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03-02 未来なき夢*
しおりを挟む「もう一度、見せて」
彼女はまたスカートの裾を引っ張る。それなりに焦らしたはずなのだが、それでも戻った色の部分は一割にも満たなさそうだ。
「思ったより効率悪いなぁ。やっぱやることやらないと……」
やること、という言葉に彼女は眉を寄せる。スカートの裾を下ろすと、くるりと彼に背を向ける。ゴソゴソと何をしているのかと思いきや、ぽいっと後ろ手に何かが放り投げられる。
それはルザの唾液と彼女の愛液で汚れた下着だ。
「……新しいの、持ってきて」
ようやく自分に投げかけられた明確な言葉に、彼は満面の笑みを浮かべた。
「うん……トコエはもうおやすみ。これはちゃんと、洗濯しておくから」
立ち上がったところでようやく彼は自分の腕が拘束されていたのを思い出す。
「あ、その前にこれ、外してくれるかな」
面倒臭いといった顔をしながらもトコエは巻きつけた服を外してやる。ルザは用意してあった新しい下着を差し出すと、横になった彼女に布団をかけてやる。
「おやすみ、トコエ」
ほんの少しだけ警戒心を覗かせながらも、トコエは目を閉じる。
小さく息をついてルザは浴室へ向かう。タイを外しシャツを脱いで、正直気が引けたが恐る恐るベルトを緩めてスラックスの前を広げた。
「はぁ……」
面倒なほど汚れた下着とスラックスにため息をつき、彼はそれを脱ぎ捨てた。洗うのが面倒だと、やはりトコエに許しを得て普通に自慰をすればよかったと、そう思って。
「……一つ洗うのも二つ洗うのも同じ、か」
トコエが放り投げた下着を手にして彼は呟く。
浴室に入り込んで扉を完全に閉める。シャワーを出しっぱなしにした状態で、外気でひんやりと冷えた彼女の下着を半勃ちとなった自身にすり寄せる。
目を閉じて、先程の行為を思い出す。甘い彼女の声も、はっきりと感じた熱も。
「トコエ、会いたかった……」
慣れた手つきで自身に触れる。今まで何度も彼女を想って自身を慰めたものだが、これほどまでに気持ちの良いものはなかっただろう。それほどまでに満たされていた。
舌で何度も感じた彼女の中に、これを収めてしまいたい。きっと堪らないほど気持ち良いのだろう。自分の身体を好き勝手扱った男たちのように、あの華奢な身体を貪って。
「ううん、全部、ぜんぶ忘れさせてくれるよね、んっ、トコエの中、熱くて、キツくて、僕を離さなくて……」
狭いそこにねじ込めば、甘い声で彼女は快楽に震えるのだろう。ぴったりと身体を重ねて抱きしめあって、何度もキスをしてゆっくりと腰を揺らし始める。
動くたびに絡みつくように中が締まって、自身を恋しそうにする。最初は優しく、彼女の良い場所を探さないと。
「はぁあ……きもちい?トコエ、……ここが、いいんだね……」
自身を扱く手を強めて、彼女の下着に鈴口を押し当てて指でなぞるように刺激する。これが彼女の大事な場所を隠していて、愛液で濡れて。もはやこれは彼にとって彼女と交わる行為と同義と言えた。
「はぁっ、トコエっ、いいよ、もっと……もっとしようっ、一緒に、いっぱい気持ち良くなって、は……っ、ずっと、ずっと一緒に……!」
抽挿の動きを速めて、彼女が甘く啼く奥を何度も激しく突く。彼女の中も負けじと彼の昂りに絡みつき、早く精を吐き出させようと扱くように蠢くのだ。おかしくなってしまいそうなほど気持ち良くて、名前を呼び合いながらそれでも動きを緩めない。まるで一つの生き物になった気分だった。
「トコエっ、だいすき、んぁ、すきっ、好き……!あっ、トコエ、また僕のここ、んんっ、よしよし、してねっ、いっぱいだすから、トコエ、とこえっ……!」
彼女が達したのと同時に抑えていた射精欲を解き放つ。避妊具などつけていない生まれたままの姿の交わりで、彼女の中に自身の子種を吐き出した。
「……いや、兵士は子供、作れないんだったかな」
一気に冷めた思考で彼はそう呟いた。
自身も含め、旧式新型に関わらず、適性を持った人間は生殖機能が失われる。というより、生殖機能の代償が侵略者と戦う力なのだそうだ。
「欲しかったなぁ、トコエとの子供……」
気兼ねなく性行為ができるという見方もできるだろうが、同時にそれは人類の滅亡を意味する。
適正持ちが増えればより人口は増えなくなる。拡大する戦線の維持も困難になる。
「この先に未来は無いよね……」
無論自分にも。
大きくため息をついて、彼は柔くなった自身に目を向ける。
べったりと白濁で汚れた彼女の下着を見て、不思議と冷めた心にまた熱が灯る。そうだ、諦観など不要だ。彼の生きる理由はまだ残っているのだから。
「世界も、人類も、全部どうでもいいよ……僕にはトコエさえ居れば」
また硬さを取り戻した屹立を優しく撫でる。かつて彼女が初めてそうしてくれたように、焦らしながら、それでも確実に高められていく。
「これから、ずっと一緒……死ぬ時も、その後も、ずっと……」
まだまだ汚し足りない。数多の欲望に塗れた彼にとって、それが普通では無い感情だとは知らなかった。
「愛してるよ、トコエ……」
03 針の上にも五年 了
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