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落胆したスタークの、まさかの前向きな考えにより、ソーニャは再び聖女を目指すこととなった。
婚約関係を解消したいと願うソーニャだったが、スタークにその気がないなら無理だ。
かといって次に聖女に選ばれるとも思えず、ならばいっそのことスタークと一緒に破滅を迎えるのもいいかと思ってしまったソーニャだった。
今回の聖女が決まったことで、早くも次の聖女選びに備える動きが活発化していた。
今までと同じようにしていてもソーニャが聖女に選ばれる可能性は低いと考えたスタークにより、どこで知ったのか一つの提案をソーニャにしたのだ。
「良いアドバイザーがいるらしい。そこで修行してみるのもいいだろう」
「はい、わかりました」
またスタークと離れて暮らしたほうがソーニャにとっては気楽であり、修行なんて適当にすればスタークの野望を潰すこともでき、そうなれば婚約関係を解消してくれるかもしれない。
ついでに無駄な金銭的負担をかけることでスタークへの意趣返しにもなる。
共に破滅してもいいと考えるソーニャにとってはメリットばかりだった。
「今度こそ聖女になれ。いくらかかったかお前は知らないだろうけどな、聖女になってもらわなければ大赤字だ。今度こそ絶対にだ。いいな?」
「はい」
スタークが苦境になればなるほどソーニャにとって好都合。
良い気分で新たな修行の日々を迎えることとなった。
修行の日々が始まり、何よりも驚いたことがアドバイザーを称する男性の存在だった。
ウィンストンと名乗った若い男性は冴えない風貌であり、とてもではないが優秀だとは思えず、聖女の能力を育てられるとは思わなかった。
どうしてそのような人がアドバイザーなのか違和感を覚えたソーニャだったが、成果が出ようが出まいが関係なく、期待しないから落胆もせず、気にしないようにした。
しかし形だけの修行かと思いきや、かつての聖女の修行の話をアドバイザーにしたところ、予想外の答えが返ってきたので評価を改めることになったのだ。
「愛……がないから能力が育たなかったのですか?」
「ああ。聖女の力は愛の力だ。ソーニャさんには婚約者がいたよね? 愛されている実感はあった? なかったよね? ソーニャさんも婚約者のことを愛していないよね?」
「え、あ、は、はい」
冴えない顔から出る愛の言葉に違和感を覚えつつ、こんなにもズバズバと切り込んでくるのはさすがアドバイザーだと思った。
(愛の力が聖女の力になるって本当なの? ウィンストンさんは胡散臭いし冴えないけど、こんな意見、初めて聞いたわ)
まじまじとウィンストンを見つめても胡散臭そうな笑みを浮かべるだけであり、どこまで本気で言っているのかわからなかった。
以前にスタークが聖女は愛の力がどうのと言っていたことをソーニャは完全に忘れていたが、仮に覚えていたとしてもスタークの言ったことであれば信じてはいなかっただろう。
(追い込まれたスターク様が詐欺に引っかかっただけだったりしてね)
そのように思えば悪い笑顔になってしまう。
「おっ、いいね。やっと本当の自分を出してくれたね」
「っ……」
ウィンストンに心を見透かされたようでソーニャは油断していたことを悔いた。
だがウィンストンは責めるような様子もなければ弱みを握ったことの優位性を感じさせることもなく、ソーニャはウィンストンのことをどう判断すればいいのかわからなくなってしまった。
「動揺していると修行に身も入らないだろうね。今日はここまでにしておこう。僕は調べることがあるから先に失礼するよ」
「はい、ありがとうございました」
一応アドバイザーなのだからソーニャは感謝の言葉を伝えた。
そこに本心からの敬意がなかろうがウィンストンは気にすることはない。
(面白くなってきたな。婚約者はスターク・クーリッジだったな? あのクーリッジ男爵家のクズが婚約者なんてソーニャも運に恵まれなかったね。本当に惜しいよ)
ウィンストンが気にしていることは別のことだった。
婚約関係を解消したいと願うソーニャだったが、スタークにその気がないなら無理だ。
かといって次に聖女に選ばれるとも思えず、ならばいっそのことスタークと一緒に破滅を迎えるのもいいかと思ってしまったソーニャだった。
今回の聖女が決まったことで、早くも次の聖女選びに備える動きが活発化していた。
今までと同じようにしていてもソーニャが聖女に選ばれる可能性は低いと考えたスタークにより、どこで知ったのか一つの提案をソーニャにしたのだ。
「良いアドバイザーがいるらしい。そこで修行してみるのもいいだろう」
「はい、わかりました」
またスタークと離れて暮らしたほうがソーニャにとっては気楽であり、修行なんて適当にすればスタークの野望を潰すこともでき、そうなれば婚約関係を解消してくれるかもしれない。
ついでに無駄な金銭的負担をかけることでスタークへの意趣返しにもなる。
共に破滅してもいいと考えるソーニャにとってはメリットばかりだった。
「今度こそ聖女になれ。いくらかかったかお前は知らないだろうけどな、聖女になってもらわなければ大赤字だ。今度こそ絶対にだ。いいな?」
「はい」
スタークが苦境になればなるほどソーニャにとって好都合。
良い気分で新たな修行の日々を迎えることとなった。
修行の日々が始まり、何よりも驚いたことがアドバイザーを称する男性の存在だった。
ウィンストンと名乗った若い男性は冴えない風貌であり、とてもではないが優秀だとは思えず、聖女の能力を育てられるとは思わなかった。
どうしてそのような人がアドバイザーなのか違和感を覚えたソーニャだったが、成果が出ようが出まいが関係なく、期待しないから落胆もせず、気にしないようにした。
しかし形だけの修行かと思いきや、かつての聖女の修行の話をアドバイザーにしたところ、予想外の答えが返ってきたので評価を改めることになったのだ。
「愛……がないから能力が育たなかったのですか?」
「ああ。聖女の力は愛の力だ。ソーニャさんには婚約者がいたよね? 愛されている実感はあった? なかったよね? ソーニャさんも婚約者のことを愛していないよね?」
「え、あ、は、はい」
冴えない顔から出る愛の言葉に違和感を覚えつつ、こんなにもズバズバと切り込んでくるのはさすがアドバイザーだと思った。
(愛の力が聖女の力になるって本当なの? ウィンストンさんは胡散臭いし冴えないけど、こんな意見、初めて聞いたわ)
まじまじとウィンストンを見つめても胡散臭そうな笑みを浮かべるだけであり、どこまで本気で言っているのかわからなかった。
以前にスタークが聖女は愛の力がどうのと言っていたことをソーニャは完全に忘れていたが、仮に覚えていたとしてもスタークの言ったことであれば信じてはいなかっただろう。
(追い込まれたスターク様が詐欺に引っかかっただけだったりしてね)
そのように思えば悪い笑顔になってしまう。
「おっ、いいね。やっと本当の自分を出してくれたね」
「っ……」
ウィンストンに心を見透かされたようでソーニャは油断していたことを悔いた。
だがウィンストンは責めるような様子もなければ弱みを握ったことの優位性を感じさせることもなく、ソーニャはウィンストンのことをどう判断すればいいのかわからなくなってしまった。
「動揺していると修行に身も入らないだろうね。今日はここまでにしておこう。僕は調べることがあるから先に失礼するよ」
「はい、ありがとうございました」
一応アドバイザーなのだからソーニャは感謝の言葉を伝えた。
そこに本心からの敬意がなかろうがウィンストンは気にすることはない。
(面白くなってきたな。婚約者はスターク・クーリッジだったな? あのクーリッジ男爵家のクズが婚約者なんてソーニャも運に恵まれなかったね。本当に惜しいよ)
ウィンストンが気にしていることは別のことだった。
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