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阿僧祇(あそうぎ)

阿僧祇 

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「その刀は一体どういう代物なの?」サヤは落ち着いてから質問を投げ掛けてくる。

 先ほどの機械人間はサヤ達の間ではゴーレムと呼ばれているそうだ。ゴーレムは強靭な金属で作られており、この星いやこの日本に存在する金属で切断できる代物ではないそうだ。そのゴーレムをこのような鉄製の刀で真っ二つに斬ってしまうことなど物理的に考えてあり得る訳がないということである。

「この刀は『阿僧祇《あそうぎ》』という。刀鍛冶師だった俺の爺さまが人生の半分を費やして鍛えた刀だそうだ。」幻次郎は阿僧祇を鞘から引き抜くとサヤの前に置いた。

「触ってもいいかしら」彼女は手を差し出した。
「いいぞ。でも気をつけろよ」サヤは彼の了承をもらってから、目の前の阿僧祇を両手で持ち上げる。

「なっ、なに、なんなの!この重さは尋常じゃ無いわ!」とてもこの刀を腰にしてあのような動きが出来るなど信じられなかった。

「数々の侍や大名達が、この阿僧祇を譲ってくれと来たそうだが、誰一人として扱える者が居なかったそうだ。俺はガキの頃から阿僧祇を使えるようにと剣術をじいさまに教えられてきたからな。お陰でこの様《ざま》だ」幻次郎は袴の両裾《りょうすそ》を捲《まく》りあげた。そこには左右の太さが異様に違う二本の足が現れた。普段より阿僧祇を備える左側の足が右足の倍ほどの太さであった。それは引き締まった筋肉の塊のようであった。

「今では阿僧祇が無いと逆に真っ直ぐに歩けないくらいだ」幻次郎は苦笑いした。

「・・・・・・、これは間違いなくアズリニウムを使った物だわ。幻次郎さんのお祖父様は何処でこの原材料を手にいれられたの?」サヤは幻次郎に詰め寄った。その距離感に幻次郎は赤面する。

「爺さまが言っていたのは、山に住んでいた鬼が死に際に煮ても焼いてもどうにもならない鉄をもらったが、意固地になって……」

「幻次郎さん、その山は!?」幻次郎が言い終わる前にサヤが更に詰め寄ってきた。その距離はもはや零《ぜろ》に近い距離であった。幻次郎が真っ赤に顔を染めた。

「その裏山だ」彼女から顔を背けながら幻次郎は壁を指差した。
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