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戦いに向けて
16:執着心の行き着く先
しおりを挟む「誰ともすれ違わないとそれはそれで怖い」
城といってもエノクとその部下となる魔物が数名居るだけで滅茶苦茶に
広い訳でもなく絵本やテレビで観たような美麗な装飾のある形でもない。
生活の豪華さより防衛機能を最優先にした要塞に近いのかも。
1人にされたりんごはすっかり暇を持て余して城内を自由に探検開始。
兄弟はまだ話し合いをしているようで廊下を歩いていても誰の姿も見えず。
城を管理するために居るはずの魔物たちもりんごを避けているのか居ない。
ふと見つけた重々しい、さも何かありそうな扉を発見。
好奇心で開けると地下へ続く階段が現れた。これはもう降りるしか無い。
不用意に触らなければ自由に探索して良いと主に許可を得ているし。
降りていった先には簡素な扉があってそこを開けると開けた空間。
どういう仕組みなのか火はなくても明かりが仄かに確保されていて
部屋を見て回るには不自由しない。
「…人?じゃ、ないな」
部屋の四方の壁には見るからに古そうな書物が棚にぎっしり。
その真ん中には丁度いいサイズの台で寝ている人?と思って近づくと石像のよう。
フォルムがなんとなく眠る女性っぽい。
「ここに居たんだ」
「エノクさん」
突然声をかけれてビクッと震えつつ急いで振り返る。
咄嗟に怒っているかと思ったけれどその顔は普通?に見える。
「いいよ自由に見て。ここは僕の研究室」
「研究って…コレの?」
りんごは眠るように横たわるそれに視線を向ける。
「色々。それは記念においてあるだけ。最初はもう少し形を留めていたんだけどね」
「もしかして皆さんが大事にしていた妹さんの亡骸とか?ミイラ?」
「違うよ。これは僕の記憶を頼りに作った泥人形」
「つまり私の初期作」
前世の自分の顔を見るチャンスだったのに風化して顔は何も見えない。
これは命を持たないただの置物でりんごは何の感情も持たないけれど。
ただ、木偶ではあるが今こうして「妹」は心を持ち動いているのだと思うと
エノクは凄い努力と才能で、
キトラが危惧するのはこういう強すぎる執着心なのかもしれない。
「キトラ兄に見つかると壊されるからここに隠してた」
「何となく分かります。嫌いそうですものね」
像ではなく本物でないと許さないようなそんな印象。
「兄さんは自分が一番愛されていたと思ってるから僕の作品に嫉妬する。
君をおもって精巧に作れば作るほどに…愛情を込める度に否定するんだ」
「……」
「だから僕が取り戻した君も認めようとしない」
「仕方ないです。私に記憶はないし体はお人形だし顔だって違う。
それで昔と同じように愛して貰える方が難しいですよ」
人形の創造主は愛着が違うだろうから別として。
サターヌは双子だから通じるものがあるのかもしれない。
「本当は分かっている癖にやせ我慢して最後は病むんだ」
「キトラさんは大丈夫ですよ。エノクさんこそ、これで幸せ?
前世に縛られ過ぎてませんか?」
「もちろん幸せだよ。当然じゃないか」
「……」
どんな訳があって妹が兄たちと離れる事になったのかは明らかにされていない。
けど、りんごは何となく分かる気がした。
どの世界であっても生きていくには弱かったのだと思う。
少しでも強く生きていけたら何も失わず今も笑っていられたのかもしれない。
エノクたちは人間のようだと思ったけれどやはり何処かが違う。
深く傷ついて自分自身に絶望して底なしの狂気に苛まれて。
なんて可哀想な兄たち。そして脆すぎる妹。
朽ちていくだけの哀れな泥人形を見つめながら重いため息が出た。
「この部屋は暫く入ってないから埃をかぶってしまったね。
一緒にお風呂で綺麗に洗い流そう。体の点検も兼ねて」
「一緒にお風呂…」
「嫌?」
「行きます」
ニンマリと不気味な歯を出して笑うエノクにこちらも笑顔で返した。
手を繋ぐと優しく引かれてそのまま階段を上がり廊下に戻りエノクに案内されるまま
風呂へと向かう。
「待ってりんご。それは外しちゃ駄目だ」
「でもお風呂ですよ?」
脱衣所で服を脱ぎ。エノクの目を開放しようとしたら止められる。
「これはただの飾りじゃなくて……。これは見せられないんだ。まだ」
「……」
「興味いっぱいの顔で見つめてるのは分かってるよ。でも駄目。
僕だって君の前では見た目を気にしてるから……さ」
少し寂しそうにいうと再びりんごの手を引いて風呂へ。
2人で入っても窮屈じゃない程には広いけど浅い岩を重ねて作った湯船。
シャワーは無いからそこからお湯を手ですくって軽く洗う。
「種を分けてもらったら回復するしここはお風呂だし。
滅茶苦茶に噛みちぎっても良いですから。貴方の好きに愛してください」
「痛いの好きじゃないのに無理しないでいいよ。
この歯は折ってもすぐに生えてきたから思いっきり舐めるのは諦めた」
座り心地の良い岩に座ってエノクを見つめたらすぐに目の前に来て。
優しく、口をあまり開かないキスをしてくれた。
もちろん長い舌は口内に侵入しりんごの舌と絡めて来るけれど。
「昔はいっぱい舐めてくれたのに」
「知らないだろ。いや、したけど。そんなずるいことを言わないで。君だって…」
「良いですよ。上手に出来るか分からないけどエノクさんが喜ぶなら」
視線を彼の下半身に向ける。
「だ、駄目だりんご。手で撫でて」
「そっちがいいなら」
顔を近づけようとして止められたので代わりに手を伸ばした。
触るのはそれほど抵抗はないし手や口での愛撫の仕方も実はサターヌから
彼女の腰に装着されたモノを利用して教えてもらっていた。
「……上手だね。……わかった。サターヌので練習したんだ」
「正解」
笑いながらエノクの手がりんごの下半身へ伸びる。
「っ…ん…可愛い僕のりんご。……また…こうして触れられて幸せだ。
夢じゃないかと朝が怖くなるくらい」
割れ目周辺を優しく撫でてからゆっくりと指で押し広げ中へ侵入。
核となる部分には直接触れずに柔らかい周辺を優しく摘んで撫でる。
りんごはそれだけでゾクっとして腰が少し浮いた。
「ぃっ……」
でもなんとか堪えてエノクを愛撫する手を動かす。
サターヌの狙いとしては彼女が本来の性別を取り戻した際にりんごに
やってほしいという希望があってのレクチャーだったのだろうけど。
「あぁ……こ、こんな手付きだったかな…すご…い…なっ」
双子だから好みが近いのかも。などというと怒られそうなので黙る。
途中から会話は無くなり粘り気のある水音と吐息が増えていく。
浅い湯船で身を寄せあってお互いを激しく指で刺激し合い。それで互いに
顔を歪め苦しそうにしながら腰を引くつかせて高まっていく。
なんて光景だろうと思いながら逆にそれに興奮してしまったりして。
それはエノクも同じようでキスしたら荒くてりんごは唇を切った。
「あ…あ…あ」
「ごめんりんご…でも…一緒に…イクまでは…イク…までっ」
「ぅっ…い…い」
ほぼ同時に果てたようで一瞬の呆けた顔とともにぐったりする。
風呂だから声が倍増して恥ずかしいけれど。
「今回復してあげるからね」
果てて蕩けた場所へ向けて準備万端のエノク。
確かに嘘じゃない。切れた唇や途中噛まれた体の節々は回復はする。
「あの、私の回復方法…もっと…なんとかなりませんか」
でも回復アイテム等の幅がもう少しはあってもいいと思う。
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