37 / 58
通りすがりの高校生だ!
しおりを挟む
下校の時間。
学校の校門の前が人だかりになっている。
「ねえ、あれ!」「ええ!」「まさか・・・・・・!」女子高生達の黄色い歓声が響き渡る。
校門の前には白いジーンズにお洒落なVネックのサマーセーターを着た男性が誰かを待っている。
男はアイドル事務所アニーズのトップを張る白川純一であった。
先日の出来事以来、彼のプライドは著《いちじる》しく傷つけられていた。
自分が主演であったはずのCMで注目を浴びているのは自分ではなく、俳優の一人娘とはいえ一般の女子高生。
それも自分と絡んでいた時は、笑顔ひとつ見せずに四六時中不機嫌そうな顔をしてNGを連発していた少女。
それが、出来上がった作品を見ると現場で自分には見せなかった笑顔が画面からあふれ出していた。
正直いうと白川も彼女のその笑顔で画面に釘付けになったしまった一人であった。もう、画面の中の穂乃果に一目惚れしてしまったと言っても過言ではないであろう。
ただ、その笑顔は自分が仮病で降板を申し出た後に代役を務めた一般の高校生に見せた笑顔。
彼女のその笑顔を引き出した高校生に強烈なジェラシーを感じていた。
「ちょっと、あれって・・・・・・、渡辺《わたなべ》さん」女子高生達が騒めく。その先には校舎から歩いてくる穂乃果《ほのか》の姿があった。
白川は普通の女子なら秒殺されそうな最高の笑顔で穂乃果の下校を迎えた。
「穂乃果さ~ん」白川はオーバーアクションで大きく手を振る。がまるでそれに気づかないかのような素振りで彼女は通過しようとする。
「ちょ、ちょっと待ってよ!穂乃果《ほのか》さん!」白川はそれを必死で呼び止める。
「あっ、私の事ですか?あなたは・・・・・・・、誰でしたっけ?」穂乃果《ほのか》は少し斜め上を見つめて思い出そうとした。
「俺だよ!俺!この間のCMを一緒に撮影した・・・・・・・」そこで白川はポーズをつけて名乗ろうとした。
「あっ、黒川さんでしたっけ!?」穂乃果《ほのか》の天然ぶりが炸裂する。全く彼には興味が無いようである。
「いや・・・・・・、白川、白川だよ。もしかしてワザと間違えていない?」彼にしてみれば日本中で自分の事を知らない女子高生など存在しないとさえ思っていた。これはかなりのショックであった。
「ああ、そうでしたか。こんにちは、私急いでいますので失礼します」穂乃果《ほのか》はこの後、ひなの保育園へお迎えに行く予定であった。
「ちょっと待ってよ。少し君と話しがしたいんだよ」白川は穂乃果の右手を掴む。
「キャー!」周りの女子生徒から歓声が上がる。なにやら失神しそうな生徒までいる。
「ちょっと、離してください!私には話すことはありません!」穂乃果《ほのか》は強引に腕を掴まれたことで不快感を露骨に露わにした。
「いいから」白川は穂乃果《ほのか》の体を学校の校名が刻まれた柱に押し付ける。そして彼女に顔を近づけた。周りから見ると今にも唇を奪いそうな勢いであった。
「ちょっとやめてください」その声は男性のものであった。白川と穂乃果《ほのか》は同時に声の主に視線を移す。そこには光《ひかり》の姿があった。
「なんなんだ、お前は関係ないだろう。それとも彼女の・・・・・・・?」白川は光の顔を睨みつける。
「俺ですか・・・・・・、俺は・・・・・・、なんなんだ?」光は両人差し指を立て、尋ねるように穂乃果の顔を見る。
「し、知らないわよ!」なぜか、顔を真っ赤に赤くする。その顔を見て白川は何かを感じ取ったようであった。
「俺は、通りすがりの高校生だー!です」どこかの特撮ヒーローのような見栄を切った。
「ば、馬鹿じゃないの・・・・・・」それは穂乃果の言葉であった。
「お前!助けてやろうとしているのに馬鹿は無いだろう!馬鹿は!」ムッとした顔で怒鳴る。
「だからお前って言うな!」穂乃果の顔と言葉がチグハグのようであった。
「なるほどな・・・・・・、君が僕の代役を務めた高校生だな・・・・・・」白川は穂乃果《ほのか》の体を開放すると光をマジマジと見つめた。
「えーと、俺はそういう趣味はないんだけれど・・・・・・」光が馬鹿な事を言っている間に、穂乃果は彼の後ろに隠れた。
「惚けた奴だな。俺は誰にも負けたくないんだよ、仕事でも恋愛でも!」白川は、先ほどまでの爽やかさは全く無くなって、獣を狩る野生《やせい》の狼のような顔に変わっている。また、その雰囲気に失神する女子がいるようだ。
「そうなんですか。ちなみに俺は負けっぱなしですけどね。穂乃花行こう!」光は穂乃果《ほのか》に目配せをして先導した。穂乃果《ほのか》は小さくお辞儀をするとその後をついていった。
「穂乃花さん!きっと、俺に振り向かせてやるからな!きっとだぞ!」後ろで白川の声が聞こえる。
「どうも、頑張ってくださ~い」光は小さく手を振った。
「ちょっと、頑張ってくださいは無いんじゃないの?」穂乃果は白川の姿が見えなくなってから光の顔を見る。
「あああ、怖かった・・・・・・」光は深い溜息をつく。
「えっ、怖かったの?」
「あ、当たり前だろう、相手は天下のアニーズの白川純一だぞ!一歩間違えたら、周りの女達にボコボコにされていたかもしれねえんだぞ!」光は胸を撫でおろした。
「・・・・・・そうか、ありがとうね」穂乃果は光《ひかり》の前に移動すると、後ろに手を組んで笑顔でお礼を言った。その顔が眩しくて光は少しキュンとなった。
「ひなちゃんのお迎えがあるんだろ。急ごう!」光は少し速足で先頭を歩いた。
「うん!」穂乃果は可愛く微笑んだ。
学校の校門の前が人だかりになっている。
「ねえ、あれ!」「ええ!」「まさか・・・・・・!」女子高生達の黄色い歓声が響き渡る。
校門の前には白いジーンズにお洒落なVネックのサマーセーターを着た男性が誰かを待っている。
男はアイドル事務所アニーズのトップを張る白川純一であった。
先日の出来事以来、彼のプライドは著《いちじる》しく傷つけられていた。
自分が主演であったはずのCMで注目を浴びているのは自分ではなく、俳優の一人娘とはいえ一般の女子高生。
それも自分と絡んでいた時は、笑顔ひとつ見せずに四六時中不機嫌そうな顔をしてNGを連発していた少女。
それが、出来上がった作品を見ると現場で自分には見せなかった笑顔が画面からあふれ出していた。
正直いうと白川も彼女のその笑顔で画面に釘付けになったしまった一人であった。もう、画面の中の穂乃果に一目惚れしてしまったと言っても過言ではないであろう。
ただ、その笑顔は自分が仮病で降板を申し出た後に代役を務めた一般の高校生に見せた笑顔。
彼女のその笑顔を引き出した高校生に強烈なジェラシーを感じていた。
「ちょっと、あれって・・・・・・、渡辺《わたなべ》さん」女子高生達が騒めく。その先には校舎から歩いてくる穂乃果《ほのか》の姿があった。
白川は普通の女子なら秒殺されそうな最高の笑顔で穂乃果の下校を迎えた。
「穂乃果さ~ん」白川はオーバーアクションで大きく手を振る。がまるでそれに気づかないかのような素振りで彼女は通過しようとする。
「ちょ、ちょっと待ってよ!穂乃果《ほのか》さん!」白川はそれを必死で呼び止める。
「あっ、私の事ですか?あなたは・・・・・・・、誰でしたっけ?」穂乃果《ほのか》は少し斜め上を見つめて思い出そうとした。
「俺だよ!俺!この間のCMを一緒に撮影した・・・・・・・」そこで白川はポーズをつけて名乗ろうとした。
「あっ、黒川さんでしたっけ!?」穂乃果《ほのか》の天然ぶりが炸裂する。全く彼には興味が無いようである。
「いや・・・・・・、白川、白川だよ。もしかしてワザと間違えていない?」彼にしてみれば日本中で自分の事を知らない女子高生など存在しないとさえ思っていた。これはかなりのショックであった。
「ああ、そうでしたか。こんにちは、私急いでいますので失礼します」穂乃果《ほのか》はこの後、ひなの保育園へお迎えに行く予定であった。
「ちょっと待ってよ。少し君と話しがしたいんだよ」白川は穂乃果の右手を掴む。
「キャー!」周りの女子生徒から歓声が上がる。なにやら失神しそうな生徒までいる。
「ちょっと、離してください!私には話すことはありません!」穂乃果《ほのか》は強引に腕を掴まれたことで不快感を露骨に露わにした。
「いいから」白川は穂乃果《ほのか》の体を学校の校名が刻まれた柱に押し付ける。そして彼女に顔を近づけた。周りから見ると今にも唇を奪いそうな勢いであった。
「ちょっとやめてください」その声は男性のものであった。白川と穂乃果《ほのか》は同時に声の主に視線を移す。そこには光《ひかり》の姿があった。
「なんなんだ、お前は関係ないだろう。それとも彼女の・・・・・・・?」白川は光の顔を睨みつける。
「俺ですか・・・・・・、俺は・・・・・・、なんなんだ?」光は両人差し指を立て、尋ねるように穂乃果の顔を見る。
「し、知らないわよ!」なぜか、顔を真っ赤に赤くする。その顔を見て白川は何かを感じ取ったようであった。
「俺は、通りすがりの高校生だー!です」どこかの特撮ヒーローのような見栄を切った。
「ば、馬鹿じゃないの・・・・・・」それは穂乃果の言葉であった。
「お前!助けてやろうとしているのに馬鹿は無いだろう!馬鹿は!」ムッとした顔で怒鳴る。
「だからお前って言うな!」穂乃果の顔と言葉がチグハグのようであった。
「なるほどな・・・・・・、君が僕の代役を務めた高校生だな・・・・・・」白川は穂乃果《ほのか》の体を開放すると光をマジマジと見つめた。
「えーと、俺はそういう趣味はないんだけれど・・・・・・」光が馬鹿な事を言っている間に、穂乃果は彼の後ろに隠れた。
「惚けた奴だな。俺は誰にも負けたくないんだよ、仕事でも恋愛でも!」白川は、先ほどまでの爽やかさは全く無くなって、獣を狩る野生《やせい》の狼のような顔に変わっている。また、その雰囲気に失神する女子がいるようだ。
「そうなんですか。ちなみに俺は負けっぱなしですけどね。穂乃花行こう!」光は穂乃果《ほのか》に目配せをして先導した。穂乃果《ほのか》は小さくお辞儀をするとその後をついていった。
「穂乃花さん!きっと、俺に振り向かせてやるからな!きっとだぞ!」後ろで白川の声が聞こえる。
「どうも、頑張ってくださ~い」光は小さく手を振った。
「ちょっと、頑張ってくださいは無いんじゃないの?」穂乃果は白川の姿が見えなくなってから光の顔を見る。
「あああ、怖かった・・・・・・」光は深い溜息をつく。
「えっ、怖かったの?」
「あ、当たり前だろう、相手は天下のアニーズの白川純一だぞ!一歩間違えたら、周りの女達にボコボコにされていたかもしれねえんだぞ!」光は胸を撫でおろした。
「・・・・・・そうか、ありがとうね」穂乃果は光《ひかり》の前に移動すると、後ろに手を組んで笑顔でお礼を言った。その顔が眩しくて光は少しキュンとなった。
「ひなちゃんのお迎えがあるんだろ。急ごう!」光は少し速足で先頭を歩いた。
「うん!」穂乃果は可愛く微笑んだ。
0
お気に入りに追加
5
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
俺は彼女に養われたい
のあはむら
恋愛
働かずに楽して生きる――それが主人公・桐崎霧の昔からの夢。幼い頃から貧しい家庭で育った霧は、「将来はお金持ちの女性と結婚してヒモになる」という不純極まりない目標を胸に抱いていた。だが、その夢を実現するためには、まず金持ちの女性と出会わなければならない。
そこで霧が目をつけたのは、大金持ちしか通えない超名門校「桜華院学園」。家庭の経済状況では到底通えないはずだったが、死に物狂いで勉強を重ね、特待生として入学を勝ち取った。
ところが、いざ入学してみるとそこはセレブだらけの異世界。性格のクセが強く一筋縄ではいかない相手ばかりだ。おまけに霧を敵視する女子も出現し、霧の前途は波乱だらけ!
「ヒモになるのも楽じゃない……!」
果たして桐崎はお金持ち女子と付き合い、夢のヒモライフを手に入れられるのか?
※他のサイトでも掲載しています。
極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~
恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」
そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。
私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。
葵は私のことを本当はどう思ってるの?
私は葵のことをどう思ってるの?
意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。
こうなったら確かめなくちゃ!
葵の気持ちも、自分の気持ちも!
だけど甘い誘惑が多すぎて――
ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました
氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。
ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。
小説家になろう様にも掲載中です
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

婚約者が他の女性に興味がある様なので旅に出たら彼が豹変しました
Karamimi
恋愛
9歳の時お互いの両親が仲良しという理由から、幼馴染で同じ年の侯爵令息、オスカーと婚約した伯爵令嬢のアメリア。容姿端麗、強くて優しいオスカーが大好きなアメリアは、この婚約を心から喜んだ。
順風満帆に見えた2人だったが、婚約から5年後、貴族学院に入学してから状況は少しずつ変化する。元々容姿端麗、騎士団でも一目置かれ勉学にも優れたオスカーを他の令嬢たちが放っておく訳もなく、毎日たくさんの令嬢に囲まれるオスカー。
特に最近は、侯爵令嬢のミアと一緒に居る事も多くなった。自分より身分が高く美しいミアと幸せそうに微笑むオスカーの姿を見たアメリアは、ある決意をする。
そんなアメリアに対し、オスカーは…
とても残念なヒーローと、行動派だが周りに流されやすいヒロインのお話です。
ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話
桜井正宗
青春
――結婚しています!
それは二人だけの秘密。
高校二年の遙と遥は結婚した。
近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。
キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。
ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。
*結婚要素あり
*ヤンデレ要素あり

包んで、重ねて ~歳の差夫婦の極甘新婚生活~
吉沢 月見
恋愛
ひたすら妻を溺愛する夫は50歳の仕事人間の服飾デザイナー、新妻は23歳元モデル。
結婚をして、毎日一緒にいるから、君を愛して君に愛されることが本当に嬉しい。
何もできない妻に料理を教え、君からは愛を教わる。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる