『上条樹短編集』電車の通勤、通学の途中、短時間で読める作品を集めてみました。

闘え！ミラクル・ワン

愛は地球(主に尼崎)を救う！

「ニュースの時間です。この度、地球人とアブール人との間に和平条約が締結されました。未来永劫、双方は平等の立場を遵守する事を誓い。平和条約を交わしました。そしてアブールの科学を地球側に提供することにより、数々存在する公害問題、温暖化など解決していくことを約束しました」秀幸はテレビのリモコンでテレビの電源を落とした。そして目を瞑って深くため息をついた。

　あの日、秀幸が守ろうとした物。それは、学校で飼育しているウサギ達であった。飼育委員の彼は責任感により怪獣達が来る度に、彼らに危害が及ばないように見張っていたのであった。

　その事を嵐山や学校の教師に告げると、呆れられたり怒られたり散々な目にあった。勝手に自分の事をミラクルワンだと思われていた事に文句を言われても、自分のせいでは無いと思った。

　リビングのソファーでは、今日も父と母が秀幸の目を気にせず、イチャイチャしている。その様子を秀幸は呆れ顔で見つめた。
　まるで、夫婦お互いが秘密にしていた物が消滅して、より深く二人の愛情が深まったようである。

　ちなみにあの後聞いた話では宇宙人アブールの姫であった母ことアブーは、自分の星の大学で宇宙の環境問題を研究していたそうである。
　その卒業の課題として選んだのが、公害問題で終末を迎えるかもしれない星「地球」だったそうである。当時、酷い公害によって環境を破壊している阪神工業地帯を訪れた時にそのあまりの酷さに、死の淵を彷徨うほどの思いをして、この星の住人達を改心させねばならないと決心して、地球侵略を始めたそうだ。

　一方、父はM６９星雲出身で宇宙連邦に所属するパトロール官だったそうである。そしてたまたま訪れた地球で、甲子園浜という浜辺で倒れていた少女を救い、その少女に一目惚れしてしまった。
　そしてその少女を守るために、そして、宇宙人アブールから地球への侵略を阻止する為に、この星に留まる事を決意したそうだ。

　よくよく考えてみると酷く私情が絡んだ事情だなと思う。

　母、いやアブール人による地球（主に尼崎）への攻撃が条約通り止めるそうである。必然的に父がミラクルワンに変身する機会も激減するという事だ。

　二人の正体は政府の計らいにより、一般には極秘事項として扱われる事になった。今まで通り普通の家族として生活を保障されたという事だ。

　結局、地球（主に尼崎市）の危機を救ったのは熱い夫婦愛であった。

　　　　　　　　　　　　　　　おしまい








「……って、俺って何者なの？」秀幸は頭をかきむしった。