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こいのぼり
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「それはなんだ?」
色のついた長方形の紙の片側を三角に切り取って魚の尻尾のようにしたものを棒に貼り付けていたら、後ろから声を掛けられた。
「こいのぼりですよ。僕のいた世界――と言うより、国かな? では、こどもの日と言う子供の成長を祝う日があって、男の子のいる家はこれ飾ってたんです」
この世界では暦が違うから5月5日とは言わないけど、向こうの暦に当てはめたら今日が、その日だし、ちょうどいいかな?とおもって簡単に作ってた。
「ほう。そのこいのぼりとやらにはなんの意味がある?」
「えーっと、滝を登った鯉は、龍になるって言う逸話があって、そんな鯉の様に大きくたくましく育って欲しいと言う願いを込めてだったかな?」
詳しくは覚えていないけどそんな感じだった気がする。ついでに鯉の説明と龍の説明もしなきゃいけなくなったけど、まぁ、そこは仕方ないよね。この世界には似た様なのはいるけど、同じものがいないんだし。
僕達の間に子供がいる訳ではないから、作ったってしょうがないんだけど、ただなんとなく、向こうの世界のことも忘れたくなくて、作ってただけだ。
「ほう。いい行事だな。この国でもやるか?」
僕の気持ちを知ってか知らずか提案してくれる旦那様に目を瞬きながら、見上げれば笑顔を返された。
「君がこの世界に残ると言う選択をしてくれたのは嬉しいかったが、そう決断したが故に君は、もう故郷には行けないんだ。いや、もし帰る方法が見つかったとしてももう、私が君を手放せないから、どっちにしろ無理なんだが……それなら、せめて、故郷を懐かしむ事の出来る行事があってもいいのではないか?」
「ふふ。ありがとう。僕ももう旦那様と離れたくないから、帰りたいなんて言わないよ。向こうのみんなに一生会えないのは正直寂しいけど、旦那様に会えない方がもっと辛いもん」
そう言って僕は旦那様の唇に触れるだけのキスをした。
「僕の国にはこどもの日の他にも色々な行事があるんだよ? こどもの日じゃなくてもいいから、この国にも馴染めそうな行事があれば、作って欲しいな?」
作りかけの小さな鯉のぼりを置いて、僕は旦那様に日本でのイベント事を説明して聞かせた。その中から、どのイベントを旦那様が選んで、この国でもやっていくのかは今の僕にはまだわからない。
ただ、わかるのは僕の旦那様が世界一素敵な旦那様だって事だけ。
色のついた長方形の紙の片側を三角に切り取って魚の尻尾のようにしたものを棒に貼り付けていたら、後ろから声を掛けられた。
「こいのぼりですよ。僕のいた世界――と言うより、国かな? では、こどもの日と言う子供の成長を祝う日があって、男の子のいる家はこれ飾ってたんです」
この世界では暦が違うから5月5日とは言わないけど、向こうの暦に当てはめたら今日が、その日だし、ちょうどいいかな?とおもって簡単に作ってた。
「ほう。そのこいのぼりとやらにはなんの意味がある?」
「えーっと、滝を登った鯉は、龍になるって言う逸話があって、そんな鯉の様に大きくたくましく育って欲しいと言う願いを込めてだったかな?」
詳しくは覚えていないけどそんな感じだった気がする。ついでに鯉の説明と龍の説明もしなきゃいけなくなったけど、まぁ、そこは仕方ないよね。この世界には似た様なのはいるけど、同じものがいないんだし。
僕達の間に子供がいる訳ではないから、作ったってしょうがないんだけど、ただなんとなく、向こうの世界のことも忘れたくなくて、作ってただけだ。
「ほう。いい行事だな。この国でもやるか?」
僕の気持ちを知ってか知らずか提案してくれる旦那様に目を瞬きながら、見上げれば笑顔を返された。
「君がこの世界に残ると言う選択をしてくれたのは嬉しいかったが、そう決断したが故に君は、もう故郷には行けないんだ。いや、もし帰る方法が見つかったとしてももう、私が君を手放せないから、どっちにしろ無理なんだが……それなら、せめて、故郷を懐かしむ事の出来る行事があってもいいのではないか?」
「ふふ。ありがとう。僕ももう旦那様と離れたくないから、帰りたいなんて言わないよ。向こうのみんなに一生会えないのは正直寂しいけど、旦那様に会えない方がもっと辛いもん」
そう言って僕は旦那様の唇に触れるだけのキスをした。
「僕の国にはこどもの日の他にも色々な行事があるんだよ? こどもの日じゃなくてもいいから、この国にも馴染めそうな行事があれば、作って欲しいな?」
作りかけの小さな鯉のぼりを置いて、僕は旦那様に日本でのイベント事を説明して聞かせた。その中から、どのイベントを旦那様が選んで、この国でもやっていくのかは今の僕にはまだわからない。
ただ、わかるのは僕の旦那様が世界一素敵な旦那様だって事だけ。
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