【完結作品】どうして僕達は出会ってしまったのだろう。二転三転していく三角関係。どんなに想っても、君は僕の……。『ほのかなひかり』

上条 樹

文字の大きさ
上 下
36 / 58

誰もそんな事言ってないわよ!

しおりを挟む
 委員会の会議が行われている。  

 議長は生徒会長でもある桂川が務めている。

「この前の臨海学校の事故について、生徒会が主催した胆試しで事故が発生しました。一人負傷者が出ましたが、幸い打撲程度という事でしたので・・・・・・」桂川による臨海学校の総括が続く。

 友伽里《ゆかり》は心此処にあらずという感じで窓の外を見つめている。

 あの臨海学校以来、光との距離間が遠くなったような気がする。以前なら少しくらい彼に悪態をつかれても笑って返せる自分がいた。でも、今日の自分は違う。

 接骨院に行くと言った彼の言葉を聞いた時、渡辺穂乃果とどこかへ行くつもりなのかと勘ぐってしまう。どうせ、いつもの委員会をサボタージュする為の口実であるとは思うのだがどうしても不安になってしまう。

 話題になっている穂乃果のCMを友伽里《ゆかり》も見た。あのCMの中で見せる穂乃果の笑顔は同性の友伽里《ゆかり》が見ても可愛いと感じる。同年代の男子生徒があの笑顔を見たらきっと一度に好きになってしまうであろう。

 友伽里《ゆかり》は、噂の通り穂乃果とアイドル事務所アニーズの白川純一と恋人になってくれればいいのにと本気で思っていた。

 ただでさえ、あの臨海学校の胆試し以来、光と穂乃果の距離間が接近しているように思えてヤキモキしている。あの笑顔が光に向けられたらと思うと、ゾッとした。

「ちょっと、友伽里《ゆかり》!聞いてるの?」桂川がボーっと外を眺める友伽里《ゆかり》を一喝する。本当に緩急が激しいのが彼女の長所でもあり、短所でもある。

「あ、あ、ごめんなさい。なん話だっけ?」友伽里《ゆかり》は突然名前を呼ばれて飛び上がる。

「秋にある文化祭の件を話しているんでしょう!まったく・・・・・・、どこに貴方の心は行っているのかしら」何か意味深な言い方をする。

「わ、私、光君の事なんか考えていないわよ!」友伽里《ゆかり》は机を力いっぱい叩いた。委員会のメンバーの顔が硬直する。

「誰もそんなこと言ってないわよ・・・・・・」桂川はあきれ顔でなだめる。

「ああ・・・・・・」友伽里《ゆかり》は顔を真っ赤に染める。

「その思い人、今日は何処へ行かれているの?」桂川は体育委員の座るべき席を見つめる。そこには、だれも座っていない椅子が一脚寂しそうに置かれていた。

「足の検査で接骨医院にいくそうよ」友伽里《ゆかり》はなぜか形見が狭い思いをする。

「ふーん、一度とっちめてやらないと駄目ね」深くため息をついてから腰に両こぶしを当てて桂川はもう一度席を睨みつけた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~

恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」 そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。 私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。 葵は私のことを本当はどう思ってるの? 私は葵のことをどう思ってるの? 意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。 こうなったら確かめなくちゃ! 葵の気持ちも、自分の気持ちも! だけど甘い誘惑が多すぎて―― ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました

氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。 ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。 小説家になろう様にも掲載中です

俺は彼女に養われたい

のあはむら
恋愛
働かずに楽して生きる――それが主人公・桐崎霧の昔からの夢。幼い頃から貧しい家庭で育った霧は、「将来はお金持ちの女性と結婚してヒモになる」という不純極まりない目標を胸に抱いていた。だが、その夢を実現するためには、まず金持ちの女性と出会わなければならない。 そこで霧が目をつけたのは、大金持ちしか通えない超名門校「桜華院学園」。家庭の経済状況では到底通えないはずだったが、死に物狂いで勉強を重ね、特待生として入学を勝ち取った。 ところが、いざ入学してみるとそこはセレブだらけの異世界。性格のクセが強く一筋縄ではいかない相手ばかりだ。おまけに霧を敵視する女子も出現し、霧の前途は波乱だらけ! 「ヒモになるのも楽じゃない……!」 果たして桐崎はお金持ち女子と付き合い、夢のヒモライフを手に入れられるのか? ※他のサイトでも掲載しています。

ダブル シークレットベビー ~御曹司の献身~ その後

菱沼あゆ
恋愛
その後のみんなの日記です。

義妹が大事だと優先するので私も義兄を優先する事にしました

さこの
恋愛
婚約者のラウロ様は義妹を優先する。 私との約束なんかなかったかのように… それをやんわり注意すると、君は家族を大事にしないのか?冷たい女だな。と言われました。 そうですか…あなたの目にはそのように映るのですね… 分かりました。それでは私も義兄を優先する事にしますね!大事な家族なので!

危険な残業

詩織
恋愛
いつも残業の多い奈津美。そこにある人が現れいつもの残業でなくなる

処理中です...