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短編集 ①
タ マ
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ふと目が覚めると、視線が白い布のようなものに視界を遮られていた。
顔に被せられているその布を取ろうとするが上手く手で掴むことが出来ない。仕方ないので起き上がることにする。
「ああ、見えるようになった……」と言いながら周りを見渡すと俺は祭壇のような上から、集まっている親族を見下ろすような状態になっている。
半年ほど前に俺と結婚したばかりの新妻の桂子、それに俺の両親、桂子の両親、そして俺の友人達……、そして、会社の上司、同僚達……。
よく見ると桂子は黒の喪服を着て号泣している。
「なんじゃこりゃ?!」ふと、反対側を見ると額縁《がくぶち》に入れられた写真が視線に入る。見慣れた顔・・・・・・、それは俺の少し若い頃の写真である。けっこう男前に写っいるので見惚れる。しかし……。
「これって、もしかして……」
「そうだよ、お前の葬式ダニよ』 俺の呟きに答えるようにその声が聞こえた。
その主は少女の姿をした死神こと『タマ』であった。その横には、それこそ死神の名にふさわしい髑髏の面を被り肩に大鎌を担いだ黒のローブ姿の男がいる。彼はタマのアシスタントなのだそうだ。
彼女達の姿は他の人間には見えていないようであった。
彼女と出会ったのは数日前の事であった。
「ああ、なんだか全てが、辛いなぁ・・・・・・」俺は何気にホームの上から茫然と二本のレールを見つめている。
「お前、死相が出てるダニよ」突然、小学生低学年位と思われる幼い感じの少女が声をかけて来た。通勤ラッシュのホームでいきなりそのような事を言われて、正直何が何だか理解できなかった。
「どうした?お前、迷子か・・・・・・」
「初対面でお前は無いダニよ。ところでお前、電車に飛び込むつもりだっただろう?」少女は可愛くウインクをしながら聞いてくる。
「な、なにを馬鹿な事を言っているんだ!大人を揶揄《からか》うなよ!」少し図星《ずぼし》を突かれてゾッとする。少女を振り切るように俺はその場から逃げる。
「いいか!なにがあっても死ぬでないぞ。いつでもワシが助けてやるダニよ!」
俺は半年ほど前に社内で知り合った桂子と熱愛の末結婚した。
彼女との夫婦仲も円満で毎日家に帰るのが楽しみであった。しかし、それに反比例するように、この一年ほど仕事がうまくいかない。
俺の仕事は投資用不動産売買の営業職である。
この会社が結構イケイケの会社であるのだが、順調に業績を上げている間は良かったのだが、数ヶ月ほど前にある地主と契約した不動産取引で大きな問題が発生してしまった。
建築を依頼した業者の建築偽装により確認が下りなくなってしまった。その事実が判明した時、すでに建築業者は雲隠れし、地主の支払った数億円が消えてしまった。
地主は会社と俺に損害賠償を請求してくるが、会社は全ての責任を俺に押し付けようとしている。連日の上司からの詰問が続く。まさに地獄であった。所謂、トカゲのしっぽ切のようなものであろう。
さきほどの少女に声を掛けられなければ、本当に電車に飛び込んでいたかもしれない。
「おはようございます・・・・・・・」
「おうおう、会社がお前のせいで大変な時に、当事者が社長出勤か!やっぱり大物は違うな」いきなりの上司のパンチに気持ちが萎えて泣きそうになる。その様子を見て、同僚達もひそひそと会話している。
「そうやって、呑気に出社してくるってことは解決策が思いついたってことだな、すぐに会議室へ来い!」今日も一日地獄の日々が始まる。正直いうと、今朝、ホームで飛び込まなかった事を後悔する程であった。
一日の業務が終わり家路につく。帰り際も同様に嫌味を言われたが、段々と受け流す術
が身に付きつつあった。
「ただいま・・・・・・」力なく家に帰る。
「お帰りなさい。朝頼んでおいた物買ってきてくれた?」俺の帰りを出迎える桂子が確認してくる。
「頼んでた物?何?」全く頭が回転しなかった。
「もう、いい加減にしてよ!また忘れて来たの?帰り道のスーパーで・・・・・」
「・・・・・・」
「ちょっと、聞いてる?本当に呑気君ね!」彼女のその言葉を聞いて、俺の頭の中に、昼間の地獄が蘇ってきた。
「あああああああああああああああああ」そう叫ぶと、持っていた鞄を玄関の床に叩きつけて俺は家を飛び出してしまった。
「ちょ、ちょっと!あなた!」後ろから恭子の声が聞こえたような気がしたが、俺は力の限り走り続けた。
しばらく走ると呼吸が乱れ、息が続かなくなる。両膝に手を突きながら大きく肩を揺らしながら息を整える。目の前を沢山の車が行き交う。一歩、二歩とゆっくりと足を進めていく。
「お前、また死相が出てるダニよ」聞き覚えのある声に振る返る。そこには、昼間出会った少女の姿があった。
「ワシが救ってやるから死ぬなって言ったダニよ」彼女は優しく微笑んだ。その途端、俺は両膝を地面について、その幼い体を抱きしめながら号泣した。
「おーよしよし」そう言いながら、少女は俺の頭を優しく撫でる。それは、まるで幼い頃に抱かれた母親の腕の中のように錯覚する。
「そうか、そんな事があったダニか・・・・・・・。そんなに嫌なら会社を辞めればいいダニよ」相変わらず彼女は俺の頭を撫でている。
「そ、そんな単純な問題じゃないんだ・・・・・・・、出来たら逃げ出したい・・・・・・くらいだけど・・・・・・」俺のその言葉を聞いて、彼女は手を止める。
「そうか、ワシがその苦痛から逃がしてやるダニよ」そう言うと、俺の額に右の人差し指、自分の額に左の人差し指を当てた。なぜか、俺の頭の中に彼女の思念が流れてくるような気がした。
「よし!」そう言うと彼女は空を見て目を閉じる。それを唖然として見ていると彼女の体が光に包まれた。あまりの輝きに俺は目を強く瞑る。
「目を開けてみるダニ」そう言われてゆっくりと目を開く。その光景に俺は驚愕する。目の前には先ほどの少女はおらず、代わりに美しい女が薄い布に包まれてその身を晒しいている。白い肌、二つの大きな胸、くびれた腰に・・・・・・・、まさに完璧としか表現することの出来ない美女であった。
「き、君は・・・・・・?」
「私はタマ。さっきまで貴方と話していた少女。貴方の頭を読んで貴方の理想の女に変身したのよ。さあ、私を抱いて・・・・・・・」そう言うと彼女は薄い布をはぎ取った。
「えっ、いや・・・・・・・えっ!」躊躇する俺の唇を彼女が奪う。そのまま意識が消えていき、あとは彼女にされるがままになってしまった。
「接続完了ダニ!ナンバー1001よ、準備するダニよ!」突然聞きなれたタマの声がし、薄っすらと目を開けるそこには、黒装束の男の姿があった。
「お前達は、一体・・・・・・・」薄れゆく意識の中で俺は聞いた。
「ああ、ワシは『Cー2カムイ』ダニ!」
「シニガミ……?」
「思い出した!タマ!お前は一体?」そこで改めて気が付く。俺の体が無い!いや俺の体はそこに寝転がっている。それでは俺は・・・・・・・。
「あまりにも苦しそうだったから、体から魂を抜いてやったダニよ!自殺でもされて、体に傷がついたら使い物にならないからな」そう言うとVサインをしながら彼女は微笑む。
「魂を抜いたってどういう事なんだ?」理解出来なくて俺は聞いた。
「ワシは未来からやってきたダニよ。未来人はなぜか体が無くなって、魂だけ浮遊している状態になったダニよ。それで、最後に残った科学者に、もう一度歴史をやり直すように命令されて来たダニ。ナンバー1001、今度はうまくやるダニ!」彼女がそう言うと、黒装束の男の仮面が開いて、そこから白い浮遊体が一つ飛び出した。男の体の中は空洞で、その中には同じような白い浮遊体が犇《ひし》めきあっている様子であった。
「わーい!やっと体が手に入る!」白い球体が、寝ている俺の体に入り込んだ。その瞬間寝ていたはずの俺の体、そう死体が目を覚ました。そして彼はむくっと立ち上がる。
「きゃー!!!!!」葬儀に来ていた親族達から悲鳴が聞こえる。葬式に死体が生き返ったのだから、それは驚いたことだろう。
「普通は、ワシと接続してすぐに魂を抜くダニが、お前は失神してしまったから、こんな葬式までされて、あわや火葬されてしまうとこだったダニよ!」まるで俺が悪いかのようにタマは怒る。
「何の目的があってこんな事をするんだ!」危なく毒気を抜かれそうになったので、俺は反撃に転じようとする。
「ワシは、未来人が作った肉体と魂を引き離す為の道具 『C-2カムイ』ダニよ。お前みたいに死にたがって肉体がら魂を剥がしやすくなっている人間を見つけて、分離させるのが仕事ダニよ」なぜか、彼女は舌を出してテヘペロのような仕草をした。
「ふざけるな!俺を助けるって騙したんだな!」
「騙してないダニよ。お前はもう、あの苦しみから解放されたダニ。会社も、もう関係ないダニよ。良かったダニ!最後のご褒美にお前の理想の女も抱けたしな!」どうやら、俺の頭に手を当てていたのは、思考を読んでいたようであった。
ふと、俺の体に目をやると、その体にわんわん泣きながら、桂子がしがみついている。そして、なにやら俺の顔をした男はイヤらしい笑いを浮かべていた。
俺の怒りは頂点に達する。
「も、元に戻せ!俺の体を返せ!」
「無理ダニ。そういう命令は受けて無いダニよ」
「じゃあ、俺はどうなるんだ?!」
「死ぬことはないから、未来永劫その姿で生きるダニよ。不老不死もいいダニね」その言葉を聞いて、俺の体を確認すると、先ほど黒装束の男の中から出てきた白い浮遊体と同じような物になっていた。
「な、なんだこれは・・・・・・」その瞬間、俺の頭の中をある考えが過った。
「お前も、魂だけになったダニよ。これから、この魂達の体を探さないとだめダニから、失礼するダニよ」そう言うと、タマと黒装束の男は徐々に姿を消していった。
「ちょっと待て!未来人達が、魂だけになった原因って・・・・・・・お前!?まさか!」その俺の言葉に答える事無く彼女達は姿を消した。
顔に被せられているその布を取ろうとするが上手く手で掴むことが出来ない。仕方ないので起き上がることにする。
「ああ、見えるようになった……」と言いながら周りを見渡すと俺は祭壇のような上から、集まっている親族を見下ろすような状態になっている。
半年ほど前に俺と結婚したばかりの新妻の桂子、それに俺の両親、桂子の両親、そして俺の友人達……、そして、会社の上司、同僚達……。
よく見ると桂子は黒の喪服を着て号泣している。
「なんじゃこりゃ?!」ふと、反対側を見ると額縁《がくぶち》に入れられた写真が視線に入る。見慣れた顔・・・・・・、それは俺の少し若い頃の写真である。けっこう男前に写っいるので見惚れる。しかし……。
「これって、もしかして……」
「そうだよ、お前の葬式ダニよ』 俺の呟きに答えるようにその声が聞こえた。
その主は少女の姿をした死神こと『タマ』であった。その横には、それこそ死神の名にふさわしい髑髏の面を被り肩に大鎌を担いだ黒のローブ姿の男がいる。彼はタマのアシスタントなのだそうだ。
彼女達の姿は他の人間には見えていないようであった。
彼女と出会ったのは数日前の事であった。
「ああ、なんだか全てが、辛いなぁ・・・・・・」俺は何気にホームの上から茫然と二本のレールを見つめている。
「お前、死相が出てるダニよ」突然、小学生低学年位と思われる幼い感じの少女が声をかけて来た。通勤ラッシュのホームでいきなりそのような事を言われて、正直何が何だか理解できなかった。
「どうした?お前、迷子か・・・・・・」
「初対面でお前は無いダニよ。ところでお前、電車に飛び込むつもりだっただろう?」少女は可愛くウインクをしながら聞いてくる。
「な、なにを馬鹿な事を言っているんだ!大人を揶揄《からか》うなよ!」少し図星《ずぼし》を突かれてゾッとする。少女を振り切るように俺はその場から逃げる。
「いいか!なにがあっても死ぬでないぞ。いつでもワシが助けてやるダニよ!」
俺は半年ほど前に社内で知り合った桂子と熱愛の末結婚した。
彼女との夫婦仲も円満で毎日家に帰るのが楽しみであった。しかし、それに反比例するように、この一年ほど仕事がうまくいかない。
俺の仕事は投資用不動産売買の営業職である。
この会社が結構イケイケの会社であるのだが、順調に業績を上げている間は良かったのだが、数ヶ月ほど前にある地主と契約した不動産取引で大きな問題が発生してしまった。
建築を依頼した業者の建築偽装により確認が下りなくなってしまった。その事実が判明した時、すでに建築業者は雲隠れし、地主の支払った数億円が消えてしまった。
地主は会社と俺に損害賠償を請求してくるが、会社は全ての責任を俺に押し付けようとしている。連日の上司からの詰問が続く。まさに地獄であった。所謂、トカゲのしっぽ切のようなものであろう。
さきほどの少女に声を掛けられなければ、本当に電車に飛び込んでいたかもしれない。
「おはようございます・・・・・・・」
「おうおう、会社がお前のせいで大変な時に、当事者が社長出勤か!やっぱり大物は違うな」いきなりの上司のパンチに気持ちが萎えて泣きそうになる。その様子を見て、同僚達もひそひそと会話している。
「そうやって、呑気に出社してくるってことは解決策が思いついたってことだな、すぐに会議室へ来い!」今日も一日地獄の日々が始まる。正直いうと、今朝、ホームで飛び込まなかった事を後悔する程であった。
一日の業務が終わり家路につく。帰り際も同様に嫌味を言われたが、段々と受け流す術
が身に付きつつあった。
「ただいま・・・・・・」力なく家に帰る。
「お帰りなさい。朝頼んでおいた物買ってきてくれた?」俺の帰りを出迎える桂子が確認してくる。
「頼んでた物?何?」全く頭が回転しなかった。
「もう、いい加減にしてよ!また忘れて来たの?帰り道のスーパーで・・・・・」
「・・・・・・」
「ちょっと、聞いてる?本当に呑気君ね!」彼女のその言葉を聞いて、俺の頭の中に、昼間の地獄が蘇ってきた。
「あああああああああああああああああ」そう叫ぶと、持っていた鞄を玄関の床に叩きつけて俺は家を飛び出してしまった。
「ちょ、ちょっと!あなた!」後ろから恭子の声が聞こえたような気がしたが、俺は力の限り走り続けた。
しばらく走ると呼吸が乱れ、息が続かなくなる。両膝に手を突きながら大きく肩を揺らしながら息を整える。目の前を沢山の車が行き交う。一歩、二歩とゆっくりと足を進めていく。
「お前、また死相が出てるダニよ」聞き覚えのある声に振る返る。そこには、昼間出会った少女の姿があった。
「ワシが救ってやるから死ぬなって言ったダニよ」彼女は優しく微笑んだ。その途端、俺は両膝を地面について、その幼い体を抱きしめながら号泣した。
「おーよしよし」そう言いながら、少女は俺の頭を優しく撫でる。それは、まるで幼い頃に抱かれた母親の腕の中のように錯覚する。
「そうか、そんな事があったダニか・・・・・・・。そんなに嫌なら会社を辞めればいいダニよ」相変わらず彼女は俺の頭を撫でている。
「そ、そんな単純な問題じゃないんだ・・・・・・・、出来たら逃げ出したい・・・・・・くらいだけど・・・・・・」俺のその言葉を聞いて、彼女は手を止める。
「そうか、ワシがその苦痛から逃がしてやるダニよ」そう言うと、俺の額に右の人差し指、自分の額に左の人差し指を当てた。なぜか、俺の頭の中に彼女の思念が流れてくるような気がした。
「よし!」そう言うと彼女は空を見て目を閉じる。それを唖然として見ていると彼女の体が光に包まれた。あまりの輝きに俺は目を強く瞑る。
「目を開けてみるダニ」そう言われてゆっくりと目を開く。その光景に俺は驚愕する。目の前には先ほどの少女はおらず、代わりに美しい女が薄い布に包まれてその身を晒しいている。白い肌、二つの大きな胸、くびれた腰に・・・・・・・、まさに完璧としか表現することの出来ない美女であった。
「き、君は・・・・・・?」
「私はタマ。さっきまで貴方と話していた少女。貴方の頭を読んで貴方の理想の女に変身したのよ。さあ、私を抱いて・・・・・・・」そう言うと彼女は薄い布をはぎ取った。
「えっ、いや・・・・・・・えっ!」躊躇する俺の唇を彼女が奪う。そのまま意識が消えていき、あとは彼女にされるがままになってしまった。
「接続完了ダニ!ナンバー1001よ、準備するダニよ!」突然聞きなれたタマの声がし、薄っすらと目を開けるそこには、黒装束の男の姿があった。
「お前達は、一体・・・・・・・」薄れゆく意識の中で俺は聞いた。
「ああ、ワシは『Cー2カムイ』ダニ!」
「シニガミ……?」
「思い出した!タマ!お前は一体?」そこで改めて気が付く。俺の体が無い!いや俺の体はそこに寝転がっている。それでは俺は・・・・・・・。
「あまりにも苦しそうだったから、体から魂を抜いてやったダニよ!自殺でもされて、体に傷がついたら使い物にならないからな」そう言うとVサインをしながら彼女は微笑む。
「魂を抜いたってどういう事なんだ?」理解出来なくて俺は聞いた。
「ワシは未来からやってきたダニよ。未来人はなぜか体が無くなって、魂だけ浮遊している状態になったダニよ。それで、最後に残った科学者に、もう一度歴史をやり直すように命令されて来たダニ。ナンバー1001、今度はうまくやるダニ!」彼女がそう言うと、黒装束の男の仮面が開いて、そこから白い浮遊体が一つ飛び出した。男の体の中は空洞で、その中には同じような白い浮遊体が犇《ひし》めきあっている様子であった。
「わーい!やっと体が手に入る!」白い球体が、寝ている俺の体に入り込んだ。その瞬間寝ていたはずの俺の体、そう死体が目を覚ました。そして彼はむくっと立ち上がる。
「きゃー!!!!!」葬儀に来ていた親族達から悲鳴が聞こえる。葬式に死体が生き返ったのだから、それは驚いたことだろう。
「普通は、ワシと接続してすぐに魂を抜くダニが、お前は失神してしまったから、こんな葬式までされて、あわや火葬されてしまうとこだったダニよ!」まるで俺が悪いかのようにタマは怒る。
「何の目的があってこんな事をするんだ!」危なく毒気を抜かれそうになったので、俺は反撃に転じようとする。
「ワシは、未来人が作った肉体と魂を引き離す為の道具 『C-2カムイ』ダニよ。お前みたいに死にたがって肉体がら魂を剥がしやすくなっている人間を見つけて、分離させるのが仕事ダニよ」なぜか、彼女は舌を出してテヘペロのような仕草をした。
「ふざけるな!俺を助けるって騙したんだな!」
「騙してないダニよ。お前はもう、あの苦しみから解放されたダニ。会社も、もう関係ないダニよ。良かったダニ!最後のご褒美にお前の理想の女も抱けたしな!」どうやら、俺の頭に手を当てていたのは、思考を読んでいたようであった。
ふと、俺の体に目をやると、その体にわんわん泣きながら、桂子がしがみついている。そして、なにやら俺の顔をした男はイヤらしい笑いを浮かべていた。
俺の怒りは頂点に達する。
「も、元に戻せ!俺の体を返せ!」
「無理ダニ。そういう命令は受けて無いダニよ」
「じゃあ、俺はどうなるんだ?!」
「死ぬことはないから、未来永劫その姿で生きるダニよ。不老不死もいいダニね」その言葉を聞いて、俺の体を確認すると、先ほど黒装束の男の中から出てきた白い浮遊体と同じような物になっていた。
「な、なんだこれは・・・・・・」その瞬間、俺の頭の中をある考えが過った。
「お前も、魂だけになったダニよ。これから、この魂達の体を探さないとだめダニから、失礼するダニよ」そう言うと、タマと黒装束の男は徐々に姿を消していった。
「ちょっと待て!未来人達が、魂だけになった原因って・・・・・・・お前!?まさか!」その俺の言葉に答える事無く彼女達は姿を消した。
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