秘密の多い私達。

堂島うり子

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第7章

それぞれの疑惑、思惑

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 帰宅する時も不安はあったけれど行かない訳にはいかないから。
自分の部屋に入ったらどっと疲れが出てきてベッドに倒れ込む。

 何も知らないまま楽しい時を過ごすなんてそんな甘い話ないよね。
 私の立場を言葉に出されて実感して何とも言えない気持ち。

 一週間滞在予定とのことでそれまで何が起こるのか分からない。
その間だけでも家に帰るとか友達の家に転がり込むとか考える。
 けど、私とお風呂入りたいおじさんが心配なので止めた。

 明日は朝の挨拶をしたらずっと別行動。
 さぞかしセレブな世界で楽しく過ごすんだろうな。



「秋海棠君からの呼び出しなんて女子だったら絶叫ものだったな」
「……」
「うわ。怖い顔。咲子ちゃんに声かけたので怒ってる話し?」

 場所は適当に見つけたカフェ。先に座って待っていると目の前の席に
ドスンと大柄な男が座ってニヤニヤしている。注文はコーラ。
 
「響子さんを追うのはもういい加減止めろ」
「なんだそっちか。今はもう追ってない。まあ、帰国してるって情報聞いて
ちょっと行動を調べただけだよ。ほんと元義理の姉さんには甘いよなぁ」
「面倒な奴がチラつくのが嫌なだけだ」

 彼女からの相談は子どもだけでなく自分を疑う刑事の気配について。
 気のせいだと言っておいたけれど、もしやるとしたらこの男しかいない。

「意地悪な義理の兄貴だから死因に疑問があってもどうでもいいのか?
俺には事故には思えない。響子が関わってるのに間違いないんだ。
お前も何か知ってるんだろ?その力で見たら事実は明らかだもんな」
「疑問を持っているのは君だけだ。だから彼女も私も自由にしてる」
「幸信はそりゃもう嫌味な奴だったよな。金持ちクソボンボンの典型例。
親父さんがお前を溺愛するから余計にこじれてさ」
「人間性は人のことを言えないだろ。お互いに」
「まあね。今はもう工藤響子に戻ってるんだったな。子どもたちも
もう結構でかくなってるんだろうな」
「どうせ調べて知っているんだろう。白々しい」
「その子どもがお前の周りをうろついてるのも知ってる。かもな」

 その会話の後は少しの間があいて注文したコーラが到着した。

「どうしてこうも邪魔ばかり入るのか」
「邪魔って?お前の社長業?咲子ちゃんとの暮らしのこと?」
「全て」
「だったらお前の力でその邪魔を消し去るか?」

 お前の義理の兄貴みたいに、とでも続きそうな言い方。

「君で試してみよう。ちょっと目を閉じてくれないか」
「嫌だね。俺はこの仕事が楽しくて生きてるんだから。
利害関係が合わないからって一方的に消されてたまるか」
「気に食わなくても君にはその楽しい仕事が待っているんだから。
今後は無駄な労力は使わないことだ」
「そんなに心配するのは元とはいえ身内だからか。彼女だからか」
「関係ない。今の暮らしを守りたいだけだ」
「その為なら人を壊すことも厭わないってか。お前も高御堂家の男だな」
「……」
「けど。まだお前に人間らしい所があってよかった。親近感すら湧いた」
「コーヒーくらい飲む。どれだけ化け物扱いしてるんだ」
「咲子ちゃんと風呂入りたくて喧嘩してかわいーなー秋海棠君はー」
「あの場に居たのか?!」
「気づかないとは俺も腕が上がったね。言ったろ。ちょっと行動を調べただけって」

 ニヤニヤとした顔を更に下品にニヤつかせて笑う九條。
 写真を撮っておけばよかった、とまで言われた。

「……最悪な男だ」
「まあまあ。ここで提案だ。ガキが帰るまでこっそり咲子ちゃんの
警護をしてやる代わりに協力してくれないかな」
「……」
「何なら風呂入るように説得してあげるから」
「お前の脳を鼻から摘出してやる」
「待て待て待て暴力反対」

 つくづくこの男には弱みを握られる。
苦々しい思いではあるけれど交換条件は悪くはない。
 仕方なく了承して店を出るとスマホが震えて。

『創真さん。もうログハウスにつきました?』
「まだ。これから向かうんだよ。君はどう?」
『今買い物中なんです。闇鍋だから面白いもの入れたいなって』
「程々にしないと君も食べるんだから」
『はい』
「あと味付けは友人に頼むべきだ。いいね」
『はい?』

 通話を終えると自分も車に乗り込んだ。
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