秘密の多い私達。

堂島うり子

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第7章

罠 2

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 姪である以上邪魔だと言われても私に対抗できる手段はない。
彼の言うように確かに現実的じゃない感情論だし、下手したら
ボタン1つで簡単に終わってしまう可能性だってある。

 最初から私にこんな気持を抱かせる罠だったとしたら。

 社長が身内について語りたがらない理由も頷ける。

「そういえば私に聞きたいことがあったんだよね」
「あ。うーん。今はタイミングじゃないので止めます」

 食後のお茶が美味しくてお代わりする。さっきまでの凍りつくような
空間から解放されたせいか最初の緊張なんて消えていた。

「気になるよ」
「それよりも実際どうなんです?響子さん。綺麗だし明るいし。
お子さんは2人をくっつけたいみたいですけど」

 お似合いだとは思うけど、ただそれだけで慧人君が行動した訳ではないはず。
私のカンだけど実は先輩の「元カノ」っていうのはあながち間違いじゃないのかも。
 話題を変えるために切り出した事だけど十分気にはなっている事。

「どうって言われてもね。私としてはやっと面倒な家を出たのに
今更戻ることはないと思ってるよ」
「それだけですか?」
「私を尋問してるのかな?探偵さん。そうだな、彼女は学年も学部も
違うけど大学が同じだった」
「やっぱり以前から知り合いだったんですね」
「図書館でよく調べ物をしていて私と行動範囲が似ていて、話すようになって。
共同で研究をした事もあった。知的なだけでなく会話も楽しい女性だよ」
「それってもう運命の相手じゃないですか」

 他人に興味を持たない人が行動を把握している時点で意識している証拠。
悔しいけど、お似合いすぎて私じゃ口出しできない。
 むしろ何でそれで付き合ってないの?お兄さんと結婚したの?

「今思えばそう……だったのかもね。私は何時も気づくのが遅い」
「私が居なければ運命に戻れますよ」

 現実的じゃない小娘じゃなくて。現実的でよく知る、いい女。

「だとしても。君が居なければ私はもう生きていけない」
「……大好き。創真さん」
「それってつまり私と風」
「ほんと何でそこまで拘るんですか?入らないと死ぬ病気なんですか?」

 素敵って思ったトキメキを返して?

「私は健全な男なのだから恋人と風呂に入りたくて何がおかしい?
君こそ何でそう頑ななんだろうね。見られて疚しいことでも?」
「開き直った上に怒ってきた」

 しかも言い訳が子どもみたいなんですけど。さっきはあんなシリアスな
 顔で子どもを諭してた人が。何この落差。

「良いかい咲子。3人だというから男と同じ空間で寝るのは我慢するけれど。
当然同じ布団は許さないしプールやジャグジーも一緒は駄目だ」
「水着でも?」
「私と水着で風呂に入る?」
「い、いやだ何かシュールだし怖い」
「嘘は無駄だ」

 そんな真顔で言われても怖くないし響かないし。

「高御堂家の人って皆こんな感じなのかな」

 簡単に表すとヤバイ。

 血は繋がって無くても慧人君も一筋縄じゃいかない雰囲気だった。
凡人の私はどう受け止めたらいいんだろう?やっぱり実家に帰るべき?
 どこでもいいから安全な場所へ逃げたいような気分。

「ほら、おいで咲子帰るよ」
「あ。はいっ」

 ぼんやりしていたら下るエレベーターが来たみたいで。
 慌てて駆け寄って一緒に乗り込む。

「君を紹介して穏やかに終えるつもりが上手く行かないものだね」
「ですね。あーあ。せっかく買ってもらったお洋服着てるのに」
「機会はまだある。……だろ?」
「はい」
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