上 下
77 / 123

31-01 不器用さも愛して*

しおりを挟む

 その後も特に変わりなく、穏やかな時間は過ぎていった。

 いつか化けの皮が剥がれるかも、なんて思っていたゲブラーも、素直に想いを口にすることに慣れていき、自然とノイナを愛でるようになっていった。それは形容するなら、イチャイチャ、ラブラブ、なんて言えてしまうくらいに。


「ノイナ! 大好き」


 想いを受け取ってもらえることを喜ぶように、いつも柔らかい笑みを浮かべて彼はノイナに接した。一週間に一晩程度だった逢瀬も頻度が多くなったり、ホテルで一晩過ごしたあと数日間はデートをしたりして一緒に過ごす、なんてことも増えていった。


「俺と、ずっと一緒にいてね……」


 甘えるように愛を乞うゲブラーに、ノイナも次第に彼への好意をはっきりと自覚するようになっていった。

 見つめられればドキドキして、手を握られれば身体が熱くなって、口付けをすれば、彼が欲しくなって。
 愛を囁かれるたびに、心は喜びで震える。これが恋で、愛なのだと、実感するようになった。

 それでもなかなかうまく言葉にはできずに少しだけ悩んでいたころ、休日の朝。
 家で目覚めたノイナは、目の前にある男の寝顔に眠たい目を擦った。


「……あれ?」


 昨日はゲブラーに呼び出されてホテルで一晩を過ごしたのだったか。そんなことを思って周囲を見回しても、ベッドは自分のよく知るものだし、天井も自分の家のものだ。


「なんで……ゲブラー、いつの間に家に入り込んだんですか?」


 なぜ家の場所を知っていると一瞬思うも、そういえば教えていないのに乗り込んできたことがあったなと思い出す。それに初めてのデートの際にも、ゲブラーを連れて家を訪れたのだった。


「んん……おはよ、ノイナ……」
「お、おはようございます」
「ノイナの家のベッドって狭いね。まぁでも、ノイナとくっついて眠れるから、すき」


 寝起き一発目から嬉しそうに笑うゲブラーに、ノイナはツッコミを入れる気も失せてしまう。顔を赤くして黙っていれば、身体を起こした彼が朝の挨拶とでも言うかのようにキスをしてくる。


「朝から、どうしたんですか。家まで来て」
「んー? 仕事終わって、こっちついたら夜で……でもノイナに、早く会いたかったから……お風呂と着替え済ませて、来ちゃった」
「そう、ですか」


 ぎゅうっと強めに抱きしめられながら、軽いキスをいくつも交わし合う。まだ眠たそうに瞬きをする彼の頭を撫でれば、いつも以上に緩んだ笑みがその整った顔に浮かんだ。


「もうちょっと寝ますか?」
「んーん、起きる」
「それじゃあ、朝ごはんにしましょうか」
「うん」


 ノイナがベッドを降りようとしたところで、ゲブラーがあっと短く声を上げる。どうしたのかと思えば、彼はなぜか満面の笑みを浮かべてかちゃかちゃとベルトを外している。


「朝勃ちだ! ノイナ!」
「あ、はい……」


 子供のような無邪気さに思わず笑みが引き攣る。恐らくまだ寝惚けているのだろう、普段のゲブラーでもさすがにこんなことは言わない。


「ほんとに、朝になるもの、なんですね」
「ん……」


 しっかりと反り勃っている陰茎に、ノイナは優しく手で触れる。そうすれば期待するような彼の視線が向けられて、そういえば以前朝にしてほしいということを言っていたのを思い出す。


「そこ座っててください」


 ゲブラーにベッドの縁に座ってもらうと、ノイナは床に座り込んだ。ちょうど目の前にあるそれにキスをして、ちろちろと舌先で舐め始める。すると彼のものはぴくぴくと震えて、また大きくなっていく。


「ん、まだおっきくなる」


 唾液を絡ませるように全体を舌で舐め回したあと、手でゆっくりと根本から上を扱いていく。震えて質量を増していく男根はすぐに先走りを溢し始めて、唇を寄せてそれを吸い上げればびくりと彼の腰が揺れた。


「はぁ……っ、ノイナのフェラ、好き……」
「んん、んんふ」
「そんなに、あっ、吸われたら、すぐ出ちゃうよ」


 愛おしさが滲んだ声で名前を呼ばれて、彼の手が優しく頭を撫でる。先端を口に含んだままもっと撫でろと手を重ねれば、また甘い彼のため息が聞こえてくる。


「ノイナ、んんっ、だいすき……ふ、んっ」


 ゆっくりと口の中に剛直を収めて、またずるずると引き抜く。次第にそれを早くして、手で根本や袋を愛撫すれば、口内に先走りがどんどん溜まっていく。


「は、ぁ……っん、もう、でちゃう、ノイナっ、イく……!」


 ぐっと喉奥までそれを飲み込むのと同時に、屹立がふるふると震えて吐精を始める。朝から元気に迸る熱をしっかりと受け止めて、ノイナは慣れた様子でゆっくりと飲み込んだ。
 いつものように綺麗に掃除まで済ませ、ようやくそこから口を離せば、ゲブラーに軽く抱き上げられる。まだ精液の味と臭いの残る口で深く唇と舌を絡ませれば、よりいっそうその味と臭いが広がってしまう。


「んっ……ノイナの口の中、俺の味がする」
「そりゃあ、飲んだあとだから当然ですよ」
「ふ……ありがとね、ノイナ。すっごく、気持ちよかった」


 服を整え、またノイナを大事そうに抱きしめたゲブラーは、穏やかな笑みを浮かべた。


「朝からノイナに愛してもらえて、嬉しい」
「そう、ですか」
「ノイナ、好き……」


 過多とも言えるくらいの愛情表現に、ノイナは真っ赤になってしまう。なんとか自分も表現しようと彼を抱きしめても、本当に伝わっているのかと心配になった。


「ともかく、朝ごはんにしましょうか。用意しますから」
「うん」


 ゲブラーが家にやってくるのは、スタールの一件以後初めてだった。あのときも大したもてなしはしていないため、実質初めてのお宅訪問、というところだろう。
 普段ホテル住まいのゲフラーはもちろん持ち家などはない。そう考えると、今後はたびたび彼が家にやってくるのかなとも思う。


(家の鍵、渡しておこうかな……そういえば)


 手早く朝食の準備をしながら、ノイナは自分の背後に立つゲブラーに尋ねた。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

隠れ御曹司の愛に絡めとられて

海棠桔梗
恋愛
目が覚めたら、名前が何だったかさっぱり覚えていない男とベッドを共にしていた―― 彼氏に浮気されて更になぜか自分の方が振られて「もう男なんていらない!」って思ってた矢先、強引に参加させられた合コンで出会った、やたら綺麗な顔の男。 古い雑居ビルの一室に住んでるくせに、持ってる腕時計は超高級品。 仕事は飲食店勤務――って、もしかしてホスト!? チャラい男はお断り! けれども彼の作る料理はどれも絶品で…… 超大手商社 秘書課勤務 野村 亜矢(のむら あや) 29歳 特技:迷子   × 飲食店勤務(ホスト?) 名も知らぬ男 24歳 特技:家事? 「方向音痴・家事音痴の女」は「チャラいけれど家事は完璧な男」の愛に絡め取られて もう逃げられない――

極上の一夜で懐妊したらエリートパイロットの溺愛新婚生活がはじまりました

白妙スイ@書籍&電子書籍発刊!
恋愛
早瀬 果歩はごく普通のOL。 あるとき、元カレに酷く振られて、1人でハワイへ傷心旅行をすることに。 そこで逢見 翔というパイロットと知り合った。 翔は果歩に素敵な時間をくれて、やがて2人は一夜を過ごす。 しかし翌朝、翔は果歩の前から消えてしまって……。 ********** ●早瀬 果歩(はやせ かほ) 25歳、OL 元カレに酷く振られた傷心旅行先のハワイで、翔と運命的に出会う。 ●逢見 翔(おうみ しょう) 28歳、パイロット 世界を飛び回るエリートパイロット。 ハワイへのフライト後、果歩と出会い、一夜を過ごすがその後、消えてしまう。 翌朝いなくなってしまったことには、なにか理由があるようで……? ●航(わたる) 1歳半 果歩と翔の息子。飛行機が好き。 ※表記年齢は初登場です ********** webコンテンツ大賞【恋愛小説大賞】にエントリー中です! 完結しました!

大嫌いな次期騎士団長に嫁いだら、激しすぎる初夜が待っていました

扇 レンナ
恋愛
旧題:宿敵だと思っていた男に溺愛されて、毎日のように求められているんですが!? *こちらは【明石 唯加】名義のアカウントで掲載していたものです。書籍化にあたり、こちらに転載しております。また、こちらのアカウントに転載することに関しては担当編集さまから許可をいただいておりますので、問題ありません。 ―― ウィテカー王国の西の辺境を守る二つの伯爵家、コナハン家とフォレスター家は長年に渡りいがみ合ってきた。 そんな現状に焦りを抱いた王家は、二つの伯爵家に和解を求め、王命での結婚を命じる。 その結果、フォレスター伯爵家の長女メアリーはコナハン伯爵家に嫁入りすることが決まった。 結婚相手はコナハン家の長男シリル。クールに見える外見と辺境騎士団の次期団長という肩書きから女性人気がとても高い男性。 が、メアリーはそんなシリルが実は大嫌い。 彼はクールなのではなく、大層傲慢なだけ。それを知っているからだ。 しかし、王命には逆らえない。そのため、メアリーは渋々シリルの元に嫁ぐことに。 どうせ愛し愛されるような素敵な関係にはなれるわけがない。 そう考えるメアリーを他所に、シリルは初夜からメアリーを強く求めてくる。 ――もしかして、これは嫌がらせ? メアリーはシリルの態度をそう受け取り、頑なに彼を拒絶しようとするが――……。 「誰がお前に嫌がらせなんかするかよ」 どうやら、彼には全く別の思惑があるらしく……? *WEB版表紙イラストはみどりのバクさまに有償にて描いていただいたものです。転載等は禁止です。

皇妃は寵愛を求めるのを止めて離宮に引き篭ることにしました。

恋愛
ネルネ皇国の后妃ケイトは、陰謀渦巻く後宮で毒を盛られ生死の境を彷徨った。 そこで思い出した前世の記憶。 進んだ文明の中で自ら働き、 一人暮らししていた前世の自分。 そこには確かに自由があった。 後宮には何人もの側室が暮らし、日々皇帝の寵愛を得ようと水面下で醜い争いを繰り広げていた。 皇帝の寵愛を一身に受けるために。 ケイトはそんな日々にも心を痛めることなく、ただ皇帝陛下を信じて生きてきた。 しかし、前世の記憶を思い出したケイトには耐えられない。命を狙われる生活も、夫が他の女性と閨を共にするのを笑顔で容認する事も。 危険のあるこんな場所で子供を産むのも不安。 療養のため離宮に引き篭るが、皇帝陛下は戻ってきて欲しいようで……? 設定はゆるゆるなので、見逃してください。 ※ヒロインやヒーローのキャラがイライラする方はバックでお願いします。 ※溺愛目指します ※R18は保険です ※本編18話で完結

性欲のない義父は、愛娘にだけ欲情する

如月あこ
恋愛
「新しい家族が増えるの」と母は言った。  八歳の有希は、母が再婚するものだと思い込んだ――けれど。  内縁の夫として一緒に暮らすことになった片瀬慎一郎は、母を二人目の「偽装結婚」の相手に選んだだけだった。  慎一郎を怒らせないように、母や兄弟は慎一郎にほとんど関わらない。有希だけが唯一、慎一郎の炊事や洗濯などの世話を妬き続けた。  そしてそれから十年以上が過ぎて、兄弟たちは就職を機に家を出て行ってしまった。  物語は、有希が二十歳の誕生日を迎えた日から始まる――。  有希は『いつ頃から、恋をしていたのだろう』と淡い恋心を胸に秘める。慎一郎は『有希は大人の女性になった。彼女はいずれ嫁いで、自分の傍からいなくなってしまうのだ』と知る。  二十五歳の歳の差、養父娘ラブストーリー。

【完結】お義父様と義弟の溺愛が凄すぎる件

百合蝶
恋愛
お母様の再婚でロバーニ・サクチュアリ伯爵の義娘になったアリサ(8歳)。 そこには2歳年下のアレク(6歳)がいた。 いつもツンツンしていて、愛想が悪いが(実話・・・アリサをーーー。) それに引き替え、ロバーニ義父様はとても、いや異常にアリサに構いたがる! いいんだけど触りすぎ。 お母様も呆れからの憎しみも・・・ 溺愛義父様とツンツンアレクに愛されるアリサ。 デビュタントからアリサを気になる、アイザック殿下が現れーーーーー。 アリサはの気持ちは・・・。

ヤンデレ彼女は蘇生持ち

僧侶A
恋愛
ヤンデレは暴走するとすぐに相手の体を刺してしまう、何とも大変な恋人の事である。 そんな女性と俺は知らずにお付き合いすることになった。 でも、彼女は蘇生が使える。だからいくら刺されても生き返らせてくれます。 やったね!ヤンデレと付き合っても生存ルート確定。 つまり自分の事をひたすら愛してくれるただの良い女性です! 完結まで毎日14時に更新します。

冷酷無比な国王陛下に愛されすぎっ! 絶倫すぎっ! ピンチかもしれませんっ!

仙崎ひとみ
恋愛
子爵家のひとり娘ソレイユは、三年前悪漢に襲われて以降、男性から劣情の目で見られないようにと、女らしいことを一切排除する生活を送ってきた。 18歳になったある日。デビュタントパーティに出るよう命じられる。 噂では、冷酷無悲な独裁王と称されるエルネスト国王が、結婚相手を探しているとか。 「はあ? 結婚相手? 冗談じゃない、お断り」 しかし両親に頼み込まれ、ソレイユはしぶしぶ出席する。 途中抜け出して城庭で休んでいると、酔った男に絡まれてしまった。 危機一髪のところを助けてくれたのが、何かと噂の国王エルネスト。 エルネストはソレイユを気に入り、なんとかベッドに引きずりこもうと企む。 そんなとき、三年前ソレイユを助けてくれた救世主に似た男性が現れる。 エルネストの弟、ジェレミーだ。 ジェレミーは思いやりがあり、とても優しくて、紳士の鏡みたいに高潔な男性。 心はジェレミーに引っ張られていくが、身体はエルネストが虎視眈々と狙っていて――――

処理中です...