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「君はジュリアのことをどう思っているのかな?」
「とても大切な人です。僕が幸せにしたいと願い、そう実現させたいと決意しています」
「ほほぅ、なるほどな」
ユースタスの気持ちが言葉になり、そうだろうと考えていたとはいえ実際に耳にしたことでジュリアは嬉しくも恥ずかしくもあった。
「では具体的にどう幸せにするのかな?」
「婚約をお許しください。結婚し一生愛することを誓います」
「良い覚悟だ。だがな、一つだけ言わせてくれ」
「はい」
ボールドウィン伯爵が何を言うのか、ユースタスもジュリアも固唾を呑み言葉を待つ。
「その決意を誰よりも伝えるべきはジュリアにだろう。ボールドウィン伯爵家としては君とジュリアの婚約を認めよう。ジュリアが望めば、だがな」
もう答えがわかっているボールドウィン伯爵は表情を崩し、ユースタスは慌ててジュリアに向き合った。
「ジュリア、君のことは昔からずっと好きだった。その気持ちは今だって変わらない。いや、今のほうがもっと強い。僕が絶対に幸せにすると誓う。だから婚約してほしい」
「はい、喜んで」
いつかこうなるだろうと考えていたとはいえ、実際に言葉として伝えられたことは嬉しく、ジュリアは笑顔で承諾した。
ユースタスも最初からボールドウィン伯爵から婚約の許可を得るために話を通しており、断られなかった時点で婚約の可能性が十分にあると判断していた。
何よりも一番の障害がボールドウィン伯爵だと考えていたからだ。
そのボールドウィン伯爵は喜ぶ二人のために、一つ不安を払拭できることを告げる。
「今度こそジュリアには幸せになってほしい。家の利益なんて考えるな。そんなこと考えずともユースタス殿ならジュリアを幸せにしつつ家の利益にもなるよう上手くやるに決まっている。信じているぞ、ユースタス殿」
「ご期待に応えられるよう、全力を尽くします」
ユースタスはハーシェル子爵家の次男であり家督を継ぐ可能性は低く、政略結婚の相手としては価値は低いが、ボールドウィン伯爵の意向があるなら問題ない。
二人が婚約することについて、ハーシェル子爵には既に話を通してあり賛成の返事を貰っている。
こうなることは既に決まっていたようなものであり、ボールドウィン伯爵はなかなか進まない二人の関係をはっきりさせるために一芝居打ったようなものだった。
「さて、二人の婚約を祝って、ささやかなパーティーといこう。準備は既にできているからな」
準備ができているということは、こうなることを知っていたということであり、何もかもがボールドウィン伯爵の手のひらの上だったことをジュリアは理解した。
ユースタスもここまで準備をされているとは思わず、さすが伯爵家当主とボールドウィン伯爵に敬意を抱いた。
広間へ移動すればハーシェル子爵夫妻に嫡男もおり、ボールドウィン伯爵夫人もおり、関係者一同が集まったことになる。
「婚約おめでとう」
「両家にとって目出度い日ですな」
「やっと想いが叶ったわね、二人とも」
「おめでとう、ユースタス」
祝福の言葉から始まり、一堂は楽しいひとときを過ごした。
(ユースタスと婚約できて幸せだわ。それにみんな祝福されて良かったわ)
かなり遠回りしたように感じられたが、ジュリアはその全てが無駄ではなかったと思い、これからは二人で幸せになるのだと確信していた。
「とても大切な人です。僕が幸せにしたいと願い、そう実現させたいと決意しています」
「ほほぅ、なるほどな」
ユースタスの気持ちが言葉になり、そうだろうと考えていたとはいえ実際に耳にしたことでジュリアは嬉しくも恥ずかしくもあった。
「では具体的にどう幸せにするのかな?」
「婚約をお許しください。結婚し一生愛することを誓います」
「良い覚悟だ。だがな、一つだけ言わせてくれ」
「はい」
ボールドウィン伯爵が何を言うのか、ユースタスもジュリアも固唾を呑み言葉を待つ。
「その決意を誰よりも伝えるべきはジュリアにだろう。ボールドウィン伯爵家としては君とジュリアの婚約を認めよう。ジュリアが望めば、だがな」
もう答えがわかっているボールドウィン伯爵は表情を崩し、ユースタスは慌ててジュリアに向き合った。
「ジュリア、君のことは昔からずっと好きだった。その気持ちは今だって変わらない。いや、今のほうがもっと強い。僕が絶対に幸せにすると誓う。だから婚約してほしい」
「はい、喜んで」
いつかこうなるだろうと考えていたとはいえ、実際に言葉として伝えられたことは嬉しく、ジュリアは笑顔で承諾した。
ユースタスも最初からボールドウィン伯爵から婚約の許可を得るために話を通しており、断られなかった時点で婚約の可能性が十分にあると判断していた。
何よりも一番の障害がボールドウィン伯爵だと考えていたからだ。
そのボールドウィン伯爵は喜ぶ二人のために、一つ不安を払拭できることを告げる。
「今度こそジュリアには幸せになってほしい。家の利益なんて考えるな。そんなこと考えずともユースタス殿ならジュリアを幸せにしつつ家の利益にもなるよう上手くやるに決まっている。信じているぞ、ユースタス殿」
「ご期待に応えられるよう、全力を尽くします」
ユースタスはハーシェル子爵家の次男であり家督を継ぐ可能性は低く、政略結婚の相手としては価値は低いが、ボールドウィン伯爵の意向があるなら問題ない。
二人が婚約することについて、ハーシェル子爵には既に話を通してあり賛成の返事を貰っている。
こうなることは既に決まっていたようなものであり、ボールドウィン伯爵はなかなか進まない二人の関係をはっきりさせるために一芝居打ったようなものだった。
「さて、二人の婚約を祝って、ささやかなパーティーといこう。準備は既にできているからな」
準備ができているということは、こうなることを知っていたということであり、何もかもがボールドウィン伯爵の手のひらの上だったことをジュリアは理解した。
ユースタスもここまで準備をされているとは思わず、さすが伯爵家当主とボールドウィン伯爵に敬意を抱いた。
広間へ移動すればハーシェル子爵夫妻に嫡男もおり、ボールドウィン伯爵夫人もおり、関係者一同が集まったことになる。
「婚約おめでとう」
「両家にとって目出度い日ですな」
「やっと想いが叶ったわね、二人とも」
「おめでとう、ユースタス」
祝福の言葉から始まり、一堂は楽しいひとときを過ごした。
(ユースタスと婚約できて幸せだわ。それにみんな祝福されて良かったわ)
かなり遠回りしたように感じられたが、ジュリアはその全てが無駄ではなかったと思い、これからは二人で幸せになるのだと確信していた。
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