秘密の多い私達。

堂島うり子

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第1章

静かな日常 4

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「聞いた?システム部の大田原さん突然異動になったんだって」
「聞いた。それも明らかな閑職」
「何か左遷されるような事してたっけ?」
「若くて良い女限定で尻をジロジロ見てたのがバレたんじゃない?」
「あぁ」
「それだわ。これだけ社員が居てもやっぱり見てるのねぇ」


 そんな話を聞いたのは私が朝会社に来て本人を遠巻きに見ながら
社長に件のオジサンの詳細メールを送った2日後だった。

 実際女性に触れた訳でも、私になにかしたわけでもない。
ただそういう人間が居るという把握だけなのかと思ったらまさか
そんなさっさと異動させるまでは考えなかったから驚く。

 そしてやっぱり社長なんだなと。当たり前な事だけど。

「パーティ?」
「3人だけなんですけど。高校からの友達と会おうってなって。
最初は部屋でって思ったんですけど他二人は実家で気を使うし。
うちは6畳で大家さんが神経質なタイプだから中々」
「ああわかる。妹は大学生でアパート暮らしなんだけど。
角部屋で1階の人でかけたからって友達と部屋で飲み会して。
気づいたら近隣から苦情が出てて警察呼ばれたって」
「警察」

 周りが先輩ばかりで最初お昼休みは1人弁当だったけど、
前の席で2年先輩の女子社員さんが声をかけてくれてからは
彼女と一緒にテラスに行ってランチする。
 この春に異動してきたばかりでまだここでは友人が少ないらしい。
 
 お弁当を作る時間が無かったので大きなおにぎりを2個。
 気にせず食べていたらおかずを分けてくれた。

「相当騒いだんだろうね。酒が入ってたとはいえほんと馬鹿」
「流石にそこまで元気には行けないけど何処かいい場所ないですかね。
レンタルスペースっていうのを見たんですけどそこそこ値段するし」
「一昔前はラブホとかあったけどね。今はどうなんだろ」
「ラブホか。あ。一時期クラスで流行ってました。女子会プランがあるって」
「カラオケ行って散々歌って騒いでから家に行ってしんみり飲むのは?」
「それもいいですね」

 3人共にそれほど財政が裕福ではないから出来るだけ節約したい。
相談してまとめた案を幾つか送っておいた。
 
「私もまだ1回だけだけど。この会社の他社との交流会は凄いよー。
豪華ホテルで綺麗だし食事も酒もジャンル関係なしに美味しい」
「楽しみです」
「そこで男女共に優良株を探すのよ。自分の所だけじゃないから特にチャンス大」
「なるほど」
「受付嬢ちゃんと大学が一緒で仲良くて。彼女から聞いた話なんだけどね。
招待客である各会社の秘書チームが毎回社長口説こうとするんだけどまだ誰一人として
持ち帰られたことないから、誰が落とすか密かに注目されてるって」
「秘書チームですか。強そう」
「もちろん見た目だけじゃない。知的で一流大学卒。海外勢も居るとか。
ミスキャンパスの受付嬢とかも居るっていうし。ま、最初からあの社長を
捕りに行こうなんて思う女はそれくらい無いと無理だろうしねぇ」

 想像力が貧弱な私でも安々と想像できるとにかく美女のチーム。
社長本人はそんな視線を向けられていると知っているんだろうか。
カンが鋭い所があるから何かしら気づいていて敢えて行動していなさそう。
 オジサン社員の件はとても迅速だったけれど。

「男性で優良株ってどういう人ですか?やっぱりエリートさん?」
「外資系有りだから外国人も居る」
「わ」
「同じ会場に居ると言うだけで私達の隣に来るという意味ではないからね」
「ですよねー」

 そう簡単なシンデレラストーリーはありませんよね。
 2人で若干諦めの入った苦笑いをした。

 お米を一杯食べると眠いけど昼からもたるまずに動かないと。
私は今まだどういう人材なのか見られているのだから。

 例えエースにはなれなくても使えない烙印は押されたくない。


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