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第6章
正解は
しおりを挟む翌日の朝。
忙しかった出来事なんて何も無かったかのように平然と出勤し
ていく社長さん。
私は眠れないからと遅くまで音楽を聴き続けて寝不足。
それで遅刻したって頭がぼーっとしたってフォローなんてない訳で。
珍しくコンビニに寄り道をして苦手なカフェイン多めの飲み物を買って
気を紛らわせる事にした。
成長を認められても結局私は翻弄され遊ばれてしまう運命らしい。
「まさか彼女だったなんてね。普通に挨拶してた」
「皆さんそうですよね」
「あんな綺麗な顔して、でも本性はとんでもない悪魔だった……。
じゃないと関係ない人間を傷つけるなんてとうてい考えないもの」
会社内は事件の解決について正式発表をした事で事件当日くらいの
ざわつき加減だった。私も先輩に「教えてあげる」と言われて既に知って
いたけれど改めて話を聞く。
犯人の名前は伏せられたけれど席が消えている事が物語っていた。
「はい。綺麗な顔した悪魔は居るんです。怒りん坊で…もやしっ子で…」
「矛先が自分じゃなかったと安堵するのも変な感……もやしっ子?」
「なんでもないです。解決してよかったですよね事件」
本当のことは分からないけど、結果だけで見れば事件を起こしたから
社長と2人きりで話が出来て彼の秘密を共有する数少ない女になれた。
普通だったら嘘つきか笑い話で終わるようなものを信じた結果。
もし事件が無かったら私は彼の秘密を知らないままだったのかな。
知って良かった?知らないままの方が良かった?
社長は好奇心と言ったけど。確かにそれもあっただろうけど、
私には社長への執着や愛情が混ざって歪んだものみたいに思える。
「丘崎君、ちょっといいいか」
「はい。何でしょうか」
「君まで何かやったか?」
「はい!?」
「刑事さんがお前に話があるんだそうだ。ちょっと出て話してこい。
ああ、会社内は止めろ変な噂が立つから。
この前社長も様子を見に来たばかりだしな。バレんように外行け外」
「私は何もしてません」
「分かってるよ。いいからさっさと聞いてこい」
朝とお昼の間くらいの時間。突然こそっと上司に呼ばれて。
バレないように行けってどういう風に?とは聞けずにそのまま1階へ。
受付に居ると言われて近づいてみるとやはり見覚えのある刑事。
「こんにちは」
「ここでは何ですから外に出ませんか」
「いいよ。お茶でも飲もう。その方が違和感がないだろ」
そう言われて無言で頷いて会社を出る。事件は無事に終了している。
はずだけど、なんだろう怖い。社長にはバレるなよと上司が言った手前
こちらから連絡は出来なかった。
会社側の喫茶店に入る。やたらとゴツい男性とスーツ女はなんだか
怪しい業種の面接みたい。
「お話ってなんでしょう」
「事件関係じゃない。今後の為に俺のイメージが悪いままでは不味いから。
邪魔のない時間に君と2人で話したかった訳だ」
「今更ですか?」
席につくとすぐに注文を聞かれて相手はコーラ。私はオレンジ。
「単刀直入に言うよ。俺はどうしても秋海棠の……、
高御堂の協力が欲しい。君には」
「お断りします」
「それがアイツの為でも?」
「どう為になるっていうんですか?犯罪に関わって良いことあります?」
「君はあの男が怖いとか思わない?」
「怒ったらすごく怖いです」
「……、っ悪い。君等がいい関係を築いてるのは分かった」
真面目な空気だったのに突然吹き出された。
「何ですか」
「力の話は聞いたろ。君にもあいつが普通じゃないのは分かるよな?
それを自分の利益のために利用しているとしたら?或いは良くない連中に利用
されるかもしれない時。抑止力として警察といい関係を築いておいて損はない」
「貴方が社長を良いように利用するんじゃないかと疑うほうが自然ですよね?
個人情報を漏らした実績がありますから」
「おっとこれは痛い所を」
申し訳ないとは思ってなさそうな言い方をしてコーラを飲み始めた。
私はとにかくチラチラと店内の時計ばかり見てしまう。
「私の噂も少したったんですから」
「何で隠したいのかは分かるよ。本人のやった事じゃないとはいえ
社長のイメージが悪くなるよな。君も会社に居づらいだろうし。
おまけにそんなワケアリの2人が同居してるっていうのも」
「刑事さんって目的のためならなんでもする人なんですね」
「九條だよ。あと俺は警部ね」
「貴方が信じられない以上何も出来ない。私を逮捕します?」
「興味はあるが止めておく」
「結局は好奇心で社長を観察したいだけ」
「否定はしないけど、こっちがどれだけ心配してようとアイツには
そうにしか見えないんだから意思疎通が難しいよ」
「……」
「俺は女には騙されても高御堂を騙す事はしてこなかった。
どうせ見破られるから開き直ってバカ正直に接してきたのが正しいかな。
お陰で秘密を知っても生きていられる。あの女のようにはなってない」
「あの女」
「君の会社の自首してきた女。今どうなってると」
「仕事中ですしあんまり長いと変に思われるから戻ります」
お金を出そうとして要らないよと言われたのでさっさと店を出る。
飛び出したというべきかも。
「ねねね。丘崎さん刑事さんに声かけられたんだ?」
「もうその話が……」
「それって事件を調べに来てた背が高くってイケメンでマッチョな彼?」
「だ、と思いますけど」
席に戻ると物凄い速さで先輩が近づいてきて事情を聞かれる。
適当に事件の事でちょっと話があったと言って誤魔化した。
私が何かしたとか変な風には捉えてなかったようで良かったけど。
「ああいうアウトローな感じが好きなのよね」
「い、いんじゃないでしょうか」
「もしかして貴方も好き」
「じゃないです全く」
違うスイッチが入ったようで延々あの人の情報を聞かれた。
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