上 下
35 / 94

君と黒猫

しおりを挟む
 また、美桜のラジオ収録の付き添いにきている。彼女の送り迎えが俺の役目のようになってきた。
 放送局に到着し彼女を見送ってから、ZX10Rを移動させる。局の中に入ろうとするとしゃがんで黒猫と笑顔で戯れる桃子の姿があった。

「よっ……」なぜか声をかけてしまった。

「あっ、リア充……」ミニスカートで座り込む彼女白い太ももが露になっている。自然とそこに視線がいってしまった事を気づかれたようだ。

「ちっ!あんまり、ジロジロ見んなよ……」覚めた口調でまた舌打ちをした。本当に表裏の激しい奴だ。見られる事には慣れっこなのか、恥じらいの仕草は見られなかった。しかし、いつの間にか俺の名前はリア充になっていたのか。

「なんだ、お前猫好きなのか?」半分誤魔化すように聞いてみた。しかし、彼女にあんな笑顔が出来るのだと驚く。正直、美桜とラジオとの収録の時に見せた笑顔よりずっと可愛らしい顔であった。

「な、な、違うよ、たまたまいたから……」恥ずかしそうに立ち上がった。そういうところを人には見せたくないのかなと勝手に想像する。

「今日は仕事かい?」まあ、その姿を見れば仕事であることは一目瞭然なのであるが一応聞いてみる。

「当たり前だろ。仕事以外で来るかよ、こんな所……」いや、本当に口が悪いなコイツ。「あんたはまたMIONの……」珍しく桃子のほうから問いかけがあった。

「ああ、体のいいタクシーみたいなもんだよ」このままでは、毎週の送り迎えは当たり前になってしまうのだろう。

「いつも一緒だけど付き合ってんの?」不思議そうな顔をしている。そりゃ、アイドルが男連れでやってきたら、そう思うわな。マネージャーか付き人にしてもらったほうが無難かもしれない。小野寺社長にバイト代でないか今度きいてみよう。

「違うよ。たまたま俺の家にシェアハウスしてるから」たまたまと云うのは少し語弊があるが。

「なに、あんた達一緒に住んでるの?信じられないわ……」アイドル事務所によっては恋愛禁止って処もあるようだから、同じ屋根のしたに男が住んでいるなど信じられなくて当然のだわな。まあ、事務所の社長も最近越してきたし、なにより俺達は別に恋人ではないし、美桜もそんな感情などないであろう。

「俺達、別にそんなんじゃねえし……」

「ふーん……そうなんだ」質問しておいて、結局はあまり俺には興味は無い様子であった。

「おーい!桃子!そろそろスタンバイしろ!」彼女の関係者らしい男の声がする。

「あーい」かなり怠そうに手を挙げると彼女は局の中に入っていた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

大好きな彼女を学校一のイケメンに寝取られた。そしたら陰キャの僕が突然モテ始めた件について

ねんごろ
恋愛
僕の大好きな彼女が寝取られた。学校一のイケメンに…… しかし、それはまだ始まりに過ぎなかったのだ。 NTRは始まりでしか、なかったのだ……

夫を愛することはやめました。

杉本凪咲
恋愛
私はただ夫に好かれたかった。毎日多くの時間をかけて丹念に化粧を施し、豊富な教養も身につけた。しかし夫は私を愛することはなく、別の女性へと愛を向けた。夫と彼女の不倫現場を目撃した時、私は強いショックを受けて、自分が隣国の王女であった時の記憶が蘇る。それを知った夫は手のひらを返したように愛を囁くが、もう既に彼への愛は尽きていた。

美少女幼馴染が火照って喘いでいる

サドラ
恋愛
高校生の主人公。ある日、風でも引いてそうな幼馴染の姿を見るがその後、彼女の家から変な喘ぎ声が聞こえてくるー

蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる

フルーツパフェ
大衆娯楽
 転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。  一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。  そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!  寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。 ――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです  そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。  大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。  相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。      

これ以上ヤったら●っちゃう!

ヘロディア
恋愛
彼氏が変態である主人公。 いつも自分の部屋に呼んで戯れていたが、とうとう彼の部屋に呼ばれてしまい…

隣の人妻としているいけないこと

ヘロディア
恋愛
主人公は、隣人である人妻と浮気している。単なる隣人に過ぎなかったのが、いつからか惹かれ、見事に関係を築いてしまったのだ。 そして、人妻と付き合うスリル、その妖艶な容姿を自分のものにした優越感を得て、彼が自惚れるには十分だった。 しかし、そんな日々もいつかは終わる。ある日、ホテルで彼女と二人きりで行為を進める中、主人公は彼女の着物にGPSを発見する。 彼女の夫がしかけたものと思われ…

優しく微笑んでくれる婚約者を手放した後悔

しゃーりん
恋愛
エルネストは12歳の時、2歳年下のオリビアと婚約した。 彼女は大人しく、エルネストの話をニコニコと聞いて相槌をうってくれる優しい子だった。 そんな彼女との穏やかな時間が好きだった。 なのに、学園に入ってからの俺は周りに影響されてしまったり、令嬢と親しくなってしまった。 その令嬢と結婚するためにオリビアとの婚約を解消してしまったことを後悔する男のお話です。

[R18] 激しめエロつめあわせ♡

ねねこ
恋愛
短編のエロを色々と。 激しくて濃厚なの多め♡ 苦手な人はお気をつけくださいませ♡

処理中です...