闘え！オルナス・バトルカーニバル！

ギルガメシュナイト

舞台の上に横たわるピークバッファローをオーナーの牛原が回収する。その背中に哀愁が漂っている。

「あの……、ありがとうございました」俺は牛原に深々とお時期をするの。

「あ、ああ、こちらこそありがとう。ギルガメシュナイトは強いね。僕も、いい経験になったよ」牛原はニコリと微笑むと、ピークバッファローを大切そうに両手で抱えて舞台を降りた。修理をすれば直るといっても、やはり自分が手塩にかけてチューンナップしてきたオルナスが傷つく事は、オーナーにとってはかなり辛い事だろう。

ふと、頭の中にギルを拾った時の、あの光景が頭を過る。傷つきボロボロの人形。下半身を破損して動く事は出来なかった。辛うじて胸から上だけAiと電力供給原が無事であった為に、修復する事が出来たのだ。

（アキト、大丈夫だ。私は負けない）
（俺、弱気に……、ごめん）

「どうしたの？アキト」美鈴が心配そうに見つめる。

「いや、別に……、大丈夫だよ」
「そう、次は私の番だから、ちゃんと応援してよ」美鈴が微笑む。

「美鈴ちゃん、やっぱり次の試合は棄権したほうが良いんじゃ……」
「私とリンが負けるって言うの？あんなニワトリ、ケチョンケチョンにしてやるわよ！」彼女はあくまでやる気であった。

「それなら、作戦を立てよう」
「作戦？」
「そうだ、あの電磁波を浴びてしまうとリンも一溜まりも無いだろう。何とかして、かわすんだ」
「どうやって？」
「それは……」俺はギルから聞いたアドバイスをそのまま伝えた。

「なるほどね。一回かわせばいいんだね！」彼女が言うとなんだか簡単そうに聞こえる。

「でも、どんなに上手くかわしても多少は電磁波を浴びてしまうと思う。極力、リンへの負担が無いようにして戦うんだ」
「ありがとう。自分の試合があったのには、そこまで私達の事を考えてくれてたんだね」
「いや、それは……」ほぼ、ギルのアドバイスだった事が心苦しい。
「アキト……」なんだ、この雰囲気は……！？
もしかして、もしかすると、もしかするわ……。

「なんや、アキトはんのオルナスの名前！受け狙いかいな」空気の読めない猿田が爆笑しながら近づいてくる。その瞬間、アナウンサーに紹介されたギルのリングネームを思い出す。

『ギルガメシュナイト……』

「そうだ！美鈴ちゃん、なんでギルのリングネームをあんな……！？」
「あんなって、格好いいでしょ！ギルは黒いし、ナイトは夜、そして騎士よ！！私のネーミングセンス抜群でしょう！！」誇らしげに腰に拳を当てながら胸をツンと張る。

「知らなの……、そりゃ、女の子は……知らないか……」ギルガメシュナイト。それは大昔、俺達の親の世代がお世話になった夜のテレビ番組のタイトルであった。男子なら少なからず、一度は検索した事があるキーワードであろう。

「わはははは！知らないであのネーミング
をするとは、やはりビューティーはんは一味違うわ！」猿田は馬鹿笑いする。

「いやいや、リングネーム変えてよ！」
「駄目よ、少なくとも、この大会はギルちゃんの名前はギルガメシュナイトよ！何、私の考えた名前が気に入らないの！？」今度は胸元を掴んで持ち上げてきた。さっきのラブモードは幻だったの！？

「はい……、ギルガメシュナイト、気に入りました……」俺の目には薄らと涙が浮かんでいただろう。