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永遠の命
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「行ってきます」響樹と勇希、華麗の三人が玄関で靴を履いている。 何も無かったかのように朝が来た。
「行ってらっしゃい ・・・・・・・・さよなら響助・・・・・・・」静香が新妻のようにエプロンを身につけている。 なぜか、静香は悲しそうな瞳をした。少しの時間をおいて彼女は気持ちを切り替えるように頬を両手のひらで叩いた。
「よし!」気合を入れるとキッチンに向かった。
彼女は勇希の料理に触発されて勉強を始めたようだ。 ただ、腕はあがらず料理と呼べないものが誕生することもある。
もっぱら味見役は響樹の仕事であった。
「どう、車に乗っていく?」庭の駐車場でシンディが、車のエンジンを吹かしている。
「結構です。 その車ほとんど二人乗りじゃないの!」勇希が突っ込む。
「そう、それじゃあ、お先ね! See you again!」シンディはカウンタックのドアを閉じると激しい爆音を上げて走っていった。
「本当にあれで先生が務まるのかしら・・・・・・」言いながら、勇希は響樹の腕の辺りを見つめた。響樹の腕を華麗が独占している。小さい体だが大きな胸を存分に押し付けていた。
「えへへへ、お兄ちゃん! あのね、あのね・・・・・・・」華麗が取り留めの無い話題を繰り広げている。
「ちょっと、華麗ちゃん・・・・・・・もう少し、離れたほうが・・・・・・・」華麗の服の裾を掴んでチョイチョイと引っ張った。
「まあ、お姉さま・・・・・・焼きもちですか? 仕方ないですね」言いながら、華麗は反対の腕を勇希の腕に絡めた。
「え、あ、そういう訳じゃ・・・・・・・」思惑と違った回答に勇希は戸惑った。
響樹は胸のペンダントを見つめながら思いを巡らせていた。
「嵐子さんの事・・・・・・・気になるの?」
「ええ、俺は憶えていないのですが、昔の俺って、色々な人達を不幸にしているのかと思って・・・・・・」響樹は少し悲しそうな表情をしていた。
「そうね、女の人限定みたいだけどね」
「そうですね、俺って最低な奴ですよね。それと詩織っていう人が言っていた破壊神の事も気になるし、俺は居ないほうがいい人間なのかな」ペンダントを力一杯握り占めた。
「・・・・・・・でもさ、響君と出会って幸せになった人もいると思うよ」勇希は上目遣いで空を見上げている。
「そうですか・・・・・・・」
「嵐子さんも、貴方と一緒にずっといたかったから、そのペンダントを託したのよ。 本当に嫌いなら・・・・・・・貴方の前には二度と現れなかったと思うわ」勇希は響樹の横顔を見ながら呟いた。
「・・・・・・」
「私達も幸せよね。華麗ちゃん?」
「ええ、華麗は今が一番幸せです!」華麗は可愛い顔で微笑んだ。
「有難う、華麗。勇希先輩」響樹はペンダントを胸にしまいながらお礼をいった。
「それから・・・・・・・そろそろ、先輩はやめて・・・・・・・ほしいな」勇希は少し小さな声でお願いした。
「え、何か言いました?」響樹は聞き取れなかった様子で聞き返した。
「だ、だから・・・・・・・」本当に女心が解らない男だと改めて認識する。もう少し気を配ってくれればと静香は思っていた。 ただ、そこも響樹の魅力なのかと考えたりもした。
「あー!!!」突然、華麗が叫ぶ。
「どうした、華麗?!」
「お兄ちゃん、お姉ちゃん! 遅刻してしまいます!」華麗は二人の手を握り走り出した。
「ちょ、ちょっと・・・・・・・!」勇希は言葉を制止されて少し憤慨した表情を見せた。
「急ごう! 勇希!」響樹は少し顔を赤く染めて呼んだ。
「え?・・・・・・・・あ、うん!」この時が永遠に続くように、勇希は願いをこめた。
おしまい
「行ってらっしゃい ・・・・・・・・さよなら響助・・・・・・・」静香が新妻のようにエプロンを身につけている。 なぜか、静香は悲しそうな瞳をした。少しの時間をおいて彼女は気持ちを切り替えるように頬を両手のひらで叩いた。
「よし!」気合を入れるとキッチンに向かった。
彼女は勇希の料理に触発されて勉強を始めたようだ。 ただ、腕はあがらず料理と呼べないものが誕生することもある。
もっぱら味見役は響樹の仕事であった。
「どう、車に乗っていく?」庭の駐車場でシンディが、車のエンジンを吹かしている。
「結構です。 その車ほとんど二人乗りじゃないの!」勇希が突っ込む。
「そう、それじゃあ、お先ね! See you again!」シンディはカウンタックのドアを閉じると激しい爆音を上げて走っていった。
「本当にあれで先生が務まるのかしら・・・・・・」言いながら、勇希は響樹の腕の辺りを見つめた。響樹の腕を華麗が独占している。小さい体だが大きな胸を存分に押し付けていた。
「えへへへ、お兄ちゃん! あのね、あのね・・・・・・・」華麗が取り留めの無い話題を繰り広げている。
「ちょっと、華麗ちゃん・・・・・・・もう少し、離れたほうが・・・・・・・」華麗の服の裾を掴んでチョイチョイと引っ張った。
「まあ、お姉さま・・・・・・焼きもちですか? 仕方ないですね」言いながら、華麗は反対の腕を勇希の腕に絡めた。
「え、あ、そういう訳じゃ・・・・・・・」思惑と違った回答に勇希は戸惑った。
響樹は胸のペンダントを見つめながら思いを巡らせていた。
「嵐子さんの事・・・・・・・気になるの?」
「ええ、俺は憶えていないのですが、昔の俺って、色々な人達を不幸にしているのかと思って・・・・・・」響樹は少し悲しそうな表情をしていた。
「そうね、女の人限定みたいだけどね」
「そうですね、俺って最低な奴ですよね。それと詩織っていう人が言っていた破壊神の事も気になるし、俺は居ないほうがいい人間なのかな」ペンダントを力一杯握り占めた。
「・・・・・・・でもさ、響君と出会って幸せになった人もいると思うよ」勇希は上目遣いで空を見上げている。
「そうですか・・・・・・・」
「嵐子さんも、貴方と一緒にずっといたかったから、そのペンダントを託したのよ。 本当に嫌いなら・・・・・・・貴方の前には二度と現れなかったと思うわ」勇希は響樹の横顔を見ながら呟いた。
「・・・・・・」
「私達も幸せよね。華麗ちゃん?」
「ええ、華麗は今が一番幸せです!」華麗は可愛い顔で微笑んだ。
「有難う、華麗。勇希先輩」響樹はペンダントを胸にしまいながらお礼をいった。
「それから・・・・・・・そろそろ、先輩はやめて・・・・・・・ほしいな」勇希は少し小さな声でお願いした。
「え、何か言いました?」響樹は聞き取れなかった様子で聞き返した。
「だ、だから・・・・・・・」本当に女心が解らない男だと改めて認識する。もう少し気を配ってくれればと静香は思っていた。 ただ、そこも響樹の魅力なのかと考えたりもした。
「あー!!!」突然、華麗が叫ぶ。
「どうした、華麗?!」
「お兄ちゃん、お姉ちゃん! 遅刻してしまいます!」華麗は二人の手を握り走り出した。
「ちょ、ちょっと・・・・・・・!」勇希は言葉を制止されて少し憤慨した表情を見せた。
「急ごう! 勇希!」響樹は少し顔を赤く染めて呼んだ。
「え?・・・・・・・・あ、うん!」この時が永遠に続くように、勇希は願いをこめた。
おしまい
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