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諦めない

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「お姉ちゃん、どうしたの?」友伽里は、2歳年下の妹である涼奈と階段ですれ違いざまに聞かれたが、なんでもないと返答をして自分の部屋に入ると、外着のままベッドの上に飛び込んだ。

 そして、鳴き声が部屋の外に聞こえないように枕に顔を埋うずめた。

 『今に始まった事ではないけれど、本当になんて鈍感なヤツ!

 私が光君を好きな事なんて、誰が見ても解かるはずだわ。

 隣の家の幼馴染おさななじみで、兄妹のように育っては来たけれど、私はずっと小さい頃から好きだった。
 私はずっと光君だけを見てきた。

 同じ日に同じ病院で生まれて、家が隣同士なのも運命。私はきっと、光君のお嫁さんになる為に生まれてきたの。そう二人は結ばれる定めなのよ。

 ずっと光君と一緒にいたし、これからもずっと一緒にいる。それが普通だと思ってきた。
 
 だから、高校への進路希望を出した時は学校の先生や親にも怒られたけれど、結局高校も光君と同じ学校に進学した。

 光君の側に居られるのなら、学校なんて何処だっていい。なんなら地獄の果てまで着いていってやる。

 なのに、光君はちっとも私の気持ちの気づいてくれない。

 それとも、私の他に好きな人でもいるの?

 もしそうなら・・・・・・、それでも、決して私は諦あきらめない、諦あきらめられない!絶対にその人より綺麗になって光君を振り向かせてやる。

 その為だったら、私はどんなことだってやってしまうと思う。もしかしたら、その人を殺してしまうかもしれない。絶対にどんな手を使ってでも奪いとってやる!』

 友伽里は少し落ち着いてから、むくりと顔を上げると机の上の鏡を見た。
 鏡に映った顔は、泣いた後で少し目の辺りが腫れている。

「絶対に諦めないわ!」友伽里は、両手の平で気合を入れるように顔を叩いた。

「お姉ちゃん!お母さんがご飯だって!」涼奈がドアをノックした。

「すぐに降りるわ」友伽里はいつもの声で返事をした。
 
 

 
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