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07-08 八つ当たり(一)**
しおりを挟むヘニルの手は武器を振るう者の手だ、そうセーリスは思った。皮は厚くところどころタコのようなものができている。傷跡のようなものが無いのは、回復力が常人の比ではない神族の特性故か。
ふにふにと浮ついた気持ちよさの余韻のまま彼の手に触れていると、射精を終えたはずの中のそれはじわりと硬さを取り戻していく。何度も精を吐き出しそれに塗れた股座が、それでも二人の高い体温で熱を持ち続けているのを感じる。
「……姫様」
「んぅ」
「それ、楽しいですか」
ぎゅうっと後ろから強く抱きしめられる。セーリスが触っていた手が彼女の手を包み、同じように柔らかな傷一つないそれを弄ぶ。
「大きい手だなぁ、って……」
「もしかしてもう眠いんですか」
そう言いながらヘニルは膝上に座っているセーリスの耳に息を吹きかける。耳が弱い彼女はすぐにそういった刺激を嫌がるのだが、うー、と何とも言えない反応が返ってくる。
「この程度で眠くなるなんておこちゃまですねぇ」
「んー……」
「ちょっと姫様ぁ、寝ないでください、まだ俺の気は済んでないですよ」
もたれ掛かるようにしてセーリスはヘニルの腕の中で目を閉じる。それを見てむっとしたように眉を寄せた彼は両手で彼女の胸に触れる。ささやかなその膨らみをじっくりと執拗に揉みしだき、情事を経て硬く勃ち上がった乳頭を絶えず指先で捏ねくり回す。
「俺がなんでこんなしつこくしてるか、本当に分からないんですか」
ぺろりと舌で耳の凹凸を舐めて、柔らかな耳朶を唇で食む。そうすれば彼女の口から甘い吐息が漏れ、きゅうきゅうと中に入り込んだままの彼の男根を締め付け始める。
「これは……超鈍感な姫様への、八つ当たり、なんですから」
「ん……んっ、んや……っ」
「結構ちゃんとアピールしてるのに……なんで、分からないんですかね」
胸への愛撫は止めず、ゆっくりと腰を揺らし始め、ヘニルは半分眠っているセーリスを再び抱き始める。寝ぼけているのをいいことに、その首筋を舐め回し、ちゅうっとそこに吸い付いて跡をつけていく。それはほとんど、日中あっさりと自分の好意を否定したセーリスへの仕返しだった。
ぬちぬちと音を立てながら内壁を細かく刺激し、腕の中で喘ぎ続けるセーリスの頬に口付ける。はっきりと良がってはいるというのに、相当眠たいのか彼女は目を覚まそうとしない。その無防備さに加虐心が煽られ、彼は艶かしく舌舐めずりをした。
「姫様……そんなに無防備だと、好き勝手しますよ」
しっかりと彼女の身体を抱え、興奮した自身を慰めるように抽挿を激しくする。その小さな口から溢れる艶かしい嬌声により一層屹立は熱を増して、彼は困ったように眉を下げる。
「ぁ、あぁ、んっ、あっ、あぅ」
「んん……、何ですかそのエロい声、ほんと……っ、やめてくださいよ」
快楽に震える足を開かせ、深々と剛直が突き刺さるそこ、その上にある芯を指で弄る。甘い快楽に悶えるように中がうねって、彼のものをねっとりと激しく愛撫する。堪らずにヘニルはがつがつと最奥まで侵し尽くし、目を閉じたまま啼き続ける彼女の耳朶を甘く噛む。
「はぁ、あっ、姫様……っ、こうして、抱かせてくれるのは……ほんとに、俺に言うこと聞かせたいだけ、なんですか……」
「んーっ、ぁあ、あんっ」
「俺とするの、好きって、それっぽいこと言ってましたよね、もう身体も……こんなに俺のに馴染んで」
彼女の顔を上げさせて喘ぎ声の漏れる口を塞ぐ。条件反射でか伸ばされた舌を絡ませ、溢れ出る想いのままにそれにしゃぶりつく。本当に自分との行為にも慣れてきたものだと、そう思えば自然と抱きしめる腕にも力が入り、腰遣いにも熱が入っていく。
「んん、ぁ……姫様っ、は、……くっ、出る……っ」
「んやぁっ」
びくびくと身体を震わせるセーリスを抑え込み、ぴったりと身体を触れ合わせたまま迫り上がった欲を吐き出す。ぐい、っと何度か最奥に突き立てたそれをもっと押し込むように腰を揺らして、その度に吐精の快楽と共に溢れ出た愛おしさのまま何度もキスを交わした。
「はぁ……っ、は……、んん……」
そっとセーリスをベッドに横にするように下ろしてやり、名残惜しそうにしながらもまだ微かに震える中から自身を引き抜く。
穏やかな寝息を立てるセーリスをしばらくじっと目にした後、時計に視線を向ければ時刻は既に深夜の三時を回っている。それを見たヘニルは思わず目を擦って二度見する。
行為を始めたのは日付が変わるよりも前だ。確かにセーリスに強請られ早朝までしていたことはあったが、あれは特殊なものだ。
思えばあの件以来、自制するということを忘れているような気がした。その気になれば自分の性欲など余裕でセーリスを抱き潰せるレベルのものなのだから、加減しなければいけないのだが。
「……そんなにしてたのか、そりゃあ、すいませんね姫様……って寝てるんだけど」
八つ当たりと称した愛情表現に夢中になり、セーリスが寝落ちするまで抱いてしまうとは思わなかった。
といってもこのまま放置して帰るわけにもいかない。またもやセーリスのお付きの侍女に口煩く注意されることになる。証拠を隠す自分の身にもなれと。いや、全く以ってその通りだと思うが。
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