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06-02 一方通行*
しおりを挟むそこで彼女の片腕を捉えていた腕に何かが巻きつく。同時に結構な力で右肩を押され、そのままぐるりと視界が反転した。広いベッドのおかげで床に落ちなかったのは幸いだったが、今現在局部を露出したまま仰向けに転がされるという無様を晒している。
「は!?」
もう片方の手も掴まれた、と思えばまた細く冷たいものが巻かれる。視線を上に向ければベルトのようなもので拘束されていた。
「な、なにこれ、トコエ……!?」
「抵抗されるのも面倒だから」
「それは僕の台詞だよ……」
あと少しというところだったのに、まさか逆に拘束されてしまうとは。ルザは苦々しげに眉を寄せた。
「懲りないやつ。もう毎日出なくなるまでするか」
「ま、まいにち……!!」
毎夜寝る前に無理やりトコエに組み敷かれ、限界まで射精させられる。そんな不埒な想像をしたルザは、萎えかけていたそこが元気にそそり立つ。
「…………」
その様を見ていたトコエは考え込むように腕を組む。そしていつものように指先で優しくそれをなぞり、掌を合わせて柔く扱き始める。ルザはそうしたもどかしい刺激を受けるのが堪らなく興奮し、好きなのだ。
「……時間がかかる」
「え?」
ぽつりと彼女は呟くと僅かに身を屈める。真上を向いた怒張に顔を近づけ、小さな口から赤い舌を覗かせる。
そして指でゆるく刺激しながら、裏筋をゆっくりと時間をかけて舐め上げる。
「は、あぁ……っ」
ゾクゾクと背中を駆け巡る刺激にルザは声を漏らす。
「こっちの方が早そうだ」
笑みを浮かべるでもなく、無表情でトコエはそう呟くと、ルザの反応を見ながら所構わずそれを舐め、唇で食んだ。手は休むことなく先端やら根本と下の膨らみを弄っている。
ルザが彼女にそうするように、彼女も同じことをルザにするつもりなのだろう。けれどトコエはルザほど我慢強くはなかった。むっと眉を寄せ、唐突にぎゅっとそれを手で握った。
「うっ」
「どうすれば早く出るか、自分が一番分かってるだろう?」
だから自分で言え、と彼女は告げる。なるほど、自分で相手の弱い場所を探すよりかはたしかにそっちの方が早いだろう。
しかしそれは、言われたことをそのまましてくれる、ということでもあって。
「トコエの中、入れてくれたら、すぐ出るよ」
「このまま放置するぞ」
「そんなに僕とセックスするの嫌なの……?」
悲壮な色を滲ませたルザの問いに彼女は目を細める。その口から出た言葉はある意味で彼の予想を裏切るものだった。
「身体は好いたやつに差し出すんだろう。それくらい知ってる」
「っ、僕のこと愛してるって、そう言ってくれたのに」
「? いつの話だ、それは」
薄々と彼女の記憶が欠けているのは分かっていた。けれどもいざはっきりと事実を突きつけられるのはなかなかに辛いものがあった。
もしかして進化の代償は寿命そのものだけではなく、今まで生きてきたという記録、つまり記憶にまで影響を及ぼしてしまうというのか。
「いいから早く言え」
気持ちが沈みそうになるのを堪える。快楽に溺れて誤魔化すのは得意だった。
「……口で、咥えて。歯は、当てないように」
ゆっくりと敏感な自身が熱い彼女の口内に飲み込まれていく。つうっと裏筋をなぞる舌の感触も、触れる柔らかい唇も、あれほど恋焦がれたものなのだ。
「そのまま吸ったり、んぅ、舐めたり、するんだよ……あっ」
舌が狭くなった口内で不器用にも動く。けれどそれだけでも身体は悦んで、このまま彼女の喉の奥まで突っ込んでしまいたくなる。
「手と同じ、でっ、浅いところから、ふかく咥えて……っ、そう、上手だよ……」
小さな水音を立てて、彼女は頭を揺らしてそれを扱く。幸せで満ち足りる光景のはずなのに、頭の中を空っぽにして快楽に溺れるのは得意だったはずなのに、妙に胸は切なくて、苦しくて、じわりと涙が溢れた。
身体を差し出すのは好きな人だけ。でも、自分にはフェラだってしてくれる。その歪さがよく分からなかった。
自分のことを忘れてしまったから?それとも、離れていた間に別の好きな人ができたのか?
今更になってこの行為に何の意味も無いことに、気づいてしまった。
「トコエっ、僕は……僕はずっと、うっ、君のこと、だけ……っ、君だけを想って……は、あぁっ」
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