリーに託した手紙が差し押さえられ、多忙の宰相閣下がわざわざ王太后宮にやってきて、理解した。
(今回は私が止めることができたからよかったものの、もしこれが心無い貴族に見つかり、王太子殿下との婚約にヒビが入れば、再び王家は揺れます。再びあなた様こそが後継に相応しいとの声が上がり、再びそのお命が狙われることもないとは言い切れません)
(宰相)
(私は、この時を守ると陛下に約束をし、息子と娘を差し出しました)
(私は…)
(王弟殿下、どうか娘とのことはすべて、お忘れください)
「マティアス侯爵令嬢、支えがなくとも立てますか」
穏やかな声に問われ、シェイラもまた、我に返る。すぐさま自身の失態に青ざめる。
思わず呼んでしまったことも、感情を制御し切れなかったことも、すべて許されることではない。これがアーデルベルトに知られれば、何と言われるか。シェイラが責められるだけであればいい、この方に何かあれば、自身を決して許せない。
「申し訳ございません、王弟殿下。目に何かが入ったようです」
取り繕えるものではないと分かっていながら、なんとかそう、言い訳を口にする。
落としてしまったサファイアを拾い上げたのはジークヴァルトで、やはり何事もなかったようにシェイラの手のひらに落とす。
「あ、あのっ」
シェイラは咄嗟に何かを言おうとするが、言葉にならない。
昔もらった守り石を持ち続けていたシェイラをジークヴァルトは何と思っただろうか。
「あの、殿下」
これは、シェイラが持っていてはならないものだ。
こんな未練はジークヴァルトにとっても迷惑にしかならないものだろう。それだけではない、アーデルベルトがこの石の存在を知っている以上、何かに利用され、よくないことの引き金になる可能性さえある。
もはや断ち切られた絆にいつまでも縋っていても。
多分、今までで最も精神力を要していると思う。
何があってももう、泣いてはならない、縋ってもならない。
「この石を、お返ししてもよろしゅうございますか」
念じているのに声が震えた。
「私には過ぎた物でございます」
それでも何とか言い切り、拳を解き、返そうとする。
「シェイラ」
その手をジークヴァルトは押しとどめながら、もう片方の手をシェイラへとのばした。
不自然にのばした右側の前髪を左に寄せ、縫い止める。
「殿下?」
驚くシェイラに、決して感情を揺らさないよう命じ、ささやいた。
露わになったシェイラの右の、碧の双眸が大きく見開かれる。
「許されるのであればいつか、伝えたいと思っていました。あなたの碧は私のここに、預かっていると」
促され、シェイラは見つける。
左側で束ねられた長い銀の髪で隠された、見ようとしなければ決して見つけられない場所に。
エメラルドのピアス、シェイラの守り石を。
声をかけるつもりはなかったのだ。
道を外して行けばいいだけのことだった。
けれど、シェイラが呼んだのだ。
泣いていたのだ、手に、ジークヴァルトの守り石を持って、泣いていたのだ。
そして、返すと言いながら、再び泣き出しそうな潤んだ目に、頼りない肩に。
ヴィリーがよくしていたようにアンバーを隠し、もう片方をかき分けてやり、見つけた懐かしい碧に。
慕わしさに、愛おしさに、肩を押されてしまった。
衝動だった。
4年前告げられなかった言葉を、そう。絆はまだつながれているのだと、告げずにはいられなかったのだ。
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