【完結作品】どうして僕達は出会ってしまったのだろう。二転三転していく三角関係。どんなに想っても、君は僕の……。『ほのかなひかり』

電 話

　光は救急車による緊急搬送で市内の大型病院に運ばれた。警察官が彼が所持していた財布の中に入っていた健康保険証から自宅を特定して連絡をした。
　
　電話のコール音が数回鳴る。

「はい、もしもし渡辺でございます」受話器を取り上げると真由美は丁寧に対応する。

「もしもし、西警察の者ですが、渡辺光さんはお宅のご子息さんですか？」突然の警察の電話に驚く、まさか迷子にでもなったのかと思ったが自分の息子が高校生であることを思い出して、それは流石に違うと思った。

「はい、光は私の息子ですけど……」いぶかしげに返答をする。

「実はご子息が交通事故で重体になり意識不明になっています。すぐに市内の労災病院まで来ていただきますようお願いいたします」その言葉を聞いて真由美は気が動転する。話している警察官にとってはよくある事なのであろうか淡々とした口調であった。

　電話を切ってから真由美は目の前が真っ暗になって卒倒しそうになった。

　彼女は病院に行く前に渡辺直人に連絡した。渡辺直人が車で迎えに行くので待っているように指示される。
　二十分ほど待っていると玄関先で車のクラクションが数回聞こえる。真由美は玄関から飛び出して車に乗り込もうとする。

「おばさん、何かあったんですか？」友伽里が玄関先から顔を覗かせる。けたたましい音を立てた車が家の前に止まったので驚いて出てきた様子であった。

「友伽里ちゃん！光が、光が交通事故で意識不明って！」

「えっ！光君が交通事故！」

「真由美！早く！」渡辺直人が慌てた口調で急かす。中には穂乃花とひなの姿があった。穂乃花は今にも泣き出しそうな顔をして俯いている。

「ど、どこの病院なんですか！？」友伽里の血の気は引いている。

「労災！労災病院よ！！」そう言い残して真由美は車に飛び乗ってドアを激しく閉めた。

　穂乃花達を乗せた高級車は、猛烈な勢いで走り去っていった。