8 / 8
8.
しおりを挟む
待ち遠しかったディランと会う約束の日。
ディランはわざわざエイムズ子爵領まで来てくれたのでエイムズ子爵家としても相応の持て成しをして出迎えた。
そこには万が一の可能性を考えて、失礼のないようにという配慮があってのことだ。
「久しぶりだね、エミリア。会えて嬉しいよ」
「私もよ、ディラン様」
「いろいろあって大変だったのかもしれないけど、その顔だと大丈夫そうだね」
「ええ」
ディランに会えるから特別元気で顔も表情も溢れそうになる喜びでいっぱいだった。
「噂はいろいろ聞いていたけど……こういった結果になってしまったことをどう言えばいいのかわからないんだ」
「離婚したのも仕方ないと思うの。だってアンドルーは最初からああいった感じだったし、私は都合良く扱われただけ。その挙句ブリタニーなんかと浮気したし」
「やはりアンドルーなんかはエミリアには相応しくなかったんだ。でもそれをどうにもできなかった自分が情けない」
「ディラン様は悪くないわ。あの日、あの言葉で私は救われたの」
「それなら良かったけど……」
ディランはエミリアの気持ちが自分に向いていることを理解し、思い切って今の自分の想いを告げることにした。
「今だって僕はエミリアのことが好きなんだ。ずっと忘れられなかった。だから褒められたことではないかもしれないけど、エミリアが離婚したと知って喜んでしまったんだ」
「ふふ……喜んでくれて正解よ。私はアンドルーから解放されたのだから」
「それなら今度は僕と結婚してくれないか? 絶対に幸せにすると誓うよ」
「ええ、いいわよ。ディラン様のことは信じているから」
あっさりと受け入れられたことはディランにとって予想外だった。
「嬉しいよ、本当に。ずっと待っていたんだ」
「待たせてしまってごめんなさい」
遠回りしてしまったが、やっと結ばれるべき二人は結ばれたのだ。
この結婚の約束にエイムズ子爵が反対するはずもなく、テンプルトン子爵もやっとディランが結婚を決めたので安心し賛成し祝福した。
その頃のアシュビー伯爵領は領地が荒み始めていた。
「うーむ、また部下が辞職を願い出た。無能が去っていくのは悪くないことだが、さすがに人員が足りないようだ」
「大丈夫よ、それくらい。残った人をもっと働かせればいいじゃない。どうせ同じだけ給金を支払うんだから扱き使わないと損よ」
「なるほど、それがブロメル侯爵流の領地運営の秘訣か。参考になる」
このようにブリタニーの間違った助言によりアシュビー伯爵領の荒廃は加速していく。
そもそもブリタニーが婚約者から婚約破棄されたのは、無能なのに偉そうに領地運営に口出しするからだった。
ブロメル侯爵もブリタニーには困っており、アンドルーに託す際に責任を追及しない約束をしている。
アシュビー伯爵領がどうなろうともブロメル侯爵の痛手にはならない。
もしブリタニーと別れようものなら娘を弄んだ等と理由をつけて慰謝料を吹っ掛ければいい。
アンドルーごときがブロメル侯爵の意図を見抜けるはずがなかった。
アシュビー伯爵領の荒廃は止まらない。
その分は隣接するテンプルトン子爵領が栄えることになり、人も金も集まり好景気に沸いていた。
その理由の一つはエミリアの発案による商業政策の成功であり、実績を示したエミリアはテンプルトン子爵家の中でも発言力を増すことになった。
そもそも歓迎されてディランと結婚していたのでエミリアの能力を疑われることはなかったのだが、想像以上の成果に誰もが喜ぶこととなった。
そのようなエミリアだったが、何よりも一番の喜びはディランと愛し愛される日々を過ごせることだった。
ディランはわざわざエイムズ子爵領まで来てくれたのでエイムズ子爵家としても相応の持て成しをして出迎えた。
そこには万が一の可能性を考えて、失礼のないようにという配慮があってのことだ。
「久しぶりだね、エミリア。会えて嬉しいよ」
「私もよ、ディラン様」
「いろいろあって大変だったのかもしれないけど、その顔だと大丈夫そうだね」
「ええ」
ディランに会えるから特別元気で顔も表情も溢れそうになる喜びでいっぱいだった。
「噂はいろいろ聞いていたけど……こういった結果になってしまったことをどう言えばいいのかわからないんだ」
「離婚したのも仕方ないと思うの。だってアンドルーは最初からああいった感じだったし、私は都合良く扱われただけ。その挙句ブリタニーなんかと浮気したし」
「やはりアンドルーなんかはエミリアには相応しくなかったんだ。でもそれをどうにもできなかった自分が情けない」
「ディラン様は悪くないわ。あの日、あの言葉で私は救われたの」
「それなら良かったけど……」
ディランはエミリアの気持ちが自分に向いていることを理解し、思い切って今の自分の想いを告げることにした。
「今だって僕はエミリアのことが好きなんだ。ずっと忘れられなかった。だから褒められたことではないかもしれないけど、エミリアが離婚したと知って喜んでしまったんだ」
「ふふ……喜んでくれて正解よ。私はアンドルーから解放されたのだから」
「それなら今度は僕と結婚してくれないか? 絶対に幸せにすると誓うよ」
「ええ、いいわよ。ディラン様のことは信じているから」
あっさりと受け入れられたことはディランにとって予想外だった。
「嬉しいよ、本当に。ずっと待っていたんだ」
「待たせてしまってごめんなさい」
遠回りしてしまったが、やっと結ばれるべき二人は結ばれたのだ。
この結婚の約束にエイムズ子爵が反対するはずもなく、テンプルトン子爵もやっとディランが結婚を決めたので安心し賛成し祝福した。
その頃のアシュビー伯爵領は領地が荒み始めていた。
「うーむ、また部下が辞職を願い出た。無能が去っていくのは悪くないことだが、さすがに人員が足りないようだ」
「大丈夫よ、それくらい。残った人をもっと働かせればいいじゃない。どうせ同じだけ給金を支払うんだから扱き使わないと損よ」
「なるほど、それがブロメル侯爵流の領地運営の秘訣か。参考になる」
このようにブリタニーの間違った助言によりアシュビー伯爵領の荒廃は加速していく。
そもそもブリタニーが婚約者から婚約破棄されたのは、無能なのに偉そうに領地運営に口出しするからだった。
ブロメル侯爵もブリタニーには困っており、アンドルーに託す際に責任を追及しない約束をしている。
アシュビー伯爵領がどうなろうともブロメル侯爵の痛手にはならない。
もしブリタニーと別れようものなら娘を弄んだ等と理由をつけて慰謝料を吹っ掛ければいい。
アンドルーごときがブロメル侯爵の意図を見抜けるはずがなかった。
アシュビー伯爵領の荒廃は止まらない。
その分は隣接するテンプルトン子爵領が栄えることになり、人も金も集まり好景気に沸いていた。
その理由の一つはエミリアの発案による商業政策の成功であり、実績を示したエミリアはテンプルトン子爵家の中でも発言力を増すことになった。
そもそも歓迎されてディランと結婚していたのでエミリアの能力を疑われることはなかったのだが、想像以上の成果に誰もが喜ぶこととなった。
そのようなエミリアだったが、何よりも一番の喜びはディランと愛し愛される日々を過ごせることだった。
649
お気に入りに追加
416
この作品は感想を受け付けておりません。
あなたにおすすめの小説

王侯貴族、結婚相手の条件知ってますか?
時見 靜
恋愛
病弱な妹を虐げる悪女プリシア・セノン・リューゲルト、リューゲルト公爵家の至宝マリーアン・セノン・リューゲルト姉妹の評価は真っ二つに別れていたけど、王太子の婚約者に選ばれたのは姉だった。
どうして悪評に塗れた姉が選ばれたのか、、、
その理由は今夜の夜会にて

冷徹公に嫁いだ可哀想なお姫様
さくたろう
恋愛
役立たずだと家族から虐げられている半身不随の姫アンジェリカ。味方になってくれるのは従兄弟のノースだけだった。
ある日、姉のジュリエッタの代わりに大陸の覇者、冷徹公の異名を持つ王マイロ・カースに嫁ぐことになる。
恐ろしくて震えるアンジェリカだが、マイロは想像よりもはるかに優しい人だった。アンジェリカはマイロに心を開いていき、マイロもまた、心が美しいアンジェリカに癒されていく。
※小説家になろう様にも掲載しています
いつか設定を少し変えて、長編にしたいなぁと思っているお話ですが、ひとまず短編のまま投稿しました。
貴方に私は相応しくない【完結】
迷い人
恋愛
私との将来を求める公爵令息エドウィン・フォスター。
彼は初恋の人で学園入学をきっかけに再会を果たした。
天使のような無邪気な笑みで愛を語り。
彼は私の心を踏みにじる。
私は貴方の都合の良い子にはなれません。
私は貴方に相応しい女にはなれません。

美人な姉と『じゃない方』の私
LIN
恋愛
私には美人な姉がいる。優しくて自慢の姉だ。
そんな姉の事は大好きなのに、偶に嫌になってしまう時がある。
みんな姉を好きになる…
どうして私は『じゃない方』って呼ばれるの…?
私なんか、姉には遠く及ばない…

王族に婚約破棄させたらそりゃそうなるよね? ……って話
ノ木瀬 優
恋愛
ぽっと出のヒロインが王族に婚約破棄させたらこうなるんじゃないかなって話を書いてみました。
完全に勢いで書いた話ですので、お気軽に読んで頂けたらなと思います。

【完結】やってしまいましたわね、あの方たち
玲羅
恋愛
グランディエネ・フラントールはかつてないほど怒っていた。理由は目の前で繰り広げられている、この国の第3王女による従兄への婚約破棄。
蒼氷の魔女と噂されるグランディエネの足元からピキピキと音を立てて豪奢な王宮の夜会会場が凍りついていく。
王家の夜会で繰り広げられた、婚約破棄の傍観者のカップルの会話です。主人公が婚約破棄に関わることはありません。

【完結】離縁されたので実家には戻らずに自由にさせて貰います!
山葵
恋愛
「キリア、俺と離縁してくれ。ライラの御腹には俺の子が居る。産まれてくる子を庶子としたくない。お前に子供が授からなかったのも悪いのだ。慰謝料は払うから、離婚届にサインをして出て行ってくれ!」
夫のカイロは、自分の横にライラさんを座らせ、向かいに座る私に離婚届を差し出した。

ごきげんよう、元婚約者様
藍田ひびき
恋愛
「最後にお会いしたのは、貴方から婚約破棄を言い渡された日ですね――」
ローゼンハイン侯爵令嬢クリスティーネからアレクシス王太子へと送られてきた手紙は、そんな書き出しから始まっていた。アレクシスはフュルスト男爵令嬢グレーテに入れ込み、クリスティーネとの婚約を一方的に破棄した過去があったのだ。
手紙は語る。クリスティーネの思いと、アレクシスが辿るであろう末路を。
※ 3/29 王太子視点、男爵令嬢視点を追加しました。
※ 3/25 誤字修正しました。
※ なろうにも投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる