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待ち遠しかったディランと会う約束の日。
ディランはわざわざエイムズ子爵領まで来てくれたのでエイムズ子爵家としても相応の持て成しをして出迎えた。
そこには万が一の可能性を考えて、失礼のないようにという配慮があってのことだ。
「久しぶりだね、エミリア。会えて嬉しいよ」
「私もよ、ディラン様」
「いろいろあって大変だったのかもしれないけど、その顔だと大丈夫そうだね」
「ええ」
ディランに会えるから特別元気で顔も表情も溢れそうになる喜びでいっぱいだった。
「噂はいろいろ聞いていたけど……こういった結果になってしまったことをどう言えばいいのかわからないんだ」
「離婚したのも仕方ないと思うの。だってアンドルーは最初からああいった感じだったし、私は都合良く扱われただけ。その挙句ブリタニーなんかと浮気したし」
「やはりアンドルーなんかはエミリアには相応しくなかったんだ。でもそれをどうにもできなかった自分が情けない」
「ディラン様は悪くないわ。あの日、あの言葉で私は救われたの」
「それなら良かったけど……」
ディランはエミリアの気持ちが自分に向いていることを理解し、思い切って今の自分の想いを告げることにした。
「今だって僕はエミリアのことが好きなんだ。ずっと忘れられなかった。だから褒められたことではないかもしれないけど、エミリアが離婚したと知って喜んでしまったんだ」
「ふふ……喜んでくれて正解よ。私はアンドルーから解放されたのだから」
「それなら今度は僕と結婚してくれないか? 絶対に幸せにすると誓うよ」
「ええ、いいわよ。ディラン様のことは信じているから」
あっさりと受け入れられたことはディランにとって予想外だった。
「嬉しいよ、本当に。ずっと待っていたんだ」
「待たせてしまってごめんなさい」
遠回りしてしまったが、やっと結ばれるべき二人は結ばれたのだ。
この結婚の約束にエイムズ子爵が反対するはずもなく、テンプルトン子爵もやっとディランが結婚を決めたので安心し賛成し祝福した。
その頃のアシュビー伯爵領は領地が荒み始めていた。
「うーむ、また部下が辞職を願い出た。無能が去っていくのは悪くないことだが、さすがに人員が足りないようだ」
「大丈夫よ、それくらい。残った人をもっと働かせればいいじゃない。どうせ同じだけ給金を支払うんだから扱き使わないと損よ」
「なるほど、それがブロメル侯爵流の領地運営の秘訣か。参考になる」
このようにブリタニーの間違った助言によりアシュビー伯爵領の荒廃は加速していく。
そもそもブリタニーが婚約者から婚約破棄されたのは、無能なのに偉そうに領地運営に口出しするからだった。
ブロメル侯爵もブリタニーには困っており、アンドルーに託す際に責任を追及しない約束をしている。
アシュビー伯爵領がどうなろうともブロメル侯爵の痛手にはならない。
もしブリタニーと別れようものなら娘を弄んだ等と理由をつけて慰謝料を吹っ掛ければいい。
アンドルーごときがブロメル侯爵の意図を見抜けるはずがなかった。
アシュビー伯爵領の荒廃は止まらない。
その分は隣接するテンプルトン子爵領が栄えることになり、人も金も集まり好景気に沸いていた。
その理由の一つはエミリアの発案による商業政策の成功であり、実績を示したエミリアはテンプルトン子爵家の中でも発言力を増すことになった。
そもそも歓迎されてディランと結婚していたのでエミリアの能力を疑われることはなかったのだが、想像以上の成果に誰もが喜ぶこととなった。
そのようなエミリアだったが、何よりも一番の喜びはディランと愛し愛される日々を過ごせることだった。
ディランはわざわざエイムズ子爵領まで来てくれたのでエイムズ子爵家としても相応の持て成しをして出迎えた。
そこには万が一の可能性を考えて、失礼のないようにという配慮があってのことだ。
「久しぶりだね、エミリア。会えて嬉しいよ」
「私もよ、ディラン様」
「いろいろあって大変だったのかもしれないけど、その顔だと大丈夫そうだね」
「ええ」
ディランに会えるから特別元気で顔も表情も溢れそうになる喜びでいっぱいだった。
「噂はいろいろ聞いていたけど……こういった結果になってしまったことをどう言えばいいのかわからないんだ」
「離婚したのも仕方ないと思うの。だってアンドルーは最初からああいった感じだったし、私は都合良く扱われただけ。その挙句ブリタニーなんかと浮気したし」
「やはりアンドルーなんかはエミリアには相応しくなかったんだ。でもそれをどうにもできなかった自分が情けない」
「ディラン様は悪くないわ。あの日、あの言葉で私は救われたの」
「それなら良かったけど……」
ディランはエミリアの気持ちが自分に向いていることを理解し、思い切って今の自分の想いを告げることにした。
「今だって僕はエミリアのことが好きなんだ。ずっと忘れられなかった。だから褒められたことではないかもしれないけど、エミリアが離婚したと知って喜んでしまったんだ」
「ふふ……喜んでくれて正解よ。私はアンドルーから解放されたのだから」
「それなら今度は僕と結婚してくれないか? 絶対に幸せにすると誓うよ」
「ええ、いいわよ。ディラン様のことは信じているから」
あっさりと受け入れられたことはディランにとって予想外だった。
「嬉しいよ、本当に。ずっと待っていたんだ」
「待たせてしまってごめんなさい」
遠回りしてしまったが、やっと結ばれるべき二人は結ばれたのだ。
この結婚の約束にエイムズ子爵が反対するはずもなく、テンプルトン子爵もやっとディランが結婚を決めたので安心し賛成し祝福した。
その頃のアシュビー伯爵領は領地が荒み始めていた。
「うーむ、また部下が辞職を願い出た。無能が去っていくのは悪くないことだが、さすがに人員が足りないようだ」
「大丈夫よ、それくらい。残った人をもっと働かせればいいじゃない。どうせ同じだけ給金を支払うんだから扱き使わないと損よ」
「なるほど、それがブロメル侯爵流の領地運営の秘訣か。参考になる」
このようにブリタニーの間違った助言によりアシュビー伯爵領の荒廃は加速していく。
そもそもブリタニーが婚約者から婚約破棄されたのは、無能なのに偉そうに領地運営に口出しするからだった。
ブロメル侯爵もブリタニーには困っており、アンドルーに託す際に責任を追及しない約束をしている。
アシュビー伯爵領がどうなろうともブロメル侯爵の痛手にはならない。
もしブリタニーと別れようものなら娘を弄んだ等と理由をつけて慰謝料を吹っ掛ければいい。
アンドルーごときがブロメル侯爵の意図を見抜けるはずがなかった。
アシュビー伯爵領の荒廃は止まらない。
その分は隣接するテンプルトン子爵領が栄えることになり、人も金も集まり好景気に沸いていた。
その理由の一つはエミリアの発案による商業政策の成功であり、実績を示したエミリアはテンプルトン子爵家の中でも発言力を増すことになった。
そもそも歓迎されてディランと結婚していたのでエミリアの能力を疑われることはなかったのだが、想像以上の成果に誰もが喜ぶこととなった。
そのようなエミリアだったが、何よりも一番の喜びはディランと愛し愛される日々を過ごせることだった。
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