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終幕へ

40:新しい世界へ向けて

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 エノクの正体は分かっているし気兼ねなく触れて欲しい。
そう彼に言ったら結構な心の負担らしいので今まで通り目は隠し人の姿のまま。
 キトラも嫌がって中々本性を見せないから気にしないといいながら実は気にしている。

 魔物化した自分を大事な妹に見せるという行為。その反面、
 見せてゾクゾクしているあたりがお兄様たちの性癖。


「あっあぁんっ…やだぁっ…ま…またイッちゃ…うっ」
「……よしよし。いい子だ。腰の動きが上手になってきたね」
「私ばっかりでエノクさん楽しくないですよね…」
「僕の上でりんごが楽しんでると思うと幸せだよ」

 上に乗って自分で好きに動いてご覧と言われたので素直に従い。
エノクの上に乗って自分から彼自身を招き入れて腰を動かす。
 何処をどう動けばいいかは何となくわかっているから自然と動いた。

「……あの、皆して天界へ帰ったりしないですよね?」
「あいつは僕らを迎えに来たわけじゃない。天界も夜母には困ってるみたいでさ。
魔物になったといっても過去の記憶を持つ僕らと取引をしにきた。多分そんな話し」
「なるほど。夜母さんと敵対する同士で利害が合いますしね」
「今は良くてもどうせ最後には裏切る。所詮は魔物と見下してるの丸わかりだから。
なのに兄さんへのあの未練がましい顔。ほんと醜い……。
偉そうにしてても強い光に依存することでしか生きていけない弱い連中なんだよ」
「……」
「僕等が君が居ないと生きていけないのと似てるかもね」

 信頼は出来ずとも天界の手を借りられるのならうまく行くかもしれない。
でも今のままで本当に良いのだろうかとも思う。

 りんごは何時も蚊帳の外で難しい所は何も分からないけれど。

 分かるのはエノクが今ある土地を明確な国として囲い、彼らを作った夜母の制圧をすること。
本当はもっと色々と黒いことをするのだろうけど。
 その辺は省略されていて敢えてりんごも問い詰める行為などはしない。

 じゃあどうするべきか?の代案を出せないのだから。

「そう……」
「りんご。僕の願いはずっと同じ。君との子どもを育てることだけだよ。
その為なら敵と戦う事も元の仲間を騙すことも何て事無い」
「貴方は何時も私を優先してくれる。でも、私は子どもよりエノクさんと少しでも
長く一緒に居るほうが良い。だから1人で無茶しないで兄弟を信じて欲しい」
「……」
「国を作るのも夜母さんの為に魔物を狩るのも止めてとは言いません。
だけどちゃんと生きる道を選んで」
「驚いた。君に生きる道を正されるなんて」
「ほんとですね。最初に私が死ななければ狂わなかったのに」

 自ら命を絶った妹が居なければそれに後追いする兄も居なかったし
魔物に魂を売り渡す兄も居なかった。天界を破壊する兄も。

 それで生まれ変わったら死ぬなというのだから
 自分勝手で都合のいい女だとりんご自身も思う。

「そこは気にしなくて良い。あのままだったとしても君の体は解体されて僕らは
二度と会えない事になってたんだから。まだ君の体があっただけ良かった」
「……」

 やはり自分は天界でも生きる価値もない存在だったのだと思うと言葉に詰まる。
ありふれた何処にでもある家庭、友人、そして恋人。全部望めないのは何故だろう。

「僕らはただ入り口が間違ってただけなんだ。最初からやり直そうりんご」
「だからってお尻に玩具挿れようとしても駄目ですよ!」

 そっとお尻に忍び寄っていた玩具を排除するりんご。

「抵抗したってりんごのお尻も弄って欲しそうにヒクついてるの分かってるんだよ?」
「だったらエノクさんが無事に夜母さんを倒したら私のお尻も好きにしていいっ」
「あ。そう。そういう事言うんだ。……言ったよね。りんご、嘘は駄目だよ?」
「うう。…い、言ってしまった。言いました!だから安全に」
「魔物は欲望の固まりなんだよりんご。君はその欲望に火をつけた」
「……あ。ちんちんが固くなってく…ひい」

 天の民にも人間としても遠く及ばなくてもカスタマイズが無限に可能な
木偶人形として生を受けた意味もあるのかも。




 その頃城の庭にて。

「兄さん。ザガリアは?」
「帰ったよ。これが誓約書。エノクが署名して初めて効力を得る」

 りんごが戻らず退屈になったサターヌは庭に居た長兄の元を訪れる。
 彼の手には物々しい金色の筒に入った契約書。

「ふーん。でさ、こっちに呼び込めそうな奴に当てはある?
アイツが言うには結構な数が賛同してくれてるみたいだけど」
「お前のほうが知り合いが多いんじゃないか。元部下とか引き連れてたろ」
「そうだけど。どうだったかなぁほらあいつらって顔が一緒だから」
「そんな訳ないだろ。全くそれでよく隊長なんて出来たもんだね」
「言うことは素直に聞くし反抗もしてこないし皆いいヤツだったよ。顔一緒だけど」
「そうかい。じゃあその同じ顔軍団を連れて来たら良いね」
「聞いてみる。でもおかしいよね。天界を捨てたはずなのに殆ど変わらない事をしてる。
私達がずっとしてきたことはなんだったんだろう?」

 天は善であり地は悪であると教わって来た事全てが裏返る。
サターヌは今まで深く考えてはこなかったがそれが正解のように思えてならない。

「問題なのは行動ではなく目標だサターヌ。何を求め得るために戦うのか。
善か悪はそこで別れる。聖女か魔王の違いなんて……それだけの事なんだよ」
「なぁんか面倒だね。私はただりんごと一緒に暮らせたらそれでいいんだ!
後は男の体を取り戻して子作りだって励みたいし!絶対可愛いぞ!」
「はあ。お前たちは無邪気でいい」
「ちゃんと考えてるさ。りんごも日々成長してるんだから。
兄である私だって目標を見失わなずに頑張るって決めてるんだからな」
「そうかそうか。とても良いことだ。偉いね」
「馬鹿にするなよ!私だって魔物になれるんだからな!」
「そんな怒らなくてもお前が魔物なのは分かってる」
「見てろよ…!キトラ兄やエノクみたいに強くてでかい魔物に」
「俺に見せてどうする気?」
「……」
「さて。りんごが戻ってくるまでお茶でも飲んでようか。サターヌちゃん」
「うわああああああああ!勝負だキトラ兄!魔女の意地見せてくれるっ」

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