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05 攻勢に出る
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「イメリ殿、殿下になんたる無礼を」
視線をあげれば、すぐ側に立っていたのはクラクスだった。なかなか帰ってこないイメリを探しに来てしまったのだろう。
「げっ、クラクス……」
「まだ仕事は終わっていないというのに……申し訳ありません殿下、イメリ殿には片付けなければいけない書類が山積みですので」
「やだー、書類仕事もうやだー」
「文句を言わない」
一喝を入れられた後、すぐにイメリはクラクスに脇に抱き抱えられてしまう。抵抗しようにも地に足がついていないと踏ん張ることもできず、彼女はだらんと脱力した。
「ごめんねぇ、ディレン」
「いいえ、気にしないでください」
少しだけ残念そうにしながら、ディレンはそう返してくれる。クラクスはそんな彼に一礼すると、そのままイメリを運搬していく。
「先生、またの機会に!」
「はいはーい」
ここまで食い下がってくるとは、頼み事というのはそれほど重大なことなんだろう。そんなことを考えながら、勝手に通り過ぎていく景色が見慣れたものへ変わっていくのを彼女は眺めた。
執務室まで戻ってくると、ようやく地面に降ろしてもらえる。机に積まれている書類を見たイメリがげっそりしていると、彼女はガチャリと鍵が閉まる音に気付いた。
「おいおいクラクス~、仕事が終わるまで帰さないつもりかい? 今までは多少サボっても文句言わなかったのに、なんで今日に限って」
「イメリ殿」
目の前に立ったクラクスは、何やら恐ろしい形相で彼女を睨みつけている。一体何事か、と思いながらその気迫に押された彼女はそろそろと後退りした。
「なん、だ、どうしたどうした、そんな顔して!」
「一つお聞きします。殿下のことなんですが」
後ろに逃げれば同じ分だけクラクスは距離を詰めてくる。そのまま壁に行き当たった彼女を逃さないよう、彼は壁に手をついて行く手を阻んだ。
「まさか貴女、殿下にも私にしているようなこと、されていたんじゃありませんよね」
「はぇ……?」
「答えてください」
私にしているようなこととは。そう頭を悩ませたイメリはすぐに思い至る。つまり、ディレンの股間も足で弄ったりしてたのかと聞いているのだ。
「いやいや、王子様相手にそんなことしないよ。ディレンには剣と生きる術以外教えてない」
「本当ですか」
「本当だって。まぁ、ディレンもいい反応してくれると思うけど、あの頃のわたしはそんな発想なかったか、ら、な……」
ディレンにイタズラをする様を想像して微笑んでいたイメリは、再び鋭いクラクスの視線に射抜かれて口を閉じた。王子相手にそんな不埒な妄想をするなど、真面目な彼であれば絶対に許してくれないだろう。
「いやいや、冗談だよ冗談。あははは」
「…………」
「ほんとに冗談! 何だったら今後君への悪戯だって改めるから!」
早口でそう捲し立てれば、クラクスは大きくため息をつく。これは許してくれたっぽい、そう思ったイメリはぱっと笑みを浮かべた。
だがしかし。
「イメリ殿」
「は、い?」
未だ険しい表情をしたクラクスは、彼女に手を伸ばす。一瞬躊躇うように手を震わせるも、そのまま彼女の肩を掴んだ。
「今まで私にしてきたことへの報い、受けていただきます」
「……へ?」
視線をあげれば、すぐ側に立っていたのはクラクスだった。なかなか帰ってこないイメリを探しに来てしまったのだろう。
「げっ、クラクス……」
「まだ仕事は終わっていないというのに……申し訳ありません殿下、イメリ殿には片付けなければいけない書類が山積みですので」
「やだー、書類仕事もうやだー」
「文句を言わない」
一喝を入れられた後、すぐにイメリはクラクスに脇に抱き抱えられてしまう。抵抗しようにも地に足がついていないと踏ん張ることもできず、彼女はだらんと脱力した。
「ごめんねぇ、ディレン」
「いいえ、気にしないでください」
少しだけ残念そうにしながら、ディレンはそう返してくれる。クラクスはそんな彼に一礼すると、そのままイメリを運搬していく。
「先生、またの機会に!」
「はいはーい」
ここまで食い下がってくるとは、頼み事というのはそれほど重大なことなんだろう。そんなことを考えながら、勝手に通り過ぎていく景色が見慣れたものへ変わっていくのを彼女は眺めた。
執務室まで戻ってくると、ようやく地面に降ろしてもらえる。机に積まれている書類を見たイメリがげっそりしていると、彼女はガチャリと鍵が閉まる音に気付いた。
「おいおいクラクス~、仕事が終わるまで帰さないつもりかい? 今までは多少サボっても文句言わなかったのに、なんで今日に限って」
「イメリ殿」
目の前に立ったクラクスは、何やら恐ろしい形相で彼女を睨みつけている。一体何事か、と思いながらその気迫に押された彼女はそろそろと後退りした。
「なん、だ、どうしたどうした、そんな顔して!」
「一つお聞きします。殿下のことなんですが」
後ろに逃げれば同じ分だけクラクスは距離を詰めてくる。そのまま壁に行き当たった彼女を逃さないよう、彼は壁に手をついて行く手を阻んだ。
「まさか貴女、殿下にも私にしているようなこと、されていたんじゃありませんよね」
「はぇ……?」
「答えてください」
私にしているようなこととは。そう頭を悩ませたイメリはすぐに思い至る。つまり、ディレンの股間も足で弄ったりしてたのかと聞いているのだ。
「いやいや、王子様相手にそんなことしないよ。ディレンには剣と生きる術以外教えてない」
「本当ですか」
「本当だって。まぁ、ディレンもいい反応してくれると思うけど、あの頃のわたしはそんな発想なかったか、ら、な……」
ディレンにイタズラをする様を想像して微笑んでいたイメリは、再び鋭いクラクスの視線に射抜かれて口を閉じた。王子相手にそんな不埒な妄想をするなど、真面目な彼であれば絶対に許してくれないだろう。
「いやいや、冗談だよ冗談。あははは」
「…………」
「ほんとに冗談! 何だったら今後君への悪戯だって改めるから!」
早口でそう捲し立てれば、クラクスは大きくため息をつく。これは許してくれたっぽい、そう思ったイメリはぱっと笑みを浮かべた。
だがしかし。
「イメリ殿」
「は、い?」
未だ険しい表情をしたクラクスは、彼女に手を伸ばす。一瞬躊躇うように手を震わせるも、そのまま彼女の肩を掴んだ。
「今まで私にしてきたことへの報い、受けていただきます」
「……へ?」
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