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第2章
唐突な事件の幕開け 2
しおりを挟むもう外は暗いし最初は警察署の中で待とうと思ったけど、
犯罪に関わる特殊な場所だという先入観からか何となく居心地が悪くて。
じっと入り口で出てくるのを待っていた。
「お疲れ様です。時間掛かりましたね。疑われてるんですか?」
「犯人が出るまではそうだろう。君はもう疑われてはいないだろうけど」
「社長がそんな事するはずないのに。意味ないし」
「残念だけど社内にはそんな事をした人間が居る」
「どうするんですか」
「もちろん警察に任せて私達は通常業務で行くしか無い。彼女の意識は
まだ戻っていないそうだけど、それでも生きていてくれてよかった」
「……」
帰りの車内。あまりいい空気にならないのは当然。
警察で散々話してげっそりしたというのもあるけど。
「昼間は声を荒げて悪かった。君が関わると動揺する」
「私が会社の不満を言ってたから仕返ししたって思ったんですか」
「例え不満の多い子でもそんな事をするとは思ってない。
それに何だか奇妙な犯人だ。とても考えて行動しているとは思えない。
突発的な行動のように思う」
「やっぱり私を疑ってます?」
彼の言っていた新しいストレスのはけ口とか思ってるとか。
チラっと運転する彼を見ると真面目な表情で正面を向いている。
運転中だからそれはそうなんだけど。
「特定の1人を狙うならリスクのある会議の場である必要はない。
もっと狙いやすくて安全な場所や方法はある。
ただの愉快犯で誰でも良かったなら君が持ってきた大量のお茶に
適当に仕込んだほうが効果的だ」
「そもそも彼女は何処でお茶を手に入れたかですよね。
あのサイズはうちの自販機じゃ無い」
「それなんだ。私が引っかかったのは」
「え?」
「彼女が座っていた場所は君が座るはずだった席なんだ」
「うそ。あの会議に参加予定だったんですか私!」
これも聞いてないですけど。流石にそれを読み取るのは無理だ。
たぶん、部署の上司か先輩かが忘れたか黙ってたんだろうけど。
やっぱり私は嫌われてるのかも。
「君は向上心があるようだから見て勉強するのも良いだろうと思って。
だから”もし予め置いてあった場合”君が狙われた可能性を考えた」
「私そんなサスペンスで殺されるような濃い人生おくってませんし。
流石にそれは考えすぎじゃないですか?」
「犯人が分からない間は警戒して損は無いよ」
「もしかしてそれって週末のお出かけはなしって意味です?
犯人が見つかるまでは私の楽しみを全部我慢しろってそんな」
「今週末は私と一緒だから互いに警戒しあえる」
「はい」
大企業の社長ならどんな因縁を持たれていても不思議ではないけど、
新人の私は無い。考えすぎ。それであんな真剣になってしまうのだから。
周囲からは完璧な男と言われている人でも笑っちゃうような所はある。
のかも。
「ん?なにか可笑しい?」
「確かに一緒ですけど。集中しちゃうと周り見えないかもなって」
「そういう時は事前にきちんと戸締まりしたらいい」
「はぁい」
話をしてみてやっと私の体が軽くなった。
例え事件が起ころうとも楽しみがないと平日を乗り越えられません。
翌日は上司から同じような説明を聞いて通常業務に。
倒れた彼女は意識を回復したもののショックで話が出来る状態では
ないそうで。復帰するのはまだもう少し先になるという。
だけど、犯人は確実に社内に居るわけで。
聞けば致死量ではない農薬が入っていたとか。命を奪うことを目的として
いなくても、私が飲んでいた可能性もあると言われると確かにちょっと怖い。
「やっぱここは王道の怨恨かしらねぇ」
「え?先輩?なんですか急に」
「倒れた彼女のこと。表向きは朗らかな顔してたけど。
裏じゃ結構新人イビリとかするタイプだったって話し」
「違う部署なのによく……あ、前の?」
「ふふ。まあね。私って情報通だから」
「人脈凄いですもんね。カフェの人とか掃除してくれてる方とか…
あ、私新人ですけど。私は関係ないです。違いますから」
「分かってるって。でも既にあちこちで犯人探し始まってる」
毒を入れたのは誰か?あいつ?それとも彼女?
表向きは通常業務。だけどコソコソと話しているみたい。
事件に関係のない人たちは犯人当てゲームに興じている。
関係ないからって平和なような怖いような。
「早く週末にならないかなぁ」
「デート?」
「え?!い、いえ。気疲れしてばっかりで。休日しか救いが無いんです」
「分かる。私も夜発散したくて最近ジム通い出した」
「ジム」
「ストレス発散とかダイエットにもいいから。
何より間近で汗にまみれたマッチョ男子見れるし」
「まっちょは…ちょっと…こわいかなぁ」
「あれの良さが分からない?まだ青いわね」
「ですね……あはは」
こうして無事?に待ちに待った週末を終える。
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