秘密の多い私達。

堂島うり子

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第3章

いざ確信へ

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 社会人としてあまり良い事ではないけど何度も時計を見つつ。
 
 やっと迎えた定時。

 まだまだ残る人、あっさり帰る人、ちょうど外から帰ってきた人と
ごっちゃになる騒がしい時間帯だからその混乱を利用して私は片付け
帰宅組へ紛れ込む。

 さっさとフロアを後にしないと同じ帰宅組でも飲み会などに誘われて
私の性格上断れなくなるから。社長と一緒に病院へ行くことになっている
けど、何でお前が?と言われたら困るし。

 社長とは病院で待ち合わせ。

「バス代は経費にならないよねぇ…うぅ」

 タクシーで行っていいですか?と聞いたら無情にも自腹という返事。
仕方なくバスを乗り継いできた。
 皆もお帰りの時間帯だからやたら人が多くて立ちっぱなしだった。

「ここだよ」

 病院の入り口で社長発見。手には見舞いのお花。
 しまった私は何も持ってない。けど、一緒だからいいよね?

「社長はいいですよねぇお車で優雅にいらして」
「君も所有したらいい。出来るなら」
「……嫌い」

 このナチュラルマウント意地悪セレブめ。

 免許だけは就活のためにとったものの車の代金から維持費から何から
とにかく必要な金額を考えるだけで所持は無理と見送った。

「え?なにって?聞こえなかったな」

 聞こえてる癖に。ああ、立場が弱いって辛い。 
 社長様には何を言っても効かないから悔しい。

「意地悪はどこで診てもらえるか受付で一緒に聞きましょうね」
「彼女の病室は既に聞いてあるよ。行こう」
「……」
「そんな顔で見舞いはしないでほしいな。会社の代表なんだ」

 今は我慢するけど何れ中古車でも手に入れてドライブ行くんだから。
 
「来たな」

 エレベーターを上って彼女の病室前まで来ると朝に見た刑事さん。
 そう言えば手帳に名前があったけど一瞬で覚えてない。

「刑事さん。えっと、…お疲れ様です」
「お疲れさん。咲子ちゃんとは朝は少ししか話せなかったから
今度は時間を作ってゆっくり話が聞きたいもんだ」
「え。えっと。そうですか?」
「曖昧な返事は付け入る隙を与えるだけだから止めたほうが良い。
そっちの仕事は終わってないだろ。早く病室へ行ったらどうだ」
「はいはい」

 相手は軽い口調で声をかけてきたけれど社長は低い声で愛想もなく。
同級生といってもろくに会話もなく彼女が居る病室へ。
会社持ちの個室で広く結構良い部屋。
 付き添っている母親は今は少しだけ席を外しているという。

 再び狙われる可能性もあるということで廊下に警察官が1人居た。

「どうも西本さん。それじゃあの日の貴方の行動。聞かせてもらいましょうかね」
「……社長」
「やあ。こんばんは西本さん。気分はどうかな。
見た所顔色はいいみたいで安心したよ」
「あの、すぐに復帰しないといけないのに。すみません」
「気にすることはない。自分を大事にしないといけない」
「それじゃ。いいかな」
「……はい」

 彼女が出社してお茶を飲むまでの行動をここで漏れなく聞ける。
 それで彼女にお茶を渡した相手が居たら犯人の可能性大。

「あらま。刑事さん私が居ない間に始めるつもり?」
「ああ、お母さん。いえいえちょっとした雑談をね」
「あら!社長さんまで来てくださったの。こちらは秘書の方?」

 緊張の瞬間、突然後ろのドアが開いてオバサンが入ってくるから驚いた。
 その口調から母親だというのはすぐに分かって。

「私は秘書では」
「あらあ!こんな立派なお花。ちょうど花を生けようと
花瓶を家から持ってきてたんですよ……確かここに。あったあった。
話はちょっとまってくださいよ!私も娘と一緒に聞きますからね。
でもその前に頂いた花の準備しないと」
「秘書の君。お母さんの代わりにその花瓶と花を持ってってくれる?」
「……ぇ」

 何で刑事さんに指示されるの?お母さんを待てばいいじゃない?
 だけど空気的に仕方なく花と花瓶を受け取って一旦病室を出る。

 場所が分からず看護師さんに聞いたりしながら作業して5分ほどロス。

「分かりました。今日はもう結構ですからゆっくり休んでください」
「はい」

 花を持って戻ってきたら事情聴取は終わっていた。
彼女はただ自分の行動を話しただけだからそんなかからない。
 私は花を母親に渡して一緒に病室を出る。

 こんなのって有りですか?

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