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離婚の知らせを聞いたボールドウィン伯爵は激怒していた。
「もう離婚だと!? 寝込むジュリアを見限るとは人間としてどうなのだ! それが本性だったのか、アラン・ベンソン!」
「旦那様、どうもアラン様がメイドに手を出したらしいという情報も得られました」
「なんだと!? ジュリアを娶りながら浮気だと!? 信じられん!」
執事の言葉にボールドウィン伯爵は驚き怒り、アランのことを絶対に許さないと決意した。
「あんな男と一緒にいてはジュリアの体調も良くはならんだろう。ジュリアの体調を最大限考慮し、可及的速やかにジュリアを連れ戻せ」
「かしこまりました」
執事が去った後、ボールドウィン伯爵は独り言のように呟く。
「よりにもよって浮気か……。制裁すべきだがジュリアの負担になってしまうのは避けたい。しばらくは放置するしかないか」
何よりも娘の回復を優先したボールドウィン伯爵だった。
実家へと戻ったジュリアは体調のこともあり、両親から気遣われながら静かに寝て過ごしていた。
アランを選んだことを責められることもなく、離婚を責められることもなく、何も責められない。
ストレスが減ったことでジュリアの体調も回復しつつある。
「少しずつ体調も良くなってきたように思うの。早く元気になって歩きたいわ」
「お嬢様、無理は禁物ですよ」
「わかっているわよ」
出戻ったことで世話をするメイドも長らく世話になっていた者となり、気安く会話できる関係にジュリアも心地良さを感じていた。
(良い妻であろうとがんばりすぎてしまったのかもしれないわね。それにアランは良い夫であろうとはしなかったし……)
簡単に浮気してしまうような人だったことでショックを受けたジュリアは、思い出してまた気分が沈んでしまった。
「きっと良いことがありますよ」
「……ありがとう」
メイドの気遣いに感謝の言葉を述べ、ジュリアはいつまでもアランに捕らわれていては体調が回復しないだろうと思った。
(やはり浮気されていたみたいだし、疑っていたら体調だって悪くなるわよね。でもそれが原因ならもう大丈夫)
メイドとの会話の中で、アランが浮気していたのは事実であることをジュリアは察していた。
メイドもボールドウィン伯爵から事情を説明されており、ジュリアに負担をかけないよう浮気のことは伝えるなと言われていたが、不自然に隠そうとすることからジュリアは察したのだ。
(アランが浮気していても、もうどうでもいいわ。もう関わりたくないもの)
制裁しようという意思はなく、もうアランは過去のことだと割り切ることでジュリアは前へ進もうとした。
そのように気持ちを切り替えたジュリアに一つの知らせがやってきた。
「ユースタスが見舞いに来るですって?」
幼馴染であり婚約者候補だったユースタス・ハーシェル。
ジュリアが選ばなかった人である。
「もう離婚だと!? 寝込むジュリアを見限るとは人間としてどうなのだ! それが本性だったのか、アラン・ベンソン!」
「旦那様、どうもアラン様がメイドに手を出したらしいという情報も得られました」
「なんだと!? ジュリアを娶りながら浮気だと!? 信じられん!」
執事の言葉にボールドウィン伯爵は驚き怒り、アランのことを絶対に許さないと決意した。
「あんな男と一緒にいてはジュリアの体調も良くはならんだろう。ジュリアの体調を最大限考慮し、可及的速やかにジュリアを連れ戻せ」
「かしこまりました」
執事が去った後、ボールドウィン伯爵は独り言のように呟く。
「よりにもよって浮気か……。制裁すべきだがジュリアの負担になってしまうのは避けたい。しばらくは放置するしかないか」
何よりも娘の回復を優先したボールドウィン伯爵だった。
実家へと戻ったジュリアは体調のこともあり、両親から気遣われながら静かに寝て過ごしていた。
アランを選んだことを責められることもなく、離婚を責められることもなく、何も責められない。
ストレスが減ったことでジュリアの体調も回復しつつある。
「少しずつ体調も良くなってきたように思うの。早く元気になって歩きたいわ」
「お嬢様、無理は禁物ですよ」
「わかっているわよ」
出戻ったことで世話をするメイドも長らく世話になっていた者となり、気安く会話できる関係にジュリアも心地良さを感じていた。
(良い妻であろうとがんばりすぎてしまったのかもしれないわね。それにアランは良い夫であろうとはしなかったし……)
簡単に浮気してしまうような人だったことでショックを受けたジュリアは、思い出してまた気分が沈んでしまった。
「きっと良いことがありますよ」
「……ありがとう」
メイドの気遣いに感謝の言葉を述べ、ジュリアはいつまでもアランに捕らわれていては体調が回復しないだろうと思った。
(やはり浮気されていたみたいだし、疑っていたら体調だって悪くなるわよね。でもそれが原因ならもう大丈夫)
メイドとの会話の中で、アランが浮気していたのは事実であることをジュリアは察していた。
メイドもボールドウィン伯爵から事情を説明されており、ジュリアに負担をかけないよう浮気のことは伝えるなと言われていたが、不自然に隠そうとすることからジュリアは察したのだ。
(アランが浮気していても、もうどうでもいいわ。もう関わりたくないもの)
制裁しようという意思はなく、もうアランは過去のことだと割り切ることでジュリアは前へ進もうとした。
そのように気持ちを切り替えたジュリアに一つの知らせがやってきた。
「ユースタスが見舞いに来るですって?」
幼馴染であり婚約者候補だったユースタス・ハーシェル。
ジュリアが選ばなかった人である。
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