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レベルアップの方法
07:我らが魔王!
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「知識が乏しいとは言え。この世界は強さにより魔物の住む階層が
分かれている事は共通認識だと思う。
王と呼ぶに相応しい魔物たちはその階層にそれぞれ伝説と共に点在していて…
要するにそんなの一々行くのが面倒くさいので今回は割愛する」
「一生無視してろばぁか」
真面目な顔で結局は面倒って何だ?ターヌは吐き捨てるように言う。
プンプン怒る彼女と全く気にせず真面目に話を続けるエノク。
キトラはお茶を飲みつつ大人しくじっと話を聞いているのみ。
「しかし一生懸命に取り組んでいるりんごにこんな悲しい知らせは出来ない」
「適当に日帰りくらいの遠出して魔物狩れば?適当な雑魚居るでしょ。
まだ森の小さいのしか魔物を見た事がないんだから十分魔王狩りになる。
そもそもお前がここら一帯の魔王クラスなんだから首を差し出せば良い」
「丁度いい魔物を発見した。キエラゴだ」
エノクの言葉に初めて反応するキトラ。
「キフナ山の地下に住んでいるという単細胞生物?あれは不死だと聞いたけど」
「死なない雑魚?それじゃ意味が無いじゃない」
「見境なく何でも食い尽くす為にどの派閥からも嫌われている魔物だ。
そんなものに何故興味を持つ?喧嘩を売った所で何処からも反発は食わないだろうけど」
「どうせ戦うのなら多少は歯ごたえが欲しい。後りんごの為の素材を集めたいんだ」
「戦狂のサガをこんな所でださないでよ。……りんごの為って言われると弱いけど」
「なるほどね。ただの余興ではない訳だ」
話しがまとまってきた所で玄関のドアをノックする音。りんごだ。
もうそろそろ入っても良いかと聞いているらしい。入っておいでと声をかけると
カゴいっぱいに野草を入れて戻ってきた。そこでこの話は一旦終了。
真剣な顔で話し合う3人の間に入って探ろうとするも全然相手にされず
しょげる彼女はさみしげにソファに座る。
「新しい魔術の実験はどう?上手くいってる?」
「沢山試したい気持ちはあるんですけどすぐ体が壊れるので少しずつ。
でも回復アイテム作りは一通り出来るようになりましたよ」
「偉いね」
それは隣に座っていたキトラのしっぽを堪能するため。
彼女には既に猫じゃらしのような魅力的な玩具に見えるらしい。ちょっと不愉快だけど
幸せそうな彼女には何も言えずサターヌはお茶のお代わりを準備をしに席をたってエノクも離席。
「まだそれくらいだけど…でも、何れは皆と冒険に出るから」
「今更な事を聞くけど。人間にされ今度は魔物になったことに何も思わない?」
「はい。最初の記憶は無いですから余計にそう思うんでしょうけど」
「そっか」
「キトラさんは嫌みたいですね。魔物になってしまったこと」
と、いうよりりんごの存在も含めて?彼は何処か今の生活に不満を抱いているように見える。
悪意までは感じてないけれども。
「善悪どちらかしかない前世に未練はないよ。でも、どうせなら空を飛べる
魔物が良かったなって思うだけ。
昔は思った場所にすぐに行けたのに今は近所を歩いて回るのがやっとだ」
「少しわかります。魔女はほうきで空を飛べないって聞いてちょっとがっかりしました」
「罰を受けている身の上だから思い通りに希望なんて通るわけないんだけどね」
「酷いです。罰なんてなくなればいいのに。皆が楽しい世界が良いですね」
「……皆が楽しい、か。…ちょっと虚しい言葉だよね」
「え?」
「痛くない魔術の練習なら付き合うよ。何時でも言って」
「ありがとうございます」
何処か影のある言い方をされてどう返事をするか分からないでいると
サターヌがお茶とお菓子を持って戻ってきた。エノクも部屋に居る。
皆で席について皆で美味しくお茶を頂いて。幸せな気持ち。
皆と一緒にいられて虚しいなんて思わない。
夕飯前には2人は帰宅。ちょっと寂しいけれどまたすぐに会える。
「実はさ。昼間エノクたちが来てたのは魔王の情報を持ってきてたんだ」
「え!も、もう出発ですか!待って下さいまだちょっと準備が…」
打倒魔王の旅立ちは近いらしいし。
「落ち着きなって。私だって言われてすぐに旅立てる訳じゃないから。
それに戦うのなら下準備が必要だろ。こんな体じゃ接近戦は無理だし」
「サターヌ」
「だけど魔術は無制限にぶっ放せるんだ。お前をしっかり守るから」
「私も皆を守れるようになる」
「……うん。可愛い。お前は私のものだからね」
何の役にも立たないゴミクズだと言われてきた自分が誰かの役に立つ。
それが現実味を帯びてきて嬉しくてぎゅうっとクッションを抱きしめる。
そんなりんごを抱きしめるサターヌ。
「魔王か…やっぱり四天王とか居るのかな…」
一巡目の記憶は無いけれど生まれて初めて自分を好きになれる気がする。
人間だった頃も一縷の希望を持ってきたからこそ何があっても生きてきた。
行き交う人の波を前に何度か世界から消え去ることを考えたりもしたが。
それはもう過去のこと。
「何してる?」
「あ。…いえ、…か…体の状態の確認をしてただけです」
「そ、そっか。でもほら下半身を見るなら風呂のが、ね?」
「ごめんなさい」
「ううん。ごめんね寂しい思いをさせて。そっちも改善中だから!楽しみにしてて」
「え?」
「私の可愛いりんご」
にっこり笑うサターヌの笑みがやけに艶めいて見えたのは気の所為だろうか。
分かれている事は共通認識だと思う。
王と呼ぶに相応しい魔物たちはその階層にそれぞれ伝説と共に点在していて…
要するにそんなの一々行くのが面倒くさいので今回は割愛する」
「一生無視してろばぁか」
真面目な顔で結局は面倒って何だ?ターヌは吐き捨てるように言う。
プンプン怒る彼女と全く気にせず真面目に話を続けるエノク。
キトラはお茶を飲みつつ大人しくじっと話を聞いているのみ。
「しかし一生懸命に取り組んでいるりんごにこんな悲しい知らせは出来ない」
「適当に日帰りくらいの遠出して魔物狩れば?適当な雑魚居るでしょ。
まだ森の小さいのしか魔物を見た事がないんだから十分魔王狩りになる。
そもそもお前がここら一帯の魔王クラスなんだから首を差し出せば良い」
「丁度いい魔物を発見した。キエラゴだ」
エノクの言葉に初めて反応するキトラ。
「キフナ山の地下に住んでいるという単細胞生物?あれは不死だと聞いたけど」
「死なない雑魚?それじゃ意味が無いじゃない」
「見境なく何でも食い尽くす為にどの派閥からも嫌われている魔物だ。
そんなものに何故興味を持つ?喧嘩を売った所で何処からも反発は食わないだろうけど」
「どうせ戦うのなら多少は歯ごたえが欲しい。後りんごの為の素材を集めたいんだ」
「戦狂のサガをこんな所でださないでよ。……りんごの為って言われると弱いけど」
「なるほどね。ただの余興ではない訳だ」
話しがまとまってきた所で玄関のドアをノックする音。りんごだ。
もうそろそろ入っても良いかと聞いているらしい。入っておいでと声をかけると
カゴいっぱいに野草を入れて戻ってきた。そこでこの話は一旦終了。
真剣な顔で話し合う3人の間に入って探ろうとするも全然相手にされず
しょげる彼女はさみしげにソファに座る。
「新しい魔術の実験はどう?上手くいってる?」
「沢山試したい気持ちはあるんですけどすぐ体が壊れるので少しずつ。
でも回復アイテム作りは一通り出来るようになりましたよ」
「偉いね」
それは隣に座っていたキトラのしっぽを堪能するため。
彼女には既に猫じゃらしのような魅力的な玩具に見えるらしい。ちょっと不愉快だけど
幸せそうな彼女には何も言えずサターヌはお茶のお代わりを準備をしに席をたってエノクも離席。
「まだそれくらいだけど…でも、何れは皆と冒険に出るから」
「今更な事を聞くけど。人間にされ今度は魔物になったことに何も思わない?」
「はい。最初の記憶は無いですから余計にそう思うんでしょうけど」
「そっか」
「キトラさんは嫌みたいですね。魔物になってしまったこと」
と、いうよりりんごの存在も含めて?彼は何処か今の生活に不満を抱いているように見える。
悪意までは感じてないけれども。
「善悪どちらかしかない前世に未練はないよ。でも、どうせなら空を飛べる
魔物が良かったなって思うだけ。
昔は思った場所にすぐに行けたのに今は近所を歩いて回るのがやっとだ」
「少しわかります。魔女はほうきで空を飛べないって聞いてちょっとがっかりしました」
「罰を受けている身の上だから思い通りに希望なんて通るわけないんだけどね」
「酷いです。罰なんてなくなればいいのに。皆が楽しい世界が良いですね」
「……皆が楽しい、か。…ちょっと虚しい言葉だよね」
「え?」
「痛くない魔術の練習なら付き合うよ。何時でも言って」
「ありがとうございます」
何処か影のある言い方をされてどう返事をするか分からないでいると
サターヌがお茶とお菓子を持って戻ってきた。エノクも部屋に居る。
皆で席について皆で美味しくお茶を頂いて。幸せな気持ち。
皆と一緒にいられて虚しいなんて思わない。
夕飯前には2人は帰宅。ちょっと寂しいけれどまたすぐに会える。
「実はさ。昼間エノクたちが来てたのは魔王の情報を持ってきてたんだ」
「え!も、もう出発ですか!待って下さいまだちょっと準備が…」
打倒魔王の旅立ちは近いらしいし。
「落ち着きなって。私だって言われてすぐに旅立てる訳じゃないから。
それに戦うのなら下準備が必要だろ。こんな体じゃ接近戦は無理だし」
「サターヌ」
「だけど魔術は無制限にぶっ放せるんだ。お前をしっかり守るから」
「私も皆を守れるようになる」
「……うん。可愛い。お前は私のものだからね」
何の役にも立たないゴミクズだと言われてきた自分が誰かの役に立つ。
それが現実味を帯びてきて嬉しくてぎゅうっとクッションを抱きしめる。
そんなりんごを抱きしめるサターヌ。
「魔王か…やっぱり四天王とか居るのかな…」
一巡目の記憶は無いけれど生まれて初めて自分を好きになれる気がする。
人間だった頃も一縷の希望を持ってきたからこそ何があっても生きてきた。
行き交う人の波を前に何度か世界から消え去ることを考えたりもしたが。
それはもう過去のこと。
「何してる?」
「あ。…いえ、…か…体の状態の確認をしてただけです」
「そ、そっか。でもほら下半身を見るなら風呂のが、ね?」
「ごめんなさい」
「ううん。ごめんね寂しい思いをさせて。そっちも改善中だから!楽しみにしてて」
「え?」
「私の可愛いりんご」
にっこり笑うサターヌの笑みがやけに艶めいて見えたのは気の所為だろうか。
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