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三巡目の世界:取説

02:説明を聞きました。

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 ベッドに座ったままじっと考えて。1つの考えに到着する。

「これが……おじさんが言ってた…やつ?」

 りんごは物心つく前から両親はおらず「おじさん」の家にいた。
人や世間を殆ど知らず知識はだいたいこのおじさんから。
血が濃くなるからコイツには手を出すなよと自分の息子にからかい混じりに
言っていたから身内にはなるのだろう。

 その扱いは暴力が殆ど。言葉でも肉体でも。

「何て言ってた?」
「使い物にならないと…最後は、臓器を売ってしまうって。
私、駄目だったのかも。ちびだしガリガリだし」

 笑いながら言っていたから冗談かと思ったのに本当に臓物を取られた?
だからツギハギの体?
 にしては逆に肉付きが良くなっていることに関してはよくわからないけれど。

「ここは娼館じゃない。臓器売買もしない。魔女だからって食べたりしない」
「た、たべても美味しくないです。骨と皮ですからっ」

 りんごは薄っすらと思い出していた。

 もういい歳になったからお前も外で金を稼いでこいと言われ、
知り合いという性風俗の店に行くことになった。

 その初出勤でおじさんの車で店に向かっている途中で意識が途切れた。

 目覚めたらメルヘンな世界に居て変な体になって。
自称魔女と黄緑のお茶を飲んでいる。

 これはなんて夢だろう?悪夢?現実逃避のつかの間の夢?


 そこに部屋ドアをノックする音。
 
「やあ。気分はどう?どこも悪くない?何かあればすぐに言うんだよ」
「エノク。彼女にとってはこれは初対面なんだ。怖がらせないで」

 まず入ってきたのは両目を黒い布でしっかりと隠した短い黒髪の青年。
青白い肌で不健康そうに見えるが顔立ちはとても綺麗。

 それが抱きしめてきそうな勢いで近づいてきてりんごは思わず身を縮める。

「僕はエノク。この城の主」

 エノク、と名乗った青年はサターヌの言葉にやや納得していない様子では
あったがりんごの反対側に座った。 

 今まで異性といえばおじさんくらいで他の異性は近寄ってもこない。
 彼らも用事を言いつける以外は来ないし会話もしないけれど。

 だから異性に近寄られると困る。どうしたらいいか。

「私お店に行かないと」
「それは全て君が見ていた夢だよ。ここが君の世界。君の家なんだ」
「は?え?」

 ここが家?あとエノクは喋ると口の端に見える歯がギザギザしている。
 噛まれたら物凄く痛そう。

「自己中心的な説明すぎて彼女が引いてるよ」
「キトラ兄」

 遠慮なく近づいてくるエノクに引きの顔で距離を取っているといつの間にか
部屋に入ってきていた男。
 最初の2人に比べて大柄で長身。髪の毛もフワフワして長い。

 りんごと目が合うとニッコリ懐っこい笑みを見せるが近づいては来ない。
 少し距離を置いて壁にもたれて立っている。

 顔は大人びてとてつもない美形だと断言できるのだが。
 ピクピクと動く大きな犬科の耳とふさふさの大きなしっぽが可愛い。

「獣人さんだ…」
「後でしっぽ触っていいよ。りんごちゃんだけは特別」

 目隠ししてる青年からは今までの出来事が全部夢だと言われて。
今見ているこの世界には魔女がいて獣人も居て、りんごの体はツギハギ。
 話を聞けば聞くほど訳が分からなくてオロオロしていると。

「揃ったね。じゃあ、ちょっと長くなるけど。聞いてりんご」
「は、はい」
「私たちは元は高次元の天界に住むちょっとばかり有名な4兄妹…だったんだけど。
色々とあって貴方を人間界に転生させたの。それは本来やっちゃいけないことで。その代償…いえ、
罰として私たちは1つずつ大事な物をなくし住む世界も失って今ここに居る」
「……ここ?」

 何処ですかここは?日本じゃないのは何となく察していたけれど。
 答えを求めてサターヌの顔を見つめる。

「天界が頂点として。その下にあらゆる時間軸の人の世界があって。
そこから脱落したり自ら望んで転化したりで己の願望に忠実に生きている
魔物が生息している最下層の歪んだ世界。ダーウィズンと呼ばれている」
「へえ?!そ、そんな、え?ま、魔物?悪魔?妖怪?」

 魔物というからには地獄みたいな場所ってことでいいのだろうか?
りんごは最終確認するのが怖いのでそれ以上の質問を止めた。

 窓から見える世界は今まで見てきたような長閑な青空に見えるのに。

 まさか一歩出たら”魔物”がうじゃうじゃ?

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