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カトリーナとローウェルが婚約に同意したことで両家の両親ともに歓迎した。
ブレムナー伯爵家としてはエマニュエル侯爵家の令息と結婚できるなら大賛成であり、仕事を通じた利権よりも大きなお零れに与れそうだという打算もあったことに加え、結婚が難しいかもしれないと思われていたカトリーナに良い縁があったことを何よりも喜んだ。
エマニュエル侯爵家としても欲深いアリッサから婚約解消されたことを喜んでいたが、ローウェルが選んだ相手というのが内助の功で評判だったカトリーナであったため二人の婚約に賛成だった。
結婚への障害もなかったため二人は早く結婚し、幸せに満たされた日々を過ごした。
その頃、リロイの評価は以前とは真逆になっていた。
次なる成果を求められるが全然成果が出ないどころか無能と評価したほうが適切だった。
それにメイとアリッサの修羅場もあり、スキャンダルには事欠かず、研究よりもスキャンダルの才能があるのではないかと陰口を叩かれる始末。
(メイもアリッサも俺の研究の邪魔ばかりしやがって……。上司は俺に成果を出せとうるさいし……。どうして女はこうも煩わしいんだ?)
メイがリロイの話を熱心に聞いたのはカトリーナから奪うためであり、奪ってしまえば面倒な話に付き合うことはなくなっていた。
無関心で無干渉ならリロイにとっても悪いものではなかったのだが、アリッサがメイからリロイを奪おうとしたことで面倒事に巻き込まれていた。
「ちょっとリロイ! 私とアリッサのどっちを選ぶのよ!?」
「私のほうがメイよりも絶対にリロイ様を幸せにできますから! 私だってリロイ様を支えたいんです!」
リロイが本当は大した能力もないことはメイもアリッサを察していたが、ここで引いてしまえば負けることになるため、意地と意地のぶつかり合いで引けなくなっていた。
引いてしまえばメイは周囲を散々振り回してきたことで職場の和を乱した責任を追及されるだろう。
アリッサもローウェルと婚約解消してしまったため、意地でもリロイと結婚し、優秀な成果を上げて名声と富を得てもらわなくてはならない。
「あー、リロイ君。君がいると他の研究員の邪魔にしかならない。あれ以来成果の気配すら感じられない。もう君は見限ることにしたよ。荷物をまとめて出て行ってくれたまえ」
責任者からの解雇宣告である。
リロイが職を失ったがメイもアリッサも退くに退けず、今度はバツイチ無職を奪い合う構図になっていた。
周囲からは同情もなく、むしろ職場から排除されたことで喜ばれたという。
その一方でローウェルの成果が突出するようになった。
本来ローウェルの能力であれば当然の結果だったが、問題は地味な研究なので成果が出るまで時間がかかってしまったことだ。
奇しくもカトリーナを妻に迎えてからのことであり、やはりカトリーナこそが内助の功で夫に幸運をもたらす存在なのだと噂されるようになった。
それはカトリーナを捨てる選択をし、職を失ったリロイの愚かな行為を嘲笑うような意味も込められている。
「カトリーナと結婚できて何もかもが上手くいくようになったよ」
「私もローウェルと結婚できて、やっと幸せがどういったものか理解できたわ。ありがとう、ローウェル。愛してるわ」
「僕もだよ」
信頼と幸せを感じさせる二人は微笑み合った。
ブレムナー伯爵家としてはエマニュエル侯爵家の令息と結婚できるなら大賛成であり、仕事を通じた利権よりも大きなお零れに与れそうだという打算もあったことに加え、結婚が難しいかもしれないと思われていたカトリーナに良い縁があったことを何よりも喜んだ。
エマニュエル侯爵家としても欲深いアリッサから婚約解消されたことを喜んでいたが、ローウェルが選んだ相手というのが内助の功で評判だったカトリーナであったため二人の婚約に賛成だった。
結婚への障害もなかったため二人は早く結婚し、幸せに満たされた日々を過ごした。
その頃、リロイの評価は以前とは真逆になっていた。
次なる成果を求められるが全然成果が出ないどころか無能と評価したほうが適切だった。
それにメイとアリッサの修羅場もあり、スキャンダルには事欠かず、研究よりもスキャンダルの才能があるのではないかと陰口を叩かれる始末。
(メイもアリッサも俺の研究の邪魔ばかりしやがって……。上司は俺に成果を出せとうるさいし……。どうして女はこうも煩わしいんだ?)
メイがリロイの話を熱心に聞いたのはカトリーナから奪うためであり、奪ってしまえば面倒な話に付き合うことはなくなっていた。
無関心で無干渉ならリロイにとっても悪いものではなかったのだが、アリッサがメイからリロイを奪おうとしたことで面倒事に巻き込まれていた。
「ちょっとリロイ! 私とアリッサのどっちを選ぶのよ!?」
「私のほうがメイよりも絶対にリロイ様を幸せにできますから! 私だってリロイ様を支えたいんです!」
リロイが本当は大した能力もないことはメイもアリッサを察していたが、ここで引いてしまえば負けることになるため、意地と意地のぶつかり合いで引けなくなっていた。
引いてしまえばメイは周囲を散々振り回してきたことで職場の和を乱した責任を追及されるだろう。
アリッサもローウェルと婚約解消してしまったため、意地でもリロイと結婚し、優秀な成果を上げて名声と富を得てもらわなくてはならない。
「あー、リロイ君。君がいると他の研究員の邪魔にしかならない。あれ以来成果の気配すら感じられない。もう君は見限ることにしたよ。荷物をまとめて出て行ってくれたまえ」
責任者からの解雇宣告である。
リロイが職を失ったがメイもアリッサも退くに退けず、今度はバツイチ無職を奪い合う構図になっていた。
周囲からは同情もなく、むしろ職場から排除されたことで喜ばれたという。
その一方でローウェルの成果が突出するようになった。
本来ローウェルの能力であれば当然の結果だったが、問題は地味な研究なので成果が出るまで時間がかかってしまったことだ。
奇しくもカトリーナを妻に迎えてからのことであり、やはりカトリーナこそが内助の功で夫に幸運をもたらす存在なのだと噂されるようになった。
それはカトリーナを捨てる選択をし、職を失ったリロイの愚かな行為を嘲笑うような意味も込められている。
「カトリーナと結婚できて何もかもが上手くいくようになったよ」
「私もローウェルと結婚できて、やっと幸せがどういったものか理解できたわ。ありがとう、ローウェル。愛してるわ」
「僕もだよ」
信頼と幸せを感じさせる二人は微笑み合った。
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