鈍感王女は狂犬騎士を従わせる

りりっと

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06-06 実験協力代(一)*

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「侍女さんは相変わらず厳しいですねぇ」
「当然でしょ。こんな爛れた関係、終わらせられるならさっさと終わらせた方がいいもの」


 さも当然だと言いたげなセーリスの言葉に、彼は目を伏せる。そのまま軽くセーリスを抱き上げると、ベッドに腰をかけ自分の膝の上に座らせる。深く横にした身体を抱え込み、こつんと額を合わせる。


「嫌ですか、俺に抱かれるの」


 真剣な表情で問われ、彼女は肩を竦める。


「前ほど抵抗感は無くなってきた。割り切れるようになったのかな、あんまりよくないことだけど」
「割り切るって……」


 不機嫌そうにヘニルは眉根を寄せる。


「あーあ、過去に戻りてぇなー」
「やり直したいことでもあるの?」
「ありますよ大アリですよ。今思えばもっとちゃんとしとけば良かったなって」


 愛でるように頬を撫でてもセーリスは不思議そうに首を傾げるばかり。


「そしたら……少しは」


 寂しそうな目で見つめてくるヘニルに彼女は不思議そうに目を瞬かせる。最近はこんな風に憂鬱そうな姿を見せることが増えた気がする。

 そこで頭に浮かぶのはカーランドの言葉だ。


 ――姫様が思う以上に、人と共に生きる神族の苦悩は大きい、ということですよ


 思えば考えもしなかったなと、そう反省しセーリスは彼の頭を撫でてやる。


「何か困ったことがあるなら……っていっても、私に解決できる気はしないけど、話だけなら聞くわよ」
「いや……ここまで来るともはや芸術の域ですね。涙より笑いが出てきそうです」
「? 何の話?」


 別に、と言ってヘニルはセーリスの頭に手を伸ばす。ふわふわと柔らかな猫の毛の手触りに、暗い表情を消して彼は笑みを浮かべる。


「いやぁ、いい手触りですねぇ」
「あの、あんま、触らないで欲しいんだけど」
「ねぇ姫様、尻尾も触らせてくださいよぉ!」


 見事に尾てい骨から生えた猫の尾は、長いスカートに隠れて見えない。さわさわと臀部を弄るヘニルの手を叩き、セーリスはため息をつく。


「ほんとに治るのかなぁ、これ」
「なんとかなりますって。俺は別にこのままでもいいと思いますよぉ……?」
「冗談じゃないわ。弱点が増えた気分よ」
「ほうほう」


 音を立ててヘニルはセーリスの首筋に口付ける。するりとスカートをたくし上げ手を突っ込むと、その中に隠れていた細長いそれを優しく掴む。そして毛の流れに沿うようにするすると撫で付ける。


「んひゃぅ」
「んっ……、ガン勃ちしました、もう始めましょう姫様」
「あい、変わらずあんたは、……もう、尻尾触らないで……!」


 剥かれるように服を脱がされ、薄い肌着のみとなる。短いスカート丈から覗く膝ほどまでの長さの尾を見て、ヘニルは怪しく笑う。


「あのエロガキ、努力の方向性間違ってんだろ」
「本当はあんたに向けて撃ってたらしいけどね」
「俺に魔術は効きませんから。にしても……」


 セーリスをベッドの上に下ろし、ヘニルはその姿を舐め回すように見つめる。
 ぴくぴくと無意識に動かしてしまうらしい耳、形の良い臀部から伸びた尾。いつものように恥ずかしそうに見上げる視線が更に劣情を煽ってくる。


「あぁ、また新しい性癖が増えそうです……」
「簡単には満たせなさそうな性癖ね」
「いやぁ、あの天才魔術師にかかれば一発でしょう」
「もう二度とこんな姿になるのはごめんだからね!」


 セーリスの上に覆いかぶさり、ヘニルはすぐに彼女の胸元に手を這わす。肌着と下着を隔てているからか感触は薄いものの、視覚的な刺激が強いからかヘニルは満足げだった。


「子猫ちゃんらしく可愛く鳴いてくださいね、姫様」
「なんか、妙に元気ね」
「はい、いつも以上にヤる気十分ですよぉ」


 肩紐をずらし、隙間から手を突っ込んで下着を外し、器用に脱がしていく。下も同様にはぎ取れば、肌着一枚となったその姿は一気に扇情的なものになる。


「いいですよ姫様、やらしい格好してる感じになってきました……」
「この変態め……」
「男なんてみんなそんなもんですよ」


 手早く自分の上衣のみを脱ぎ、ヘニルは彼女の股座に触れる。まだ前戯らしいものはしていないというのにじんわりと濡れていて、彼はニヤリと怪しく笑う。


「もう濡れてますねぇ、姫様。俺、まだ触ってないんですけど」
「う、うそ」
「何回もヤってる内に、俺と夜一緒に居るってだけで濡らしちまう淫乱になっちゃったとか? 見かけによらずスケベですねぇ」


 指先が中へと埋まってそのままずぶずぶと沈んでいく。確かにそこはひどく滑っていて、セーリスは顔を真っ赤にする。

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