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君とダイビング
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「ダークファンタジーの野澤社長はかなり憤慨されていたとお伺いしましたが、今回の移籍は円満移籍ではないのですか?」桃山桃子のダークファンタジーさんから小野寺プロさんへの移籍会見が行われている。テレビの画面には、小野寺社長と桃子がテーブルに座って記者の質問に答える様子を放送していた。
「そうですね・・・・・・、野澤社長が丹精を込めて育ててこられた桃山桃子を他のプロダクションへ移籍させるのは、まるで手塩にかけて育ててきた娘を嫁に出すみたいな感覚なのですかね・・・・・・・、きっと御淋《おさび》しいのでしょうね」小野寺社長はあくまで冷静に答える。まるで自分にも娘がいるような言いぐさであったが、もちろん独身の彼女には子供などいない。
「今回、所属事務所を移籍されるに際して、桃山さんはなにか思うところがおありだったのですか?」記者は質問を続ける。比較的大きなダークファンタジーから、人気のMIONが所属するとはいえ、弱小芸能事務への移籍は、キャリアの向上というよりは、後戻りといった印象を与えてしまうようである。
「わ、私は・・・・・・・、そうですね。・・・・・・昔からMIONさんに憧れていましたので・・・・・・・、同じ事務所で働いてみたいっていうか・・・・・・・、あの、まあ、そんな感じです」事前に用意された返答、桃子が美桜に憧れていたなんて聞いたことはない。しかし、あの舌打ちキャラとは違い可愛いアイドルを演じる彼女には感服する。
「ダークファンタジーさんへ、結構な額の移籍料と損害賠償が発生すると聞きましたが、その金額は教えてもらえませんでしょうか?」
「・・・・・・」桃子は無言のまま小野寺社長の顔を確認する。
「それは、お答えする義務はないといいますか・・・・・・、申し訳ございませんがノーコメントでお願いいたします」小野寺社長は少し体を乗り出すと、両肘をついて質問を投げた記者の顔を見た・
「そ、そうですか・・・・・・・・、それでは、MIONさんの引退騒動から小野寺プロさんの勢いが堕ちたって巷《ちまた》の噂でしたが、MIONさんのラジオ番組限定の復帰、あと新人女優の発掘、そして桃山さんの移籍と勢いに乗ってらっしゃりますけれど、今後の取組といいますか何かサプライズがあれば教えてもらえませんか?」新人女優の発掘とは、昌子の事であろう。彼女のCMは評判で、バラエティー番組などへの出演も増えている。
「いいえ、やれる事を地道にやっていくだけです。また、なにかございましたら皆様にご報告させていただきますので、楽しみにしてお待ちください」小野寺社長はニコリと微笑んだ。
「それでは、その地道な取り組みにはMIONさんの歌手復帰も含まれているのですか?」記者はそれが聞きたかったらしい。俺の隣で一緒にテレビを見る美桜の様子を横目で確認する。彼女の目の辺りが一瞬引き攣ったような感じがしたが、意外と平常心で会見の様子を視聴している。
「MIONの歌におきましては、充電期間といいますか・・・・・・、いま、彼女は色々な経験を通してエネルギーを蓄積している状況です。いつか、きっと彼女の新しい歌を皆さんにお届けできる日がくる事をお約束します」
「それでは時間がまいりましたので、桃山桃子の小野寺プロへの移籍会見を終了いたします。皆様、本日はありがとうございました」司会の女性が、会見を締める。話題がMIONの事に変わりそうなのを察して配慮したようであった。美桜はテレビのリモコンを手に取ると電源を落とした。
「・・・・・・」美桜は少し下を向いて床をじっと見つめている。
「美桜ちゃん・・・・・・・、大丈夫かい?」俺は彼女の顔を覗き込んだ。
「ふー・・・・・・」唐突に彼女はため息をついた。「ねえ、亮介さん・・・・・・」突然名前を呼ばれて驚く。
「な、なに・・・・・・・」どんな言葉が発せられるのか、なぜか少し緊張してしまう。
「社長が言ってましたけど・・・・・・・、私と一緒に経験してもらえませんか・・・・・・?」彼女は顔を赤くして、俺の傍に体を寄せてくる。甘い香りが俺の鼻先をかすめる。
「な、なに経験って・・・・・・!?」突然の彼女の行動におれの体が少し硬直する。
「私・・・・・・・、経験したいんです・・・・・・・。亮介さんと一緒に・・・・・・・・」顔を真っ赤にして、目をそらした。
「え、ええ!?」
「それとも・・・・・・・私と一緒じゃ・・・・・・・嫌・・・・・・・?」悲しそうな目をする。
「い、いや!そんなことないよ!・・・・・・・そんなことある訳ないじゃないか!!俺は美桜ちゃんとなら・・・・・・」俺は明らかに流されそうになってる。
「良かった・・・・・・・、それじゃあ、お出かけする準備をしてください!」美桜はスックと立ち上がると自分の部屋に向かっていく。「15分後に玄関で待ってますね」絵外で可愛く手を振っていた。
「えっ、お出かけ・・・・・・・ですか・・・・・・?」俺のいきり立ったこの気持ちをどこにぶつければいいのだろう。消沈した思いで俺も外出の準備をする為に、部屋へ向かうのであった。・・・・・・レレレのレ・・・・・・・。
「そうですね・・・・・・、野澤社長が丹精を込めて育ててこられた桃山桃子を他のプロダクションへ移籍させるのは、まるで手塩にかけて育ててきた娘を嫁に出すみたいな感覚なのですかね・・・・・・・、きっと御淋《おさび》しいのでしょうね」小野寺社長はあくまで冷静に答える。まるで自分にも娘がいるような言いぐさであったが、もちろん独身の彼女には子供などいない。
「今回、所属事務所を移籍されるに際して、桃山さんはなにか思うところがおありだったのですか?」記者は質問を続ける。比較的大きなダークファンタジーから、人気のMIONが所属するとはいえ、弱小芸能事務への移籍は、キャリアの向上というよりは、後戻りといった印象を与えてしまうようである。
「わ、私は・・・・・・・、そうですね。・・・・・・昔からMIONさんに憧れていましたので・・・・・・・、同じ事務所で働いてみたいっていうか・・・・・・・、あの、まあ、そんな感じです」事前に用意された返答、桃子が美桜に憧れていたなんて聞いたことはない。しかし、あの舌打ちキャラとは違い可愛いアイドルを演じる彼女には感服する。
「ダークファンタジーさんへ、結構な額の移籍料と損害賠償が発生すると聞きましたが、その金額は教えてもらえませんでしょうか?」
「・・・・・・」桃子は無言のまま小野寺社長の顔を確認する。
「それは、お答えする義務はないといいますか・・・・・・、申し訳ございませんがノーコメントでお願いいたします」小野寺社長は少し体を乗り出すと、両肘をついて質問を投げた記者の顔を見た・
「そ、そうですか・・・・・・・・、それでは、MIONさんの引退騒動から小野寺プロさんの勢いが堕ちたって巷《ちまた》の噂でしたが、MIONさんのラジオ番組限定の復帰、あと新人女優の発掘、そして桃山さんの移籍と勢いに乗ってらっしゃりますけれど、今後の取組といいますか何かサプライズがあれば教えてもらえませんか?」新人女優の発掘とは、昌子の事であろう。彼女のCMは評判で、バラエティー番組などへの出演も増えている。
「いいえ、やれる事を地道にやっていくだけです。また、なにかございましたら皆様にご報告させていただきますので、楽しみにしてお待ちください」小野寺社長はニコリと微笑んだ。
「それでは、その地道な取り組みにはMIONさんの歌手復帰も含まれているのですか?」記者はそれが聞きたかったらしい。俺の隣で一緒にテレビを見る美桜の様子を横目で確認する。彼女の目の辺りが一瞬引き攣ったような感じがしたが、意外と平常心で会見の様子を視聴している。
「MIONの歌におきましては、充電期間といいますか・・・・・・、いま、彼女は色々な経験を通してエネルギーを蓄積している状況です。いつか、きっと彼女の新しい歌を皆さんにお届けできる日がくる事をお約束します」
「それでは時間がまいりましたので、桃山桃子の小野寺プロへの移籍会見を終了いたします。皆様、本日はありがとうございました」司会の女性が、会見を締める。話題がMIONの事に変わりそうなのを察して配慮したようであった。美桜はテレビのリモコンを手に取ると電源を落とした。
「・・・・・・」美桜は少し下を向いて床をじっと見つめている。
「美桜ちゃん・・・・・・・、大丈夫かい?」俺は彼女の顔を覗き込んだ。
「ふー・・・・・・」唐突に彼女はため息をついた。「ねえ、亮介さん・・・・・・」突然名前を呼ばれて驚く。
「な、なに・・・・・・・」どんな言葉が発せられるのか、なぜか少し緊張してしまう。
「社長が言ってましたけど・・・・・・・、私と一緒に経験してもらえませんか・・・・・・?」彼女は顔を赤くして、俺の傍に体を寄せてくる。甘い香りが俺の鼻先をかすめる。
「な、なに経験って・・・・・・!?」突然の彼女の行動におれの体が少し硬直する。
「私・・・・・・・、経験したいんです・・・・・・・。亮介さんと一緒に・・・・・・・・」顔を真っ赤にして、目をそらした。
「え、ええ!?」
「それとも・・・・・・・私と一緒じゃ・・・・・・・嫌・・・・・・・?」悲しそうな目をする。
「い、いや!そんなことないよ!・・・・・・・そんなことある訳ないじゃないか!!俺は美桜ちゃんとなら・・・・・・」俺は明らかに流されそうになってる。
「良かった・・・・・・・、それじゃあ、お出かけする準備をしてください!」美桜はスックと立ち上がると自分の部屋に向かっていく。「15分後に玄関で待ってますね」絵外で可愛く手を振っていた。
「えっ、お出かけ・・・・・・・ですか・・・・・・?」俺のいきり立ったこの気持ちをどこにぶつければいいのだろう。消沈した思いで俺も外出の準備をする為に、部屋へ向かうのであった。・・・・・・レレレのレ・・・・・・・。
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