秘密の多い私達。

堂島うり子

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第5章

謎解きタイム???

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 まだ捕まったという話だけで何処の誰かまでは流れてこない。
先輩に聞いてみても「調査中」との事。
そんなすぐに情報は来ないのか、統制されているのか。
 慎重にならなければいけないような相手だったのか。

 帰り際スマホを確認すると、
事件の事で警察に呼ばれているので遅くなる。と社長からメッセージ。

「警察……。うう。また関われなかった」

 探偵がさらっと刑事さんに事件の全貌を説明してるんだろうな。
ちょっと怖い思いをしたけれど、それだけで詳しい話が全く聞けない。
ああ悔しい。所詮は自称ヒロイン現実モブ。

 だからって自腹でタクシーに乗り込んでいって警察署まで行く
なんて事はしたくないから大人しく帰宅ルートへ。
 帰ったらきっちり話をしてもらおう。




「待てよ秋海棠」
「君を責めてない」
「それはどうも。説明しないでも分かってもらえるのは楽でいいね」
「許してもいないし理解する気もない」
「はいはい。ちょっと話そうや」

 解決した後処理を終え帰宅しようと移動中。廊下に待ち構えていた刑事。
ここでと指さされたのが取調室なのは何か意味があるのか。
 仕方なく部屋に入ると刑事に椅子を進められるが無視して窓際に立つ。

「話しって?」
「あの女に何かしたろ。子どもみたいにスキップで自首しに来て
怖いくらい素直に自分のやった事を喋る」
「……」
「それだけじゃない。聞いてもないのに今自分が考えている事なんかも
ペラペラ喋って止まらないんだ。お陰で取り調べがカオスだよ」

 刑事は椅子に座り机に膝を付きじっと窓際のこちらを見つめる。

「私は君のような犯罪の専門家でもないし精神科医でもセラピストでもない。
けど、そうだな。自分が起こした事件が皆に発覚したのが嬉しくてうっかり
脳のタガが外れてしまった。とかじゃないかな?」
「外したのはお前じゃないのか。お前の力ならそれくらい訳ない」
「証明しようがないね」

 やや滑稽なリアクションと共にニコリと微笑んで見せると
 刑事は苦笑して返す。

「事件解決はしてるから秋海棠君がまた協力してくれたと思っておく」
「もうしない」
「日本なら効果抜群の警察っていう国家権力の警備がつくのは悪くない」
「それだけか?子ども騙しな誘い方は昔から変わらないな」
「嘘をついてもしょうがない。で、だ。正式に協力関係を築かないか」

 少しの間の後。

「断る」
「分かってるんだろ秋海棠」
「君は私を恐れている」
「ああ。その辺の犯罪者よりよほどおっかないと思ってるよ。
綺麗な顔して笑ってても本当は誰も信じてなんかないお前とその力」
「……」
「非情に聞こえるかもしれないがそれが普通の人間てもんだ。
だからこそ協力して安心させてほしいんだよ。俺だけじゃない他の人間もだ。
咲子ちゃんも何れ怖がるかも」
「怖がるのは好きにすると良い。ただし二度と咲子の話はするな」

 無表情だった顔が一瞬、キッと刑事を睨む。

「化けの皮ってのはどう繕っても剥がれるもんだ」
「言葉には気をつけろ。君に何もしないなんて誓った覚えはない」
「わかったよ。協力感謝してます社長殿」
「帰っても良いかな刑事さん」
「どうぞ」



 私の未熟さから社長を混乱させてしまって迷惑をかけた。
ので、そんな得意でもないけど料理を振る舞おうと思いたち。
 そんな高くない一般的なスーパーで買物をしてから帰宅。

「ここはやっぱり肉じゃがでしょう」

 エプロンを付けて台所であれこれと作業していると
思ったより早く玄関の開く音がした。

「何の匂い?」
「お帰りなさい。ふふ。なんでしょうか」
「……」
「ま、まああの。完成までドキドキしながら待っててください」

 そんな真面目な顔で首を傾げないでください怖いから。
レシピは母親から教えてもらった絶対美味しいやつなんだから。
 母親のように絶品になるとは言ってないけど。

「ワインいいかな」
「どうぞ」
「咲子もどう?1人は味気ない」
「少しだけ。頂きます」

 後は味を染み込ませるだけだから一旦火を止めてエプロンを脱ぐ。
席についてお酒を貰って乾杯。
 教わったように口にゆっくりと含むと甘くて美味しい。

「は?え?戸橋さんが犯人!?なんで?」
「知らなかった?もう情報が会社に行ったと思ったのに」
「会社ではまだ犯人の名前までは出てなかったので」
「明日改めて正式なコメントを出すことになっているからかな」
「それだ」

 まさかの犯人にうっかり食べかけのチーズを落としそうになった。
 社長は驚いた様子もなく平然と言っているけど。

 その彼女と2人きりでエレベーター乗ってませんでした?

「姿を見てはないけど、素直に供述しているようだったよ」
「自首…?供述?…だ。だめ。全然理解が追いつきません。
だって私に話しかけて……、きちんと最初から説明してください」

 会社ではミステリアスな人と言われてたようだけど。
社長に好意があって私に釘を差したと思ったら次の行動が
警察に自首?
さあこれから社長を奪うぞって意思表示と思ったのに、
 そんな意味のわからない謎すぎる人いる?

 犯人が最大のミステリーかもしれない。
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