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II.停戦期間が終わる
宣誓の言葉2
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全員が息を飲む中、画面はロウェルディ大臣が宣言台に立っていた。風を遮るものが無いせいか、ビュウビュウと国旗が揺れて騒がしい。
しかしロウェルディ大臣は硬い表情であり何もなびくものが無い。そして語り出した。
「……エルサの国が栄えた年。神話戦争が起こった。それから千年後にエルシーズ大戦が勃発。ここからひとつ、またひとつと、かつて栄えたエルシーズの大国は戦場から降りていく。そして我らの英雄アスタリカ軍によるこの地の支配。権威を取り合ったのは第二次神話戦争である。それがおよそ120年前。まだその決着を付けられていない。先代の先駆者は決着を今、ここにいる我々に託したのである」
ロウェルディ大臣が黙ると、まるで通信障害で画面が固まったかのようだった。唯一うしろの旗が揺れている。本当にリアルタイムなんだなと誰もが息を飲ませられる。
大臣は黙ったまま。たまらずに報道者が言葉を繋いだ。「書類の不備でしょうか」なんて、真剣に耳を傾けて大臣の強張る表情を見ていれば、そう思える人は少ないというのに。
しかし僕の側にも報道者のような人がいる。
「セリフ飛んじゃったんですかね?」
耳打ちにするのも忘れた内科先生だ。僕からはいちいち状況を見なさいとは言わない。医者たるものは状況把握が全てだ! とは、誰か彼の上司が叱ってくれたらいい。だから僕は「うーん」と唸るだけにしておいた。
そうこうしているとロウェルディ大臣がようやく話しだす。景色を撮っていたカメラは慌てて大臣の顔に戻った。
「我々には知恵がある。武器もある。作戦もある。それらは全て、先ほどの争いの中から見い出したものだ。過去の偉人による手柄と結果を受けて、今の私たちが未来を託されている。……とある偉人の言葉にはこうある。『凶器は敵に知らしめるものにあらず。内を守るために。家族に知らしめるためにある』これは、数多くの英雄伝記を読んできた私が最も尊敬に値する人物……セルジオ王国の覇者アルゴブレロ王の言葉である。彼は内を戦わせることがあっても常に最強の男であった。また、外との戦いは必ず領地外で止まらせ、セルジオ王国を『鉄壁の国』と呼ばせた伝説を持つ。もっとも、今現在もエルシーズの中で唯一戦場から降りずに残る国がある。それこそ現のセルジオ王国だ!!」
高らかに告げられる声。しかしその言葉で大いに沸いたのはセルジオの軍だった。彼らは武器を天に掲げて咆哮するように叫んでいた。
一方僕らには疑問が浮かんでいる。ロウェルディ大臣は何を言っているんだろう? 病院のロビーでもざわめきが起こるくらい。そしてその疑問は僕たちを代表するかのように報道者も言葉にしてくれる。
「こ、これは……ロウェルディ大臣による挑発なのでしょうか? セルジオ国が士気を高めています。だ、だ、大丈夫なのでしょうか??」
たまらなくなった野次はモニター前でも騒がしい。「何やってんだよ!!」と、怒る人もいれば「もう終わりだわ……」と、嘆く人もいた。
今日のこの大事な一瞬を見守る全員に愛国心があったなんては思わない。ただ、まさか自国が負けて生き地獄のような日々を過ごすことを考えていなかったんだ。それが現実となりそうだから叫んだ。
全員がロウェルディ大臣に対して、戦う前に敵を褒めてどうするんだと思った。怒るにしても、嘆くにしてもだ。だからこれが平和への一歩だなんて誰も思いやしない。僕だって分からなかった。
長くなった宣誓の言葉は、次の文章にて締め括られる。
「争うことでの結果はすでに過去で見つけてある。我々に伝えられていることは『繰り返してはならない』という教えだ。そして我々は、今の教訓を次の世代に伝える義務があるのだ。よって、ここで120年を絶やすのは罪である。……私の偉大な教授はおそらくそう言うだろう」
ひと呼吸置き、ロウェルディ大臣は響かすような声ではなく、そこにいる兵士たちに呼びかけるかのように告げた。
「アスタリカ軍隊。ご苦労だった。引き上げだ」
そしてひとりでに宣言台を降りて行った。
カメラは去っていく大臣を追わずに、セルジオの王を映しだした。王は険しい表情はそのままに。しかしこちらもマイクを使わないで撤退を命じたらしかった。
エシュ軍も身を引く。つまり。
「戦争にならなかった……」
なーんだ。などと言う人は出てこなかった。それよりも唐突であり全員がポカンとしたままだ。外来の電話が鳴っていても、しばらく受付係は電話を取るのを忘れたくらい。
「あ、あれ? なんで引き上げたんでしたっけ?」
「失礼します!」
内科先生と話している場合じゃないと、高鳴る思いを抑えられずに僕は病院を飛び出した。モニターで見ていた爽やかで暑い日差しのある昼間だった。
戦争が中止になったと号外が配られる街中。僕もその一枚を決死につかみ取って中身を見た。印刷業界の仕事は早く、そこにはロウェルディ大臣の長い宣言の言葉が、唸り声と息を吸うタイミングまで事細かに書かれていた。
号外の文字を眺めても胸の鼓動がおさまらない僕だった。早くアルゼレアに会わなくちゃと地下鉄を駆け降りた。
「アルゼレア!!」
日常の営業に戻りつつある国立図書館で僕の止まらないテンションは場違いだ。テレビもラジオも無い図書館に人は少ない。けど、そんなことは大して気にならない。
「アルゼレアは!」
「たぶん……裏の倉庫にいると思いますけど……」
「分かりました!!」
図書館を出て外周を走り回る。倉庫ならオソード探しを手伝った時に何度か往復した。広場から反対方面。大きな木の横をすり抜けたら、そこでアルゼレアとは鉢合わせになった。
「君だよ! 君のおかげだよ!!」
「な、何が……」
こんにちはも忘れて僕は号外をアルゼレアに見せる。彼女は今日とて図書館復興に本と向き合っていたんだろう。きっと知らないはずだ。いち早くアルゼレアに知らせないとと思って来た。
アルゼレアは、ロウェルディ大臣の言葉を読み上げてから「へえ……」と、頼りなく言った。反応が薄いというのもいつものことだと割り切って、僕は飛び出しそうな胸を押さえて言う。
「君の言葉が大臣に響いていたんだよ! だってこの文も、このところも! あの時に君が熱弁していた話をなぞっているだろう?」
「えっと……何か話しましたっけ?」
「すごいよ! アルゼレア!!」
僕は彼女を抱き上げてクルクルと回った。制服のエプロンがふんわりと広がってお姫様みたいで美しかった。それにも僕は心が躍っていた。とっても嬉しくてたまらなかったんだ。
「やっ、あのっ、下ろしてください!」
戸惑う彼女はジタバタするから下ろす。けど、彼女の手は離したくない。
「僕も立派な医者になるよ! 君が大臣を動かしたみたいに、僕だって何か大きなものを動かせるような人になりたいんだ!」
「あ、はい。応援します」
「ああ、本当にすごいよ、アルゼレア! 大好きだ!」
そう言うとアルゼレアは隙を盗んで僕から手を離す。小柄な体で木と僕の間をすり抜けてどこかへ逃げていってしまった。
「ちょっと待ってよー!」
逃げていく彼女を追いかけるにしても、僕はずっと嬉しいんだ。アルゼレアの本好きが世界を救った。それってすごいことじゃないか。
夏のように暑い日差しで走り抜け、図書館内に入っていったら「走らないでください」と関係者に叱られる。それからアルゼレアを見つけることは出来なかったけど。良いんだ。きっと僕もいつか彼女に見合う男になってみせる。
(((次話は明日17時に投稿します
Twitter →kusakabe_write
Instagram →kusakabe_natsuho
しかしロウェルディ大臣は硬い表情であり何もなびくものが無い。そして語り出した。
「……エルサの国が栄えた年。神話戦争が起こった。それから千年後にエルシーズ大戦が勃発。ここからひとつ、またひとつと、かつて栄えたエルシーズの大国は戦場から降りていく。そして我らの英雄アスタリカ軍によるこの地の支配。権威を取り合ったのは第二次神話戦争である。それがおよそ120年前。まだその決着を付けられていない。先代の先駆者は決着を今、ここにいる我々に託したのである」
ロウェルディ大臣が黙ると、まるで通信障害で画面が固まったかのようだった。唯一うしろの旗が揺れている。本当にリアルタイムなんだなと誰もが息を飲ませられる。
大臣は黙ったまま。たまらずに報道者が言葉を繋いだ。「書類の不備でしょうか」なんて、真剣に耳を傾けて大臣の強張る表情を見ていれば、そう思える人は少ないというのに。
しかし僕の側にも報道者のような人がいる。
「セリフ飛んじゃったんですかね?」
耳打ちにするのも忘れた内科先生だ。僕からはいちいち状況を見なさいとは言わない。医者たるものは状況把握が全てだ! とは、誰か彼の上司が叱ってくれたらいい。だから僕は「うーん」と唸るだけにしておいた。
そうこうしているとロウェルディ大臣がようやく話しだす。景色を撮っていたカメラは慌てて大臣の顔に戻った。
「我々には知恵がある。武器もある。作戦もある。それらは全て、先ほどの争いの中から見い出したものだ。過去の偉人による手柄と結果を受けて、今の私たちが未来を託されている。……とある偉人の言葉にはこうある。『凶器は敵に知らしめるものにあらず。内を守るために。家族に知らしめるためにある』これは、数多くの英雄伝記を読んできた私が最も尊敬に値する人物……セルジオ王国の覇者アルゴブレロ王の言葉である。彼は内を戦わせることがあっても常に最強の男であった。また、外との戦いは必ず領地外で止まらせ、セルジオ王国を『鉄壁の国』と呼ばせた伝説を持つ。もっとも、今現在もエルシーズの中で唯一戦場から降りずに残る国がある。それこそ現のセルジオ王国だ!!」
高らかに告げられる声。しかしその言葉で大いに沸いたのはセルジオの軍だった。彼らは武器を天に掲げて咆哮するように叫んでいた。
一方僕らには疑問が浮かんでいる。ロウェルディ大臣は何を言っているんだろう? 病院のロビーでもざわめきが起こるくらい。そしてその疑問は僕たちを代表するかのように報道者も言葉にしてくれる。
「こ、これは……ロウェルディ大臣による挑発なのでしょうか? セルジオ国が士気を高めています。だ、だ、大丈夫なのでしょうか??」
たまらなくなった野次はモニター前でも騒がしい。「何やってんだよ!!」と、怒る人もいれば「もう終わりだわ……」と、嘆く人もいた。
今日のこの大事な一瞬を見守る全員に愛国心があったなんては思わない。ただ、まさか自国が負けて生き地獄のような日々を過ごすことを考えていなかったんだ。それが現実となりそうだから叫んだ。
全員がロウェルディ大臣に対して、戦う前に敵を褒めてどうするんだと思った。怒るにしても、嘆くにしてもだ。だからこれが平和への一歩だなんて誰も思いやしない。僕だって分からなかった。
長くなった宣誓の言葉は、次の文章にて締め括られる。
「争うことでの結果はすでに過去で見つけてある。我々に伝えられていることは『繰り返してはならない』という教えだ。そして我々は、今の教訓を次の世代に伝える義務があるのだ。よって、ここで120年を絶やすのは罪である。……私の偉大な教授はおそらくそう言うだろう」
ひと呼吸置き、ロウェルディ大臣は響かすような声ではなく、そこにいる兵士たちに呼びかけるかのように告げた。
「アスタリカ軍隊。ご苦労だった。引き上げだ」
そしてひとりでに宣言台を降りて行った。
カメラは去っていく大臣を追わずに、セルジオの王を映しだした。王は険しい表情はそのままに。しかしこちらもマイクを使わないで撤退を命じたらしかった。
エシュ軍も身を引く。つまり。
「戦争にならなかった……」
なーんだ。などと言う人は出てこなかった。それよりも唐突であり全員がポカンとしたままだ。外来の電話が鳴っていても、しばらく受付係は電話を取るのを忘れたくらい。
「あ、あれ? なんで引き上げたんでしたっけ?」
「失礼します!」
内科先生と話している場合じゃないと、高鳴る思いを抑えられずに僕は病院を飛び出した。モニターで見ていた爽やかで暑い日差しのある昼間だった。
戦争が中止になったと号外が配られる街中。僕もその一枚を決死につかみ取って中身を見た。印刷業界の仕事は早く、そこにはロウェルディ大臣の長い宣言の言葉が、唸り声と息を吸うタイミングまで事細かに書かれていた。
号外の文字を眺めても胸の鼓動がおさまらない僕だった。早くアルゼレアに会わなくちゃと地下鉄を駆け降りた。
「アルゼレア!!」
日常の営業に戻りつつある国立図書館で僕の止まらないテンションは場違いだ。テレビもラジオも無い図書館に人は少ない。けど、そんなことは大して気にならない。
「アルゼレアは!」
「たぶん……裏の倉庫にいると思いますけど……」
「分かりました!!」
図書館を出て外周を走り回る。倉庫ならオソード探しを手伝った時に何度か往復した。広場から反対方面。大きな木の横をすり抜けたら、そこでアルゼレアとは鉢合わせになった。
「君だよ! 君のおかげだよ!!」
「な、何が……」
こんにちはも忘れて僕は号外をアルゼレアに見せる。彼女は今日とて図書館復興に本と向き合っていたんだろう。きっと知らないはずだ。いち早くアルゼレアに知らせないとと思って来た。
アルゼレアは、ロウェルディ大臣の言葉を読み上げてから「へえ……」と、頼りなく言った。反応が薄いというのもいつものことだと割り切って、僕は飛び出しそうな胸を押さえて言う。
「君の言葉が大臣に響いていたんだよ! だってこの文も、このところも! あの時に君が熱弁していた話をなぞっているだろう?」
「えっと……何か話しましたっけ?」
「すごいよ! アルゼレア!!」
僕は彼女を抱き上げてクルクルと回った。制服のエプロンがふんわりと広がってお姫様みたいで美しかった。それにも僕は心が躍っていた。とっても嬉しくてたまらなかったんだ。
「やっ、あのっ、下ろしてください!」
戸惑う彼女はジタバタするから下ろす。けど、彼女の手は離したくない。
「僕も立派な医者になるよ! 君が大臣を動かしたみたいに、僕だって何か大きなものを動かせるような人になりたいんだ!」
「あ、はい。応援します」
「ああ、本当にすごいよ、アルゼレア! 大好きだ!」
そう言うとアルゼレアは隙を盗んで僕から手を離す。小柄な体で木と僕の間をすり抜けてどこかへ逃げていってしまった。
「ちょっと待ってよー!」
逃げていく彼女を追いかけるにしても、僕はずっと嬉しいんだ。アルゼレアの本好きが世界を救った。それってすごいことじゃないか。
夏のように暑い日差しで走り抜け、図書館内に入っていったら「走らないでください」と関係者に叱られる。それからアルゼレアを見つけることは出来なかったけど。良いんだ。きっと僕もいつか彼女に見合う男になってみせる。
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